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説得
説得 おじさん視点3(過去)
しおりを挟むパチ・・・パチ・・・
暖かい・・・
それにこれは・・・焚火の音か・・・?
俺は・・・どうなったんだ・・??
たしか、ビッグフットに遭遇して・・・それから・・・
・・・!!!?
そうだ!!妻は!!??無事なのか!!??
俺はガバっと身体を起こした。
「おっと・・・気が付きましたな」
俺は声の方向を見ると先ほどの老人がいた。
「あんた!!」
そう叫びながら妻は俺を抱きしめた。
そうだ・・・俺はこの老人に助けられて・・・
「さっきは助かった・・・いえ、助かりました。本当にありがとうございます」
「ほほほ!気になさるな。あれくらいどうってことないわい」
ど、どうってことないって・・・・
とはいえ、たった一振りでビッグフットの腕を切り落とした老人だ。
本当に大したこと無いんだろうな・・・・
なんて、爺さんだ・・・
そういえば、ばあさんの姿が見えないな・・・
俺は周囲を見渡した。
ここは・・・俺たちがさっきまで寝床にしていた洞窟だ。
「あ、あの・・・もう一人ご婦人がいたと思うのですが・・・」
俺は爺さん・・・いや、ご老人に聴いた。
その時だった。
「戻ったよ。ヴェルゼン。お、あんた目が覚めたか」
「おお、ご苦労じゃったな。して、どうじゃった?」
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あの3人?
・・・さっき逃げた戦士たちの事か!
ダメって・・・どういうことだ!?
「あ、あの!!ダメとは・・・?」
俺はご婦人に聞いた。
一時的に、さらに散々な扱われ方をされたとはいえ、仲間だったのだから心配だった。
「あんたが気絶した後、また猛吹雪が吹いてね。急いで探しに行ったんだ」
たしかに外を見ると猛吹雪に戻っていた。
「血の跡が見えたんでそれを辿って行ったら、スノーウルフに出くわしたんだよ。
たぶん、今頃は奴らに食い殺されているだろうね・・・」
「そ、そんな・・・」
「それにこの吹雪じゃ、遺体を探すのも難しい。悪いけど、これ以上は無理だ」
このご婦人はこの吹雪の中、探しに行ってくれたんだ。
むしろ、申し訳ない位だった。
「い、いえ、この吹雪じゃ仕方ありません。むしろご婦人が無事で何よりです」
「ははは!ワタシは大丈夫さ!若いころはたった一人で雪山でモンスターとやりあったことがあるしな!」
・・・・いや、このご婦人も人間じゃないのかもしれない・・・
「ほほほ!さて、丁度スープが出来上がりましたぞ。お二人は夕食はもうお済かな?」
「は、はい・・・先ほど就寝する前に携帯食料を取ったので‥‥」
ぐぅうううう・・・・
そう言って遠慮しようと思ったら、腹が鳴ってしまった。
な、情けない・・・
「ほほほ!この雪山の中でそれだけでは足りないでしょう!遠慮することは無い。一緒に召し上がりましょうぞ」
「で、ではお言葉に甘えて・・・」
ご老人が渡してくれたのはかぼちゃのスープだった。
こんな雪山でこんな暖かいものが食べられるなんて・・・・
「う・・・ううぅ・・・」
驚いて妻を見ると泣いていた。
「あらあらどうしたんだい?」
「・・・怖かった・・・死ぬかと思った・・・」
その言葉を聞いた瞬間、俺も涙が出てきてしまった。
俺も正直、死ぬかと思ったんだ・・・
「あらあら・・・まだ若いとはいえ、大の大人が二人そろって泣いちまったよ」
「仕方ないじゃろう。この二人は見たところ、戦闘経験が無いのじゃろう。それにあのビッグフットじゃ。普通の冒険者なら恐れて当然じゃ」
「す、すみません・・!」
俺はすぐに二人に謝った。
「なあに、気にすることは無いさ。ワタシも言い方が悪かったね」
「全く・・・お前さんは口が悪いのは治らんのぉ」
「・・・あんたの減らず口もな!」
このご老人たち、本当に仲が良いのだろう・・・
俺たちもこの夫婦のようになりたいものだ・・・
それから俺はご老人たちに説明をした。
「なるほど・・・雪花月を・・・それでお子さんが出来ない病気を治そうとしたのですな」
「はい・・・妻と二人で運び屋をやっていれば、何かしらの治療法を見つかると思ったのです。雪花月で作った万能薬なら、妻と私の不妊の病気を治せるかもしれないと」
「なるほどのう・・・」
ヴェルゼンさんは深く考え込んでしまった。
なんだ?
どうしたんだ?
「ヴェルゼン、正直に言ったらどうだい?黙ったってこの二人のためにならないさ」
「そ、そうじゃな・・・お二人には悪い知らせなのじゃが・・・」
なんだ・・・嫌な予感がする・・・
まさか・・・
「雪花月は確かに、ほとんどの病気に効く万能薬として知られています。しかし、不妊の病気を治るという話は、少なくともワシは聞いたことが無い・・・申し訳ない・・・」
「そ、そうですか・・・」
なんてことだ・・・
俺たちはあんな思いまでしたのに・・・
これがその結果だっていうのかよ・・・・
「そんな・・・アタシたちはいったい何のために・・・・」
「!おい・・・!!」
「だってそうじゃないか!!奴らに散々な目に遭わされて!!おまけにビッグフットまで出てきて死にそうな思いまでして!!奴らにも囮にされて!!それがこの結果じゃないか!!!」
「おい!!止めるんだ!!お二人に迷惑だろ!!」
「大丈夫じゃ」
「え・・?」
「あんたたち、今までそうやって誰かに何か弱音とか吐いたことあるかい?ワタシには同じ女として、あんたの気持ち、よく分かるよ・・・」
「う・・・うわあああああああああああ!!!!」
妻はご婦人の胸で思いっきり泣いた。
俺だって・・・
「おぬしも男じゃからな。愛した妻を守ろうと必死になってたんじゃろう。じゃが、ここにはワシらしかおらぬ。いくらでも弱音を吐いても良い。ワシらが聞こうじゃないか」
冒険者をやっていて、こんなに優しくして貰ったのは初めてだった。
俺も妻も今まで我慢していたものを吐き出していた。
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