騎士様のアレが気になります!

茜菫

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本編

18-2

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(…なんだろう。胸が、変な感じ)

 ヴィヴィアンヌは再び感じた胸が締めつけられる感覚に胸を抑え、首を傾げた。けれどもすぐに首を横に振ると、立ち上がって裾を払う。

「あっ、それじゃあ先に魔法で治療したほうがいいよね」

「…何から何まで、ありがとう」

「へへ、どういたしまして」

 オリヴィエが目を細め、ヴィヴィアンヌに礼をする。感謝されることが、ありがとうと言葉をかけてもらえることが、ヴィヴィアンヌは嬉しかった。それは、一人では知れなかった喜びだ。

 二人が小屋に戻ると、ヴィヴィアンヌはオリヴィエの足を治療する。彼女の魔法により、オリヴィエは走ったりといった激しい動作はまだ出来ないものの、歩くには十分に回復した。ヴィヴィアンヌは多少疲れてしまったが、気づかれないように振る舞い、編みかごを片手に掛けて森へと入る。

「ヴィヴィアンヌ、そのかごは?」

「これ?ついでに木の実を拾おうと思って」

 オリヴィエは彼女の言葉に表情を曇らせた。彼は貯蓄してある食料を消費しているが、それに見合うほどの、いやそれどころかこれといってヴィヴィアンヌの役に立てた覚えがないからだ。ヴィヴィアンヌの最初の望みどおり、森の外について様々なことを話しているが、対価としてはあまりにも価値がないとオリヴィエは思っている。

(…ううん、見せるくらいなら礼として…いやいや、やっぱりだめだろう。ただの変態じゃないか、僕…)

 ヴィヴィアンヌの渇望するあれの観覧くらい聞くべきかとオリヴィエは一瞬考えたが、冷静に考えて、恋人や夫婦ないし近い関係でもない女の子に見せるのは、流石に拙すぎると思い直した。

「騎士様?」

「い、いや…なんでもない」

 考え込んだオリヴィエを不思議に思い、ヴィヴィアンヌが声をかける。オリヴィエは誤魔化して別の話題を振り、二人は他愛のない会話をしているうちに崖の近くまでたどりついた。

「ここだよ。騎士様が倒れていたのは、あのへん」

「…よく生きていたな、僕…」

 オリヴィエは自分の背丈の五倍ほどはある崖を眺めながら、ぽつりとつぶやいた。断崖絶壁とまでは言わずとも随分と険しく、登るのは難しそうだ。少なくとも、今のオリヴィエの状態では不可能だろう。

「上に行くには、迂回するしかないか…?」

 オリヴィエが迂回できる道がないかとあたりを見回し、その様子を眺めながらヴィヴィアンヌは口を開く。だが、彼女は思いついたそれを言葉をにすることに躊躇し、それは音にならずに飲み込まれた。
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