騎士様のアレが気になります!

茜菫

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本編

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 二人はひとまず洞窟に戻った後、残った書物にざっと目を通した。思った通り、王妃の呪いに関する記述はどこにもない。

 そもそも、魔女は明確な殺意を持って狂王のもとに向かった。相手の命を奪うことが目的であって、呪いはそれが叶わず己の死を前にした、最期の執念での悪あがきだ。準備された呪いではないため、なにも見つからないのも当然だろう。

(結局、周りの言う通り……ここにはなにもなかったんだな……)

 オリヴィエはこうなるかもしれないと予想はしていた。だが、なにもなかったという事実は重くのしかかる。

(いや、ここにきたから……僕はヴィヴィと出会えたんだ)

 ヴィヴィアンヌと出会い、彼女の協力を得られていなければ、なんの成果もなく都に戻ることになっていただろう。そもそもヴィヴィアンヌに助けられなければ、二度と都に足を踏み入れることも、明日の太陽を見ることもなかったかもしれない。

 暗くなる前に小屋に戻った二人はこれからのことを話し合う。王妃の呪いを解くためにも、まずは王都へ向かわなければならない。

「騎士さま、じゃあ、明日になったら出発する?」

「早いほうがありがたいけれど……ヴィヴィの準備は、いいのか?」

「準備?」

「……後片づけとか」

「なにか、片づけておかないといけない?」

 オリヴィエは小屋を見回したが、片づけるほどのものがなにもなかった。必要最低限のもの以外は、すべて魔女の洞窟に押し込めていたのだろう。

「……あと、服装は……」

「服? これじゃ、だめ?」

 ヴィヴィアンヌの身なりは長年使いまわして着古された服と破れた外套、手足には布を巻いて靴のかわりに草履のような履物を布で固定しているだけだ。ほぼ毎日同じ服装で、ほかに服を持ち合わせていないのだろう。

「……いや、それで大丈夫。あとは、持っていきたいものとか」

「あっ、じゃあ、これ持っていっていい?」

 ヴィヴィアンヌがそう言って懐から取り出したのは、小さなシロップの瓶だ。持っていきたいものと言われて一番に選んだものがそれだと思うと、オリヴィエは愛らしいような、けれどもどこか切ないような不思議な気持ちになる。

「ああ、それくらいなら邪魔にならないだろうし。あとは、芋と木の実も少し持っていこう」

「やった! じゃあ、あまっているのは食べられるだけ食べちゃおう!」

「そうしようか」

 ヴィヴィアンヌはうれしそうに、小屋の隅においてある保管用のシロップが入ったつぼを引き出した。今日一日では消費しきれない量だ。

(……ほかにもおいしいものを、たくさん食べさせてあげたいな)

 つぼに手を差し入れ、指にたっぷりとついたシロップをなめ取り、うれしそうに笑っているヴィヴィアンヌを眺めながらオリヴィエもつられて笑う。

(…………これは、なんだか……こう……)

 ヴィヴィアンヌの指の根元まで垂れたシロップを懸命になめ取る姿にぐっとくるものがあるようで、オリヴィエはそれをじっと見つめながら生唾を飲んだ。ヴィヴィアンヌは彼の様子に気づくと、シロップにまみれた指を差し出す。

「騎士さま、あーん」

 ヴィヴィアンヌはオリヴィエの視線をシロップをなめたいという意志だと解釈したようだ。差し出された指を暫し無言で見つめたあと、オリヴィエは舌を差し出してゆっくりとなめる。舌先で指を絡められ、ヴィヴィアンヌは少し擽ったくなって笑った。

「……へへ。騎士さま、くすぐったい」

 もう一度指でシロップをすくったヴィヴィアンヌはそれをオリヴィエに差し出した。ゆっくりと指をなめながら目を見つめてくるオリヴィエの視線に、ヴィヴィアンヌはむずむずするような感覚を覚えて両腿を擦り合わせる。

(……なんだか、変な感じ)

