騎士様のアレが気になります!

茜菫

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本編

33-3

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「…確かに、可能性はあるように思える」

「やった!へへ、じゃあ、試してみようよ!」

 可能性を認められ、オリヴィエの役に立てるとヴィヴィアンヌは喜ぶ。しかし、彼の眉間には皺が寄っていた。

(…僕はただ、ヴィヴィと一緒にいたかっただけなのに…結果的には、利用している…)

 オリヴィエはヴィヴィアンヌを森の外に連れ出したいと考えていたし、その想いを伝えて了承も得ている。それは、惚れたヴィヴィアンヌと一緒にいたいという気持ちが一番に強かった。他者を知らずに一人ひっそりと暮らし、何も知らないヴィヴィアンヌへの同情や心配の気持ちもあったが、決して彼女を利用するために連れ出そうとしたのではない。

 オリヴィエの想いやヴィヴィアンヌの考えに関わらず、彼女を王妃の呪いを解くものとして連れて出せば、彼は彼女を利用したことになる。王の御前に赴けば、ヴィヴィアンヌは否応なしに王からも利用されるだろう。

 けれども、王妃を救える可能性があるのならば、オリヴィエはそれを選んでしまう。それを思うと、オリヴィエはヴィヴィアンヌに申し訳ない気持ちになっていた。

「…ヴィヴィは、いいのか?」

「えっ、なにが?」

「…狂王は、君のお母さんやひいおばあさんを殺して…君がこの森に一人になったのもら狂王のせいだ」

 ヴィヴィアンヌの母は狂王に殺され、それに怒り、激しい憎悪を抱いて牙を剥いた曾祖母も殺された。祖母はヴィヴィアンヌを守るために森に逃げ込み、外界との繋がりを断った。ヴィヴィアンヌがこの森に一人、隠れながら暮らすことになったのは狂王のせいだと言ってもいい。

 そして、今の王は狂王を討ったとはいえ、その息子だ。王妃を救うことは、王を救うことにもつながる。狂王の血縁を救うことになっても、本当に良いのか。オリヴィエはそう問うているのだろう。

「狂王が、なにかあるの?」

「…いや…」

 だが、ヴィヴィアンヌにはオリヴィエが思うようなことは一切考えつかなかった。彼女の世界には、オリヴィエが現れるまで自分と祖母以外の存在などなかったのだから。

 ヴィヴィアンヌは母のことも曾祖母のことも何も覚えておらず、その死の原因も最近知ったばかり。祖母がいなくなったときは悲しんだが、それからは一人でいることが当然のことであって、寂しさを感じることもなかった。

「騎士様、王妃様の呪いを解きたいんだよね」

「…ああ」

「解けたら、騎士様、嬉しいよね?」

「ああ、嬉しい」

「だったら、私、やるよ!」

 ヴィヴィアンヌが森の外に出たいのは、オリヴィエと一緒にいたいから。一緒にいたいのは、いなかったときに比べると楽しくて嬉しいからだ。王妃の呪いを解こうとするとは、オリヴィエに喜んでほしいから。彼が喜ぶと、ヴィヴィアンヌも嬉しいからだ。

「…ありがとう、ヴィヴィ」

「…へへっ」

 オリヴィエはヴィヴィアンヌを抱き寄せると、そっと唇に口付ける。ヴィヴィアンヌはそれを喜んで受け入れ、同じように口づけた。
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