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かすみの命の叫び②
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俺は自分自身を慰めたのは、はじめてかもしれない。
いつでも、性的欲求を満たす相手に困ったことはない。
そこに深い愛情があるかと言えば、ほとんどないに等しい。
かすみが初めてだった。
誰にも渡したくない気持ちや、かすみが他の男の名前を口にするだけで、
気が狂いそうなくらい嫉妬した。
俺だけ見てくれ、俺のことだけ考えてくれ、俺だけ愛してくれと。
この関係はずっと続くと疑わなかった。
それなのに、かすみがこの世からいなくなる、そんな日がくるとは想像も出来ない。
かすみに無理をさせなければ、少しでも寿命が延びるなら、俺はいくらでも自分でやる。
かすみ、かすみ。
拓真はかすみの寝顔に優しくキスを落とした。
次の日の朝、拓真が目覚めると、かすみはキッチンに立って朝食の準備をしていた。
「かすみ、大丈夫なのか」
「拓真さん、おはようございます、今日は気分がよくて、だから食事の支度をしようかなって……」
「久しぶりだな、かすみの料理」
その時、インターホンが鳴った。
インターホンの画面に映し出されたのは大館だった。
「おはようございます、かすみさん、体調はいかがですか」
「大館さん、ありがとうございます、いつも心配をおかけしてすみません、
今日は気分がいいんですよ」
「そうですか、それは良かったです」
「どうした?」
急な大館の訪問に拓真は分かりかねていた。
「色々と仕事のご報告がありまして、少しよろしいでしょうか」
大館と拓真は廊下に場所を移動して、話をはじめた。
「実は近藤組は真山梨花さんの依頼で、組長とかすみさんを狙ったようです」
「ふざけたことしやがって」
「その事実を知った剣城がかすみさんの危険を心配して、かすみさんの連れ去られる場面に遭遇したと言うことらしいです」
「そうか、絶対に奴はかすみに惚れてるな」
拓真は真山梨花に対して怒りの感情が湧いてきた。
きっちりと落とし前をつけてもらわないとな。
拓真は真山組に出向くことになった。
「新堂組組長がお見えになりました」
「え、健斗が」
梨花は屋敷の入り口まで、健斗を迎えに出た。
「健斗、会いにきてくれたの?嬉しい」
そして剣城も姿を現して挨拶した。
「新堂組長、先日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
剣城は頭を下げた。
梨花はなんのことか分からず、キョトンとしていた。
しかし、健斗が会いにきてくれたことの喜びが大きく舞い上がっていた。
「梨花さん、この度はご丁寧な挨拶を頂き、久しぶりに死ぬかと思いましたよ、
それにかすみにまで、覚悟は出来ていますよね、俺はかすみ以外は考えられないので、
その旨、ご承知おきください」
健斗の言葉に梨花は背筋が凍る思いだった。
「二度はないと思ってください、今度かすみに手を出したら死を覚悟して頂きます」
健斗の言葉は丁寧だが、冷たく、恐怖を覚える感じを受けた。
「なんのことをおっしゃってるのか見当がつきません」
「しらばっくれるんじゃねえ、これ以上、自分のやった事を反省出来ないようなら、
こちらにも考えがある」
健斗はその場を後にした。
拓真が出かけている間、かすみと留守番してくれたのはツトムだった。
かすみは一通の手紙をツトムに託した。
「ツトムくん、この手紙を私が亡くなったら、拓真さんに渡してくれる?」
ツトムはかすみの言葉に息を呑んだ。
「かすみさん、何を言ってるんですか」
「人間、いつどうなるかわからないでしょ」
「それはそうですけど……」
ツトムはかすみの病気を聞いている。
だからかすみの言葉は冗談で流せなかったのである。
「ね、お願い、私がこの世から消えたら、拓真さんも消えちゃう気がするの、
それは絶対に阻止しないといけないことだから」
ツトムはあり得ることに息を呑んだ。
かすみさんがこの世から消えたら、組長は生きていない。
「この手紙は組長が生きていくためのお守りになるんですね」
「そう、この手紙を読めば、必ず、生きていかないとって思ってくれるはずだから、
ツトムくん、責任重大よ」
「はい」
その時、ドアが開いて拓真が帰ってきた。
「ツトムくん、早く手紙しまって」
「分かりました」
ツトムはかすみに言われるがままに、手紙を胸ポケットに忍ばせた。
「かすみ、ただいま、大丈夫だったか」
「はい、大丈夫ですよ」
拓真は人目も憚らずかすみにキスを落とした。
「んん、拓真さん、皆んなの前で恥ずかしいです」
「大丈夫、皆んな、目を閉じていてくれるよ」
大館、ツトム、その他の組員は皆んな、気をきかせて廊下に出て、ドアを閉めた。
拓真はギュッとかすみを抱きしめた。
「拓真さん、少し疲れたみたいなので、ベッドに連れて行ってください」
「分かった」
拓真はかすみを抱き抱えて、寝室に向かった。
かすみをベッドに横にならせて、おでこにキスをした。
「おやすみなさい、拓真さん」
「おやすみ、かすみ」
拓真は後何回かすみとキスが出来るのだろうと考えていた。
