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鏡の亜理砂▪その四 (ウォルフ)
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◆アスタイト王国
地方都市テーベ
冒険者組合
アリサ視点
ジャリンッ、ザッ、ザッ、ザッ、ガンッ、
その銀色の大きな異形な生き物は、物凄く存在感を出しながらあたし達の前に現れた。
そして沢山の獲物を背負ったまま、あたしとマルリーサの前にやってくる。
彼は一瞬あたし達に目をやるが、そのまま前を通り過ぎる。
「ウォルフ様……」
マルリーサは、心配そうにウォルフを見つめてる。そりゃそうだ。
ウォルフは本来、ランカー1位。
敬われるべき存在なんだけど、今、この冒険者組合にいる人間達の目は、その殆んどが恐怖と軽蔑で彩られている。
その理由は、やはりその容姿だ。
3メートルはあるその体躯。全身、銀の毛むくじゃらのその身体。そして何より彼の頭は完全に狼の姿。
獣人の外見は本来、マルリーサの様に耳とシッポ以外は人間の姿なんだけど、彼はどちらかって言うと、より獣に近い半獣人といったところか。
いやウォルフも元々はマルリーサの様に、もっと人間に近かったらしいんだけど、戦争の後遺症であんな姿のままらしい。
獣人族の中には変身、獣化して戦闘力を上げる者がいる。
彼は獣人の中では希な銀狼族という種族。
銀狼族はもっとも高貴な一族で、ガルダ帝国北部にあった獣人国の王族なんだという。
その類い希な戦闘力で獣人国を統治していた戦闘民族の頂点にいた種族。
それが銀狼族であり、ウォルフの一族なんだそうだ。
ドサッ、ドサッ、ドサッ、ドサッ
カウンターに積み上げられた戦利品は、ファイアーボアと云われる火を吐くイノシン。
その俊敏且つ、高温の炎を吐くモンスターはA級で大変獰猛で危険な種類。
普通の冒険者では集団で対応しても一頭で手を焼くレベルだ。
だが、彼は単騎で五頭も討伐していた。
「ウ、ウォルフさん、今回は単独でファイアーボアを五頭も……ですか。流石です」
受付嬢が、冷や汗をかきながら応対する。
慌てて来た組合の解体班が、カウンターに積み上げられたファイアーボアを解体場に運び出す。
「…………」
それを黙って見送るウォルフ。
その間に受付嬢が計算した金額をカウンターに積み上げていく。
受け取った報酬は一般冒険者の一年分以上。
普通の冒険者では到底手に出来ない金額だ。
ウォルフは、受付嬢が出した討伐報酬を受け取ると、黙したまま冒険者組合の出口に向かう。
妬みと恐れと蔑み。
その眼差しが充満する冒険者組合のフロアを、ウォルフが構わず出口に向かう。
その時、一人の冒険者が叫んだ。
「獣は出ていけ。ここは人間の国だ!」
その冒険者は20代の茶髪の男性。
どうやら獣人に対し、過度な偏見があるようだ。
そしてそれに呼応するかのように、数人の冒険者がウォルフの前を塞ぐ。
離れのカウンターから受付嬢と見ていた、あたし。
その露骨な嫌がらせに思わず口を開けた。
「ねぇ、あれは何なの?」
「……仕方がないんです。この国には元々、人間しか居なかったんですから。異形の者が力を持っている事を心良く思わないのは当たり前です」
「当たり前?当たり前じゃないでしょ!実力を見せたら妬んで差別するの?そんなの、何処の世界でも通用しないよ!大体、同じ冒険者じゃない。組合は止めないの?」
「ぼ、冒険者組合はあくまでも冒険者に仕事を手配する事。それ以外の事については冒険者の自己責任となっています……」
「冒険者同士のイザコザは個人の問題、組合は関知しないって事なのね」
「そう、なります……」
申し訳なさそうに俯く受付嬢。
何の権限もない彼女をこれ以上責めても仕方のない事だ。
発足から間もない冒険者組合。
色々と足らない点はこれからの課題だろう。
ふうっ、くっだらない。
だったら多少の 荒事も許されるよね?
