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かすみの秘密①
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かすみは体調が戻らず、癌の再発を恐れていた。
入院した病院で検査が行われて、結果が出たと連絡があった。
拓真さんには知られたくない。
かすみは拓真に内緒で病院へ向かった。
「花園かすみさんですね、この間の検査結果が出ました、今のところ再発は認められません」
「そうですか、よかった」
「でも体力や機能の低下が認められますので、注意してください、定期的に検査をお勧めします」
「はい、わかりました」
「お仕事も程々にしてください」
かすみは病院を後にした。
かすみは長期休暇を出している春日部コーポレーションに顔を出すことにした。
拓真さんにも会えるかも。
かすみは会社のビルに入って行った。
間が悪いとはこのことを言うのだろう。
この時、真山梨花が拓真を訪ねてきていた。
かすみは秘書室の社員に挨拶した。
「花園先輩、大丈夫ですか」
「ごめんね、迷惑かけて」
「気にしないでください」
「社長いる?」
「はい、でもお客様がいらしているんです」
「そうなんだ」
「とても妖艶で、綺麗な人です、社長の恋人ですかね」
かすみと拓真の関係を知らない秘書室の社員は興味深々でかすみに伝えた。
えっ、拓真さんの恋人?
ダメと思いながら、社長室に向かっていた。
ドアが少し開いていて、中の様子が見えた。
かすみの目に飛び込んできたのは、拓真とその女性がキスをしているところだった。
かすみはショックを受ける。
なんて妖艶な美しい人なの?
私なんて足元にも及ばない。
かすみは背中を向けて社長室を後にした。
どこをどう歩いたのかわからないくらい、あたりは薄暗くなっていた。
その頃、社長室では、拓真にキスした梨花が拓真に怒鳴られていた。
「何をする、ふざけんじゃねえぞ」
「嫌だわ、健斗、私たちは結婚するんですよ」
「そんな話は認めてねえ、もう俺の前に現れるな」
「そんなこと言っていいのかしら、キャバ嬢ユリエに熱をあげるのは勝手ですけど、
どうせ、短い間なんですから、もう諦めた方がいいと思いますよ」
梨花は健斗に勝ち誇ったように言葉を発した。
「どう言うことだ」
「健斗、知らないんなら、教えて差し上げます、ユリエさんは三年前に、
子宮癌を患い、子宮全摘出手術を受けたんです、なので子供は生めません、
それに再発する可能性は百パーセントです」
健斗は梨花の言葉をすぐには理解出来なかった。
「もうすぐこの世を去っていく女を側においておいてもしょうがないと思いますけど」
梨花は社長室を後にした。
社長室に残された健斗は呆然と立ち尽くした。
どう言うことだ。
かすみがもうすぐこの世を去るだと。
拓真はすぐに大館に連絡した。
「大館、かすみの病気について調べろ」
「かしこまりました」
拓真は今までのかすみの言葉を思い出していた。
そうだ、俺の言葉を信じてないんじゃなく、自分の立場を弁えていたんだ。
癌を患っているなら、再発は誰もが恐れていることだ。
しかも子供を生めないのなら、俺の結婚は受けられないと思ってもおかしくない。
拓真は納得した、でも梨花からの情報なら、間違いがある可能性は十分にあると感じていた。
そこへ、秘書室の社員がやってきた。
「社長、花園先輩とお会いになりましたか」
「花園?」
「はい、病院へ行った帰りに寄ってくれたんですが、すぐに帰ってしまったので、
お客様がお見えになっていたからですかね」
拓真はかすみにもしや梨花にキスされた瞬間を見られたのかと動揺した。
すぐにかすみに連絡した。
スマホを鳴らしたがかすみはスマホに出ることはなかった。
拓真は嫌な予感が脳裏を掠めた。
まさか、俺の前から姿を消すなんてことないよな。
拓真は慌てて社長室から飛び出した。
「社長、どちらへ行かれるのですか」
秘書室の社員の言葉は拓真には届かなかった。
春日部コーポレーションのビルの前には、拓真から連絡を受けたツトムが
待機していた。
「ケンジ、かすみと連絡が取れない、まず、マンションへ行ってくれ」
「分かりました」
ケンジはマンションへ車を走らせた。
「若頭、かすみさんと喧嘩でもしたんですか」
「いや、真山組お嬢の梨花が訪ねてきて、俺にいきなりキスしてきた」
「もしかして、かすみさんに見られたんですか」
「多分」
「それはやばいですね、かすみさんは相当落ち込んでますね」
「やっぱり、そうか、でも、俺はかすみに自分の気持ちを伝えてる、
俺を信じてくれていないってことじゃねえのか」
ケンジは自分が思っていることを拓真に話した。
「若頭、キスしてるところを目の当たりにすれば、誰だって動揺しますよ、
実は俺もある女を信じられなくて、目の前で堅気の男に抱きしめられてるのを見た時、
これ以上、傷つきたくなくて、別れを告げました、弱いんですよね」
入院した病院で検査が行われて、結果が出たと連絡があった。
拓真さんには知られたくない。
かすみは拓真に内緒で病院へ向かった。
「花園かすみさんですね、この間の検査結果が出ました、今のところ再発は認められません」
「そうですか、よかった」
「でも体力や機能の低下が認められますので、注意してください、定期的に検査をお勧めします」
「はい、わかりました」
「お仕事も程々にしてください」
かすみは病院を後にした。
かすみは長期休暇を出している春日部コーポレーションに顔を出すことにした。
拓真さんにも会えるかも。
かすみは会社のビルに入って行った。
間が悪いとはこのことを言うのだろう。
この時、真山梨花が拓真を訪ねてきていた。
かすみは秘書室の社員に挨拶した。
「花園先輩、大丈夫ですか」
「ごめんね、迷惑かけて」
「気にしないでください」
「社長いる?」
「はい、でもお客様がいらしているんです」
「そうなんだ」
「とても妖艶で、綺麗な人です、社長の恋人ですかね」
かすみと拓真の関係を知らない秘書室の社員は興味深々でかすみに伝えた。
えっ、拓真さんの恋人?
