人形彼女

白蛇カエデ

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美麗「これでみんな自己紹介は終わったかしら」
アイドル「待って待って~!マ(待)ッチングアプリ~!アタシがまだだヨ!」
まどか「でも、金髪さん(アイドル)…人間だった頃の記憶ないんじゃ?」
アイドル「オオォォォ-ー!そっかァwwwそうだったそうだった☆」

金髪のアイドルの子はそう言うと、てへぺろっ☆といった表情をした。
とはいえ、名前がないのは少し困るな…。私は今のところ〝金髪さん〟って呼んでるけど。

美麗「確かにそうね。また騒ぎ出した時に名前が無いんじゃ、呼べないからこいつ静かにならなそうだし。」
アイドル「OH MY GOT7!!〝こいつ〟ってなにー?アタシはアイドルだよ!こいつジャナーイ!!」
美麗「わかったわよアイドル。あなた、名前覚えてないって言ってたけど、本名も芸名も覚えてないってことなの?」

美麗さん…じゃない。如月さんが訊ねる。

「げいめい…芸名…?」
「そうよ」
「芸名ってなんだっけ!?」
「はァ?…要するにあだ名よ」
  
 それでもアイドルの子はピンと来てない様子だ…。どうすれば伝わるのかな…あ!

まどか「ニックネームですよ!ニックネーム!」

「ニックネーム!それならわかるよっ!えっとねぇ~…なんだっけなー~」

良かった…さっきから横文字には反応するから、どうりで当たったようだ。

「うーん、そうだナァ~…」

アイドルの子は上を見て、少し考えている様子だった。

………

「覚えてない!覚えてないや!アハ(ˊᗜˋ)」

みんな拍子抜けする。なんだ。じゃあ、本当に手がかりない感じかな。
 すると、アイドルの子は何かを思い出したように目が輝きだした。

「そうDa!!アタC、名前は覚えてないけど、好きな曲はいっぱいあるYo!」
心温「なんで急にラップ…?」
美麗「いきなり何?さっきの話と関係ないじゃない。」

アイドルの子はみんなが動揺してるのも気にせず、話し続ける。

アイドル「あのね~、さくらんぼでしょ。ライオン・キングのテーマでしょ。Hello、好きな人がいること、ライオン、ジェットコースター・ラブ、Gee……あ!あとあと、バラライカ!」
心温「バラライカ…?」
まどか「バラライカって、ロシアの楽器ですよね?」

アイドル「違う違うちがーう!!月山きらりちゃんの曲!」

月山きらり…ってえ!?100年以上前のアイドルじゃん。なんでそんな昔の曲をいまさら?

「バラライカはねぇ、めっちゃカッコイイ曲なんだヨ!聴いた瞬間、アタシ、ビリビリって痺れちゃった☆」
心温「痺れた…」
美麗「へぇー。あんた感電したからそんな馬鹿なのねー」
「ソウソウ!アタシ感電したノ!あれは電光石火?ってやつ!身体中を〝バラライカ〟が走り回ったなァ~」

アイドルの子はその時のことを思い出してるのか、うっとりと目を閉じてニヤニヤ笑っている。

なんか、独特すぎてついていけないな…。話がどんどん脱線してる気がする。

美麗「まぁ、薔薇(バラ)だかララライだかララバイだか知らないけど、あんたの好きな曲なんてどうでもいいわ。」

「ほー!バラライカかぁー!どんな曲なの?聞きたいなぁ…」

どうやら、七葉さんが食いついたようだ。

美麗「だから、その話はもう終わりに…」
「OK!!いっくよー☆」

アイドルの子はよくぞ聞いてくれた、と言わんばかりに、自信満々な顔で歌い始めた。

「バラバラライカ バラライカ!
 あなたのハートにバラライカ☆

ここは・デンジャラスな・世界だけど♪

アタシは全部なぎ倒す♪乗り越える!

どんな ピンチもドンと来い!
魔法の言葉 バラライカ♪全てを解決してくれる!

ラララライ☆ラララライ

バララ バラバラ バラライカ!」

七葉「わぁ~!カッコイイ!ちょー痺れるねぇ~!」

七葉さんは楽しそうに拍手している。

心温「カッコイイ?」
美麗「これがカッコイイって、どんな感性してんのよ」

うーん。確かに、カッコイイとはまた違う気がする。ユニークだとは思うけど。

七葉「ねぇねぇ!もう1回歌ってー!ワタシも覚えたぁい!」

ええぇ…この歌を覚えたいって………えぇ…?

