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フラグ?
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エリカを庇おうと身を呈した挙句、突進して来た彼女と共に転倒してしまうなんて……フレデリック殿下もさぞ驚いた事だろう。
そして、この場でひときわ騒がしく声を荒げたのはエリカだった。
「いたた……ああぁ!大丈夫ですか!?ごめんなさい!!」
「だ、大丈夫……」
倒れたまま、何とかエリカの呼びかけに返事をする。転んで驚いたものの、怪我をした様子はないので、取り敢えず身を起こそうと思った。
だが、上に乗ったままのエリカは動かない。視線を上げると、彼女の夕焼け色のような瞳と目が合う。サラサラと軽やかな栗色の髪に、可愛らしい顔立ちのエリカが目の前にいる。
そのままわたし達は、互いに時が止まったように動けなかった。エリカが上に乗っているからわたしの場合、物理的にも無理なんだけど。
すると、エリカの顔が見る見る赤く染まっていき、照れたようにもじもじと視線を彷徨わせた。
え、フラグ立ちました……?もしかしてわたしとフラグ立ちました?と、思わず聞いてしまいたくなるような反応に、目を見張る。
「あ、貴女は……」
何かエリカが言いかけたようだが、フレデリック殿下が割って入った。
「セレス、大丈夫!?えっと、君も……取り敢えず、セレスからどいてくれるかな?」
「セレス……え、まさかセレスティア!?」
フレデリック殿下から出た名前に、驚くエリカだったが、お陰でようやくわたしの上から身体を退かしてくれた。
そしてフレデリック殿下は、わたしを立ち上がらせてくれる。
「せ、セレスティア?何か、清楚で儚げでとても可愛い……あ、あれ?わたしの知ってるセレスィアとなんか違う……」
──わたしの知ってるセレスィア……?まさか子供の頃のわたしに会った事がある?それとも『エリュシオンの翼』に出てくるセレスティアの事を言っている?
得体の知れない不安が、わたしの胸を騒つかせた。
それとは別でとある言葉が引っ掛かる。『儚げ』って聞こえは良いけど『幸薄そう』っていう、遠回しの悪口だったりするのかしら?といつもの被害妄想が瞬時に頭を過った。
言葉を失うわたしに代わり、エリカへ話しかけたのはフレデリック殿下だった。
「いきなり無礼だよ、セレスはいずれは王子妃となる僕の婚約者であり、この国の筆頭貴族であるスフォルツィア公爵家のご令嬢。
この国の人間なら知らない訳ではないだろう?」
いつもお優しいフレデリック殿下だけど、感情的にならずとも、真剣な表情の時は為政者としての風格が顔を出す。
「ご、ごめんなさいっ」
出会い頭から直前まで非常識で突拍子もなかったエリカだが、真摯に対応をするフレデリック殿下の言葉のお陰か、すぐに謝ってくれた。
「それに、今のような事故が起こる可能性があるんだから、廊下は走ってはいけないよ」
「す、すみません……せっかくだからフラグを立ててみようとか思い立っちゃって、つい……」
「?」
フレデリック殿下はエリカの言葉が理解できないと言った様子で、訝しむ。
──フラグ……。
わたしは、その言葉がしばらく頭から離れなかった。
そして、この場でひときわ騒がしく声を荒げたのはエリカだった。
「いたた……ああぁ!大丈夫ですか!?ごめんなさい!!」
「だ、大丈夫……」
倒れたまま、何とかエリカの呼びかけに返事をする。転んで驚いたものの、怪我をした様子はないので、取り敢えず身を起こそうと思った。
だが、上に乗ったままのエリカは動かない。視線を上げると、彼女の夕焼け色のような瞳と目が合う。サラサラと軽やかな栗色の髪に、可愛らしい顔立ちのエリカが目の前にいる。
そのままわたし達は、互いに時が止まったように動けなかった。エリカが上に乗っているからわたしの場合、物理的にも無理なんだけど。
すると、エリカの顔が見る見る赤く染まっていき、照れたようにもじもじと視線を彷徨わせた。
え、フラグ立ちました……?もしかしてわたしとフラグ立ちました?と、思わず聞いてしまいたくなるような反応に、目を見張る。
「あ、貴女は……」
何かエリカが言いかけたようだが、フレデリック殿下が割って入った。
「セレス、大丈夫!?えっと、君も……取り敢えず、セレスからどいてくれるかな?」
「セレス……え、まさかセレスティア!?」
フレデリック殿下から出た名前に、驚くエリカだったが、お陰でようやくわたしの上から身体を退かしてくれた。
そしてフレデリック殿下は、わたしを立ち上がらせてくれる。
「せ、セレスティア?何か、清楚で儚げでとても可愛い……あ、あれ?わたしの知ってるセレスィアとなんか違う……」
──わたしの知ってるセレスィア……?まさか子供の頃のわたしに会った事がある?それとも『エリュシオンの翼』に出てくるセレスティアの事を言っている?
得体の知れない不安が、わたしの胸を騒つかせた。
それとは別でとある言葉が引っ掛かる。『儚げ』って聞こえは良いけど『幸薄そう』っていう、遠回しの悪口だったりするのかしら?といつもの被害妄想が瞬時に頭を過った。
言葉を失うわたしに代わり、エリカへ話しかけたのはフレデリック殿下だった。
「いきなり無礼だよ、セレスはいずれは王子妃となる僕の婚約者であり、この国の筆頭貴族であるスフォルツィア公爵家のご令嬢。
この国の人間なら知らない訳ではないだろう?」
いつもお優しいフレデリック殿下だけど、感情的にならずとも、真剣な表情の時は為政者としての風格が顔を出す。
「ご、ごめんなさいっ」
出会い頭から直前まで非常識で突拍子もなかったエリカだが、真摯に対応をするフレデリック殿下の言葉のお陰か、すぐに謝ってくれた。
「それに、今のような事故が起こる可能性があるんだから、廊下は走ってはいけないよ」
「す、すみません……せっかくだからフラグを立ててみようとか思い立っちゃって、つい……」
「?」
フレデリック殿下はエリカの言葉が理解できないと言った様子で、訝しむ。
──フラグ……。
わたしは、その言葉がしばらく頭から離れなかった。
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