ダメと思いながら、社長室に向かっていた。
ドアが少し開いていて、中の様子が見えた。
かすみの目に飛び込んできたのは、拓真とその女性がキスをしているところだった。
かすみはショックを受ける。
なんて妖艶な美しい人なの?
私なんて足元にも及ばない。
かすみは背中を向けて社長室を後にした。
どこをどう歩いたのかわからないくらい、あたりは薄暗くなっていた。
その頃、社長室では、拓真にキスした梨花が拓真に怒鳴られていた。
「何をする、ふざけんじゃねえぞ」
「嫌だわ、健斗、私たちは結婚するんですよ」
「そんな話は認めてねえ、もう俺の前に現れるな」
「そんなこと言っていいのかしら、キャバ嬢ユリエに熱をあげるのは勝手ですけど、
どうせ、短い間なんですから、もう諦めた方がいいと思いますよ」
梨花は健斗に勝ち誇ったように言葉を発した。
「どう言うことだ」
「健斗、知らないんなら、教えて差し上げます、ユリエさんは三年前に、
子宮癌を患い、子宮全摘出手術を受けたんです、なので子供は生めません、
それに再発する可能性は百パーセントです」
健斗は梨花の言葉をすぐには理解出来なかった。
「もうすぐこの世を去っていく女を側においておいてもしょうがないと思いますけど」
梨花は社長室を後にした。
社長室に残された健斗は呆然と立ち尽くした。
どう言うことだ。
かすみがもうすぐこの世を去るだと。
拓真はすぐに大館に連絡した。
「大館、かすみの病気について調べろ」
「かしこまりました」
拓真は今までのかすみの言葉を思い出していた。
そうだ、俺の言葉を信じてないんじゃなく、自分の立場を弁えていたんだ。
癌を患っているなら、再発は誰もが恐れていることだ。
しかも子供を生めないのなら、俺の結婚は受けられないと思ってもおかしくない。
拓真は納得した、でも梨花からの情報なら、間違いがある可能性は十分にあると感じていた。
そこへ、秘書室の社員がやってきた。
「社長、花園先輩とお会いになりましたか」
「花園?」
「はい、病院へ行った帰りに寄ってくれたんですが、すぐに帰ってしまったので、
お客様がお見えになっていたからですかね」
拓真はかすみにもしや梨花にキスされた瞬間を見られたのかと動揺した。
すぐにかすみに連絡した。
スマホを鳴らしたがかすみはスマホに出ることはなかった。
拓真は嫌な予感が脳裏を掠めた。
まさか、俺の前から姿を消すなんてことないよな。
拓真は慌てて社長室から飛び出した。
「社長、どちらへ行かれるのですか」
秘書室の社員の言葉は拓真には届かなかった。
春日部コーポレーションのビルの前には、拓真から連絡を受けたツトムが
待機していた。
「ケンジ、かすみと連絡が取れない、まず、マンションへ行ってくれ」
「分かりました」
ケンジはマンションへ車を走らせた。
「若頭、かすみさんと喧嘩でもしたんですか」
「いや、真山組お嬢の梨花が訪ねてきて、俺にいきなりキスしてきた」
「もしかして、かすみさんに見られたんですか」
「多分」
「それはやばいですね、かすみさんは相当落ち込んでますね」
「やっぱり、そうか、でも、俺はかすみに自分の気持ちを伝えてる、
俺を信じてくれていないってことじゃねえのか」
ケンジは自分が思っていることを拓真に話した。
「若頭、キスしてるところを目の当たりにすれば、誰だって動揺しますよ、
実は俺もある女を信じられなくて、目の前で堅気の男に抱きしめられてるのを見た時、
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