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第十七章

危険な戦法はやめて下さいね

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 爆炎は一回では収まらなかった。

 ワームホールからは、火山噴火のように何度も爆炎が吹き出している。

 ワームホールの前に集結していたドローンが、今の攻撃で一斉に誘爆したのだろうか?

「隊長。ワームホールが閉じないところを見ると、向こうの設備に損傷を与えられたのではないでしょうか?」
「おそらくそうだろう」

 ていうか、これだけ激しく爆発しているのに損傷なしなんて事はないな。

 問題は、どの程度の損害か?

「こっちも、ドローンを送り込んで確認してみよう」
「その前に、あれはどうしましょう?」

 こっちに出て来たドローンが、まだ二機残っていた。

 まだこっちへ向かってくる様子はないが、このまま残しておいてはやっかいだ。

「先に片づける必要があるな」

 と僕が言った直後、二機のドローンが動き出した。

 僕達の方ではなく《あすか》の方へ向かって……

 通信機で芽依ちゃんを呼び出す。

「芽依ちゃん。S131二機がそっちへ向かった。迎撃してくれ。方法は任せる」
『了解しました。お任せください』

 よし! 向こうは芽依ちゃんに任せた。

「橋本君。彩雲を」
「は!」

 戦場上空で待機していた偵察ドローン彩雲は、橋本晶のコントロールで降下してきた。

「このままワームホールへ向かわせます」
「頼む」

 《あすか》の方へ目を向けると、ロケット砲を構えた芽依ちゃんが敵ドローンへ真っ直ぐ向かっていた。

「隊長。ワームホールからの反撃はありません。このままワームホール内に突入します」

 橋本晶の方に目を向けると、彩雲がワームホール内へ突入したところ。

 バイザーの映像を、彩雲から送られてきたものに切り替える。

 だめだ。濃密な粉塵に遮られ、映像では何も分からない。

「隊長。しばしお待ちを」

 バイザーの映像を切って《あすか》の様子を見た。

 芽依ちゃんとドローンはかなり接近している。

 近づきすぎだ。ミサイルの射程は、とっくに越えているが……

 その時になって、芽依ちゃんはロケット砲を撃った。

 しかし、そこから放たれたのはミサイルではない。

 ネットだ。

 なるほど。芽依ちゃんが持っていた武器をロケット砲だと思っていたが、あれは新開発の対ドローンネットランチャーだったのだな。

 ネットが空中で急速に広がり、ドローンの行く手を阻む。

 一機のドローンが絡め取られて落ちていった。

 そのまま海面に到達する前に、ドローンは自爆。

 敵のドローンオペレーターも、またワームホールに放り込まれてはかなわんと思って早めに自爆したようだな。

「先ほど隊長が使った戦法を、敵は学習したようですね。もうあんな危険な戦法はやめて下さいね」

 いや、危険な戦法はやめてって、君にだけは言われたくないのだが……

 それはそうと、もう一機のドローンはネット攻撃をなんとか逃れたようだが、回避するために《あすか》への衝突コースから大きく外れてしまっていた。

 コースを修正しているところへ、今度は《あすか》の二十ミリ電磁砲レールガンの砲弾が雨のように降り注ぐ。

 ドローンはたちまち空の塵と化した。
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