こういう差別や苛めは、あたしの一番嫌いなヤツだ。
これ以上、黙って見過ごす訳にはいかない。
ガタッバシッ「?!」
「駄目です、アリサ」
あたしが立ち上がってウォルフの方に歩こうとすると、マルリーサがあたしの腕を捉える。
「マルリーサ」
「アリサ、貴女の平等精神は称賛に値します。ですがウォルフの為に貴女が動くのは彼の本位ではありません」
「本位?どういう事?」
「あ……」
「マルリーサ?」
「…………っ」
どういう事?
マルリーサがしまった、って顔をして黙ってしまった。
何?あたしが今出て行く事が何でウォルフの本位に触れるの?
だけど、あのウォルフを取り囲んでいるのは、日ごろ屯する癖の悪い冒険者集団だ。
完全に多勢に無勢。
いくらウォルフが強くとも、一斉にかかられたらどうにもならないはず。
バッ「アリサ?!」
「多勢に無勢だよ!これ以上、我慢出来ない!!」
あたしは駆け出し、ウォルフとその冒険者達の間に飛び込んだ。
「アリサ!?」
マルリーサが叫んだけど、このままにして置けない!
私は、ウォルフを背に皆に叫んだ。
「みんな、ウォルフは皆と同じ冒険者だよ。仲間じゃないか。差別は駄目だよ!」
「アリサだ!?」、「壁炎の魔女だ!」、「 壁炎の魔女が獣人を庇うだと!?」
「そうえば、魔女は獣人女とパーティーを組んでいたな?」
「獣人女は奴隷だろ。アリサは人間だぜ」
「じゃあ、何でこの狼獣人を庇ってんだ?」
「さあ?」
なんだよコイツら!?勝手な事を言って。
冒険者仲間を庇うのは当たり前じゃないか。
それにマルリーサが奴隷だって!?
許さない!
あたしが目の前の冒険者達に文句を言おうとすると、後ろのウォルフが、あたしの肩に手をやり横に退かす!?
彼を見上げると、ウォルフはチラ見して呟いた。
「……耳を塞いで、下がっていろ…………」
「ウォルフ?」
ウォルフは、あたしの前に立つと冒険者達に対峙した。
耳を塞げって!?
くいっ、後ろからマルリーサが、あたしの服を引き、耳を塞ぐようにゼスチャーする。
わ、分かったわよ。
あたしは訳もわからず、マルリーサと同じように自分の耳に手を当てる。
「な、なんだ、やるのか!?」
「この獣ヤロウ!」、「やっちまえ!!」
冒険者達は、ウォルフの態度に対立姿勢を顕にする。もはや一色触発は避けられないと思われた。
ウオオオーーーーーーーーーーーーンッ
その瞬間、冒険者組合の建物内に大音量の激しい獣の鳴き声が響いた!?
「うわあああ!」
「ぐわああ、耳が?!」
「ぎゃああ!」
「きゃあ!?」
「「「「きゃあ!」」」」、「「わあっ」」
「ひゃああ!?」
す、凄!