なるべく、一日でも多く、かすみと過ごしたい、拓真は神に祈った。
いつでも、性的欲求を満たす相手に困ったことはない。
そこに深い愛情があるかと言えば、ほとんどないに等しい。
かすみが初めてだった。
誰にも渡したくない気持ちや、かすみが他の男の名前を口にするだけで、
気が狂いそうなくらい嫉妬した。
俺だけ見てくれ、俺のことだけ考えてくれ、俺だけ愛してくれと。
この関係はずっと続くと疑わなかった。
それなのに、かすみがこの世からいなくなる、そんな日がくるとは想像も出来ない。
かすみに無理をさせなければ、少しでも寿命が延びるなら、俺はいくらでも自分でやる。
かすみ、かすみ。
拓真はかすみの寝顔に優しくキスを落とした。
次の日の朝、拓真が目覚めると、かすみはキッチンに立って朝食の準備をしていた。
「かすみ、大丈夫なのか」
「拓真さん、おはようございます、今日は気分がよくて、だから食事の支度をしようかなって……」
「久しぶりだな、かすみの料理」
その時、インターホンが鳴った。
インターホンの画面に映し出されたのは大館だった。
「おはようございます、かすみさん、体調はいかがですか」
「大館さん、ありがとうございます、いつも心配をおかけしてすみません、
今日は気分がいいんですよ」
「そうですか、それは良かったです」
「どうした?」
急な大館の訪問に拓真は分かりかねていた。
「色々と仕事のご報告がありまして、少しよろしいでしょうか」
大館と拓真は廊下に場所を移動して、話をはじめた。
「実は近藤組は真山梨花さんの依頼で、組長とかすみさんを狙ったようです」
「ふざけたことしやがって」
「その事実を知った剣城がかすみさんの危険を心配して、かすみさんの連れ去られる場面に遭遇したと言うことらしいです」
「そうか、絶対に奴はかすみに惚れてるな」
拓真は真山梨花に対して怒りの感情が湧いてきた。
きっちりと落とし前をつけてもらわないとな。
拓真は真山組に出向くことになった。
「新堂組組長がお見えになりました」
「え、健斗が」
梨花は屋敷の入り口まで、健斗を迎えに出た。
「健斗、会いにきてくれたの?嬉しい」
そして剣城も姿を現して挨拶した。
「新堂組長、先日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
剣城は頭を下げた。
梨花はなんのことか分からず、キョトンとしていた。
しかし、健斗が会いにきてくれたことの喜びが大きく舞い上がっていた。
「梨花さん、この度はご丁寧な挨拶を頂き、久しぶりに死ぬかと思いましたよ、
それにかすみにまで、覚悟は出来ていますよね、俺はかすみ以外は考えられないので、
その旨、ご承知おきください」
健斗の言葉に梨花は背筋が凍る思いだった。
「二度はないと思ってください、今度かすみに手を出したら死を覚悟して頂きます」
健斗の言葉は丁寧だが、冷たく、恐怖を覚える感じを受けた。
「なんのことをおっしゃってるのか見当がつきません」
「しらばっくれるんじゃねえ、これ以上、自分のやった事を反省出来ないようなら、
こちらにも考えがある」
健斗はその場を後にした。
拓真が出かけている間、かすみと留守番してくれたのはツトムだった。
かすみは一通の手紙をツトムに託した。
「ツトムくん、この手紙を私が亡くなったら、拓真さんに渡してくれる?」
ツトムはかすみの言葉に息を呑んだ。
「かすみさん、何を言ってるんですか」
「人間、いつどうなるかわからないでしょ」
「それはそうですけど……」
ツトムはかすみの病気を聞いている。
だからかすみの言葉は冗談で流せなかったのである。
「ね、お願い、私がこの世から消えたら、拓真さんも消えちゃう気がするの、
それは絶対に阻止しないといけないことだから」
ツトムはあり得ることに息を呑んだ。
かすみさんがこの世から消えたら、組長は生きていない。
「この手紙は組長が生きていくためのお守りになるんですね」
「そう、この手紙を読めば、必ず、生きていかないとって思ってくれるはずだから、
ツトムくん、責任重大よ」
「はい」
その時、ドアが開いて拓真が帰ってきた。
「ツトムくん、早く手紙しまって」
「分かりました」
ツトムはかすみに言われるがままに、手紙を胸ポケットに忍ばせた。
「かすみ、ただいま、大丈夫だったか」
「はい、大丈夫ですよ」
拓真は人目も憚らずかすみにキスを落とした。
「んん、拓真さん、皆んなの前で恥ずかしいです」
「大丈夫、皆んな、目を閉じていてくれるよ」
大館、ツトム、その他の組員は皆んな、気をきかせて廊下に出て、ドアを閉めた。
拓真はギュッとかすみを抱きしめた。
「拓真さん、少し疲れたみたいなので、ベッドに連れて行ってください」
「分かった」
拓真はかすみを抱き抱えて、寝室に向かった。
かすみをベッドに横にならせて、おでこにキスをした。
「おやすみなさい、拓真さん」
「おやすみ、かすみ」
拓真は後何回かすみとキスが出来るのだろうと考えていた。
なるべく、一日でも多く、かすみと過ごしたい、拓真は神に祈った。
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