アイドル「イイよぉ!」

「バラバラライカ バラライカ!
 あなたのハートにバラライカ☆

ここは・デンジャラスな・世界だけど♪

アタシは全部なぎ倒す♪乗り越える!

どんな ピンチもドンと来い!
魔法の言葉 バラライカ♪全てを解決してくれる!

ラララライ☆ラララライ

バララ バラバラ バラライカ!」

七葉「もう1回!」
アイドル「おけみ~!!」

「バラバラライカ バラライカ!
 あなたのハートにバラライカ☆

ここは・デンジャラスな・世界だけど♪

アタシは全部なぎ倒す♪乗り越える!

どんな ピンチもドンと来い!
魔法の言葉 バラライカ♪全てを解決してくれる!

ラララライ☆ラララライ

バララ バラバラ バラライカ!」

七葉「まだまだ~!もういっかーい!!」
アイドル「おっけぇ!わーい!!テンションあげぽよ⤴︎ ⤴︎天丼丸ぅー!」

如月さんはもう、イライラが頂点に達してるみたい。真っ赤な口紅はワナワナと震えて、唇は、噛み切ってしまうんじゃないか…ってほど強く噛んで、なんとか耐えようと頑張ってる。目は…うん。白目剥いてるから怒りが隠せてないな。

「バラバラライカ バラライカ!
 あなたのハートにバラライカ☆

ここは・デンジャラスな・世界だけど♪

アタシは全部なぎ倒す♪乗り越える!

どんな ピンチもドンと来い!
魔法の言葉 バラライカ♪全てを解決してくれる!

ラララライ☆ラララライ

バララ バラバラ バラライカ!」

七葉「ワタシ、覚えたかも!!」
アイドル「おっけぇー!!じゃあ、一緒に歌お!LET'S SING!!」

ついに2人は一緒に歌い始めた。七葉さんは、アイドルの子の首を持って私たちの周りで踊り始めた。

「バラバラライカ バラライカ!
 あなたのハートにバラライカ☆

ここは・デンジャラスな・世界だけど♪

アタシは全部なぎ倒す♪乗り越える!

どんな ピンチもドンと来い!
魔法の言葉 バラ…「ライカ!!!!」」

……え?

急に歌が止まった。
それに今、誰かの声と重なったような…?

アイドルの子と七葉さんを見ると、固まって青ざめてる。
あぁ……もしかして…

美麗「うるっさいのよ!さっきから!!」
アイドル・七葉「ご、ごめんなさ…」
美麗「大体、私たちは体がないのよ!?おまけに人形になって、こんな山奥に捨てられて、拾われたと思ったらあんたはちんちくりんで頼りない。危機感が無さすぎるのよ!」

やっぱりね。まぁ…如月さんの言うことも一理ある。やっと助かったと思ったら、こんな子ども(ちんちくりんは関係ないと思うけど)で、アイドルの子も能天気なのはちょっとな…と思っていたところだ。それにしても言い過ぎな気もするが。
 
美麗「あんたたちも同じよ。歌ってはなかったものの、止める気なかったじゃない」

え、私や心温さんまで?
心温さんは如月さんをギロッと睨む。

美麗「なによその態度。〝なんでわたしまで!?〟って言いたいの?」

心温さんは歯を食いしばる。如月さんも負けじと睨み返す。
うわぁ…ちょっと、良くないよこの雰囲気。また同じことに…

まどか「ま、まぁまぁ、そのへんにしときましょ?ねっ…!」
美麗「あんた、私に向かって何?私は何も悪くないわ」

如月さんは私も睨んできた。ひぃぃ…ほんと怖いよこの人。何?って、こっちのセリフだよ……。

七葉「わぁぁ~~!!もういいよ!喧嘩は終わり!」
 
そう言うと、この中で唯一体がある七葉さんが、私たちの首を持ち上げ、視線が合って睨み合わないように離らかした。

美麗「あ、ちょっと!」

アイドル「ソウソウ!喧嘩がしたいなら外でやってね!」
心温「外っていっても、自分では外まで移動できない…」
アイドル「ア゙ア゙!そうジャン!え~~マジかー…」

如月さんはため息をつく。

美麗「……そうよ。私たちは自分の力で移動できないの。体がないマネキンヘッドだから」
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