ウォルフが激しく咆哮した。
耳を塞いでいても鼓膜が破れそう。
マルリーサを見ると耳を塞いだまま、しゃがんで耐えているようだ。
彼女は只でさえ耳が良い。
恐らくかなり耳が痛いはず。
でも、あの無法者の冒険者グループは皆、座り込んで震えて戦意喪失だ。
殴り合わずに場を納めるなんて、ウォルフは流石だ。
ザッ、ザッ、ザッ
ウォルフはそのまま倒れている冒険者達の間をすり抜け、あたし達に振り返りもせずに出口から出て行った。
まるで孤高の戦士みたいだ。
「ウォルフ……」
あたしは、理解出来ない気持ちの高鳴りが胸いっぱいに広がるのを抑えつつ、その背中を見送った。
地方都市テーベ
冒険者組合
アリサ視点
ジャリンッ、ザッ、ザッ、ザッ、ガンッ、
その銀色の大きな異形な生き物は、物凄く存在感を出しながらあたし達の前に現れた。
そして沢山の獲物を背負ったまま、あたしとマルリーサの前にやってくる。
彼は一瞬あたし達に目をやるが、そのまま前を通り過ぎる。
「ウォルフ様……」
マルリーサは、心配そうにウォルフを見つめてる。そりゃそうだ。
ウォルフは本来、ランカー1位。
敬われるべき存在なんだけど、今、この冒険者組合にいる人間達の目は、その殆んどが恐怖と軽蔑で彩られている。
その理由は、やはりその容姿だ。
3メートルはあるその体躯。全身、銀の毛むくじゃらのその身体。そして何より彼の頭は完全に狼の姿。
獣人の外見は本来、マルリーサの様に耳とシッポ以外は人間の姿なんだけど、彼はどちらかって言うと、より獣に近い半獣人といったところか。
いやウォルフも元々はマルリーサの様に、もっと人間に近かったらしいんだけど、戦争の後遺症であんな姿のままらしい。
獣人族の中には変身、獣化して戦闘力を上げる者がいる。
彼は獣人の中では希な銀狼族という種族。
銀狼族はもっとも高貴な一族で、ガルダ帝国北部にあった獣人国の王族なんだという。
その類い希な戦闘力で獣人国を統治していた戦闘民族の頂点にいた種族。
それが銀狼族であり、ウォルフの一族なんだそうだ。
ドサッ、ドサッ、ドサッ、ドサッ
カウンターに積み上げられた戦利品は、ファイアーボアと云われる火を吐くイノシン。
その俊敏且つ、高温の炎を吐くモンスターはA級で大変獰猛で危険な種類。
普通の冒険者では集団で対応しても一頭で手を焼くレベルだ。
だが、彼は単騎で五頭も討伐していた。
「ウ、ウォルフさん、今回は単独でファイアーボアを五頭も……ですか。流石です」
受付嬢が、冷や汗をかきながら応対する。
慌てて来た組合の解体班が、カウンターに積み上げられたファイアーボアを解体場に運び出す。
「…………」
それを黙って見送るウォルフ。
その間に受付嬢が計算した金額をカウンターに積み上げていく。
受け取った報酬は一般冒険者の一年分以上。
普通の冒険者では到底手に出来ない金額だ。
ウォルフは、受付嬢が出した討伐報酬を受け取ると、黙したまま冒険者組合の出口に向かう。
妬みと恐れと蔑み。
その眼差しが充満する冒険者組合のフロアを、ウォルフが構わず出口に向かう。
その時、一人の冒険者が叫んだ。
「獣は出ていけ。ここは人間の国だ!」
その冒険者は20代の茶髪の男性。
どうやら獣人に対し、過度な偏見があるようだ。
そしてそれに呼応するかのように、数人の冒険者がウォルフの前を塞ぐ。
離れのカウンターから受付嬢と見ていた、あたし。
その露骨な嫌がらせに思わず口を開けた。
「ねぇ、あれは何なの?」
「……仕方がないんです。この国には元々、人間しか居なかったんですから。異形の者が力を持っている事を心良く思わないのは当たり前です」
「当たり前?当たり前じゃないでしょ!実力を見せたら妬んで差別するの?そんなの、何処の世界でも通用しないよ!大体、同じ冒険者じゃない。組合は止めないの?」
「ぼ、冒険者組合はあくまでも冒険者に仕事を手配する事。それ以外の事については冒険者の自己責任となっています……」
「冒険者同士のイザコザは個人の問題、組合は関知しないって事なのね」
「そう、なります……」
申し訳なさそうに俯く受付嬢。
何の権限もない彼女をこれ以上責めても仕方のない事だ。
発足から間もない冒険者組合。
色々と足らない点はこれからの課題だろう。
ふうっ、くっだらない。
だったら多少の 荒事も許されるよね?