 オリヴィエにじっと見つめられて、ヴィヴィアンヌは胸がどきどきと高鳴った。指についたシロップがなくなっても、オリヴィエは指をなめ続けている。

「……騎士さま」

「……うん?」

「なんだか、変な感じ」

「……ここが?」

 オリヴィエは手を伸ばし、ヴィヴィアンヌの下腹部に手を当てた。ヴィヴィアンヌはそこに自分の大事なものがあることに気づき、変な感じがなんなのかを悟る。

「……私、騎士さまの大事なものが、欲しくなったみたい」

「そっか。僕も、ヴィヴィがほしくなっているんだ」

「……騎士さまも、変な感じ?」

 ヴィヴィアンヌはオリヴィエの股間に目を向ける。そこはいつもより少しふくらんでいるように見えて、ヴィヴィアンヌは好奇心が膨れ上がった。

「騎士さま、見てもいい?」

「……名前を呼んでくれたら、いいよ」

「じゃあ、オリヴィエ、見せて!」

 嬉々として名前を読んだヴィヴィアンヌに苦笑いしつつ、オリヴィエはズボンの前をくつろげる。下着代わりの布もずらすと、そこから大事なものが現れた。

「……ちょっとだけ、セイリゲンショウ?」

「……ああ」

 ヴィヴィアンヌは興味津々にそれを眺める。介抱時に見たときよりは大きく、昨夜よりは小さく見えた。

「……不思議。変な感じになると、大きくなるの?」

「……うん、まあ……」

「どうして大きくなるの?」

「そ、それは、えっと……その……昨日みたいに、ヴィヴィの中に入るために……」

「……大きくなる必要、あるの?」

「いや、大きくというか……その、硬くなって……」

「えっ、硬くなっているの?」

 ヴィヴィアンヌは知らなかった新事実に目を輝かせ、おもむろにオリヴィエの陰茎をそっとつかむ。熱を帯びて大きくなったそれは、以前に何度か介抱で触ったときよりも大きく硬かった。

「本当だ! ……すごい。大きくて、硬くなってる……!」

「……ヴィヴィ……あの……」

 無自覚に煽られて、オリヴィエは顔を真っ赤にした。同時に彼の大事なものが大きさと硬さを増し、立派に勃ちあがる。昨夜見た状態とほぼ同じ状態になり、ヴィヴィアンヌはすごいと感動した。

(あ。そういえば、騎士さまが前に……)

 ヴィヴィアンヌは以前のぞき見したオリヴィエの自慰の様子を思い出す。見様見真似で陰茎を片手で包み込むように握りなおすと、ゆっくりと前後に手を動かし、擦り始める。

「えっ、あ……!?」

 予想外の刺激に驚いたオリヴィエは声を上げ、慌てて自分の口元を手で塞いだ。

「ヴィヴィ、なんで、そんなことを!?」

「えっ、……だめだった?」

 オリヴィエは男女の営みの知識などないはずのヴィヴィアンヌのその行動にただ驚かされた。実は魔法で身を隠したヴィヴィアンヌがオリヴィエの自慰現場を見て知ったなどと知るはずもなく、このまま一生知らないほうが彼のためだろう。

「いや、だめじゃない……うん、まったくだめじゃない。そのまま、続けてくれ」

「いいの?」

「いい。むしろ、して欲しい」

 自分の欲に正直になったオリヴィエは、そのまま手を動かすヴィヴィアンヌを目に焼きつけようとするようにしっかりと眺めた。先端から先走りがあふれ、ヴィヴィアンヌの指をぬらす。

「……ヴィヴィ、それ絡めて」

「こう?」

 ヴィヴィアンヌは言われたとおりに先走りを手に絡め、緩々と手を動かした。けっしてうまくはないが、もどかしくも気持ちいいらヴィヴィアンヌから与えられる刺激にオリヴィエは息を吐く。

「……ヴィヴィ。これの意味、わかっている?」

「ううん」

「……だよね」

 予想通りの答えにオリヴィエは苦く笑った。ヴィヴィアンヌは手を動かしながら昨夜のことを思い出す。ヴィヴィアンヌの中に大事なものを挿れたオリヴィエは、それだけでは終わらなかった。

(騎士さまのあれが、出たり、入ったり……)

 腰を動かして抽送し、ヴィヴィアンヌはそれに気持ちよくなって、オリヴィエも気持ちいいと言った。

「……あ、わかった」

「えっ、わかったんだ……うっ……」

 手の動きがそれに類似していることに気づいたヴィヴィアンヌは、答えを得たようだ。

「……オリヴィエ、気持ちいい?」

「……っ、あぁ、気持ちいいよ、ヴィヴィ……」

 オリヴィエは手を伸ばすと、ヴィヴィアンヌの頬に触れた。ヴィヴィアンヌが手を止めて顔をあげると、オリヴィエはその唇にそっと口づける。オリヴィエが舌を差し出すとヴィヴィアンヌも応えるように舌を差し出し、二人は舌を絡め合いながら深く口づけた。
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