こういう差別や苛めは、あたしの一番嫌いなヤツだ。
これ以上、黙って見過ごす訳にはいかない。
ガタッバシッ「?!」
「駄目です、アリサ」
あたしが立ち上がってウォルフの方に歩こうとすると、マルリーサがあたしの腕を捉える。
「マルリーサ」
「アリサ、貴女の平等精神は称賛に値します。ですがウォルフの為に貴女が動くのは彼の本位ではありません」
「本位?どういう事?」
「あ……」
「マルリーサ?」
「…………っ」
どういう事?
マルリーサがしまった、って顔をして黙ってしまった。
何?あたしが今出て行く事が何でウォルフの本位に触れるの?
だけど、あのウォルフを取り囲んでいるのは、日ごろ屯する癖の悪い冒険者集団だ。
完全に多勢に無勢。
いくらウォルフが強くとも、一斉にかかられたらどうにもならないはず。
バッ「アリサ?!」
「多勢に無勢だよ!これ以上、我慢出来ない!!」
あたしは駆け出し、ウォルフとその冒険者達の間に飛び込んだ。
「アリサ!?」
マルリーサが叫んだけど、このままにして置けない!
私は、ウォルフを背に皆に叫んだ。
「みんな、ウォルフは皆と同じ冒険者だよ。仲間じゃないか。差別は駄目だよ!」
「アリサだ!?」、「壁炎の魔女だ!」、「 壁炎の魔女が獣人を庇うだと!?」
「そうえば、魔女は獣人女とパーティーを組んでいたな?」
「獣人女は奴隷だろ。アリサは人間だぜ」
「じゃあ、何でこの狼獣人を庇ってんだ?」
「さあ?」
なんだよコイツら!?勝手な事を言って。
冒険者仲間を庇うのは当たり前じゃないか。
それにマルリーサが奴隷だって!?
許さない!
あたしが目の前の冒険者達に文句を言おうとすると、後ろのウォルフが、あたしの肩に手をやり横に退かす!?
彼を見上げると、ウォルフはチラ見して呟いた。
「……耳を塞いで、下がっていろ…………」
「ウォルフ?」
ウォルフは、あたしの前に立つと冒険者達に対峙した。
耳を塞げって!?
くいっ、後ろからマルリーサが、あたしの服を引き、耳を塞ぐようにゼスチャーする。
わ、分かったわよ。
あたしは訳もわからず、マルリーサと同じように自分の耳に手を当てる。
「な、なんだ、やるのか!?」
「この獣ヤロウ!」、「やっちまえ!!」
冒険者達は、ウォルフの態度に対立姿勢を顕にする。もはや一色触発は避けられないと思われた。
ウオオオーーーーーーーーーーーーンッ
その瞬間、冒険者組合の建物内に大音量の激しい獣の鳴き声が響いた!?
「うわあああ!」
「ぐわああ、耳が?!」
「ぎゃああ!」
「きゃあ!?」
「「「「きゃあ!」」」」、「「わあっ」」
「ひゃああ!?」
す、凄!
ウォルフが激しく咆哮した。
耳を塞いでいても鼓膜が破れそう。
マルリーサを見ると耳を塞いだまま、しゃがんで耐えているようだ。
彼女は只でさえ耳が良い。
恐らくかなり耳が痛いはず。
でも、あの無法者の冒険者グループは皆、座り込んで震えて戦意喪失だ。
殴り合わずに場を納めるなんて、ウォルフは流石だ。
ザッ、ザッ、ザッ
ウォルフはそのまま倒れている冒険者達の間をすり抜け、あたし達に振り返りもせずに出口から出て行った。
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