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第十七章

ドローン群襲来

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「なんですか? この音は?」

 ミールは不安そうに周囲を見回す。

「ミールさん、落ち着いてください。これはただの非常事態を伝えるための警報音ですから」
「なあんだ。ただの非常事態ですか」

 いや、非常事態はただ事ではないのだが……

「何事ですか!?」

 その一方で、橋本晶がガバッと起きあがった。

「ん? もう朝?」

 ミクも目をこすりながら起きあがる。

 全員起きたはいいが、いったい何があったんだろう?

 程なくして警報音が止み、キャビン内にアスカの声が流れた。

「十一時の方向三十キロより、複数のレーダー波をキャッチしました。ドローンによるものの可能性大です」

 リトル東京から十分に離れたところで現れた。

 という事は待ち伏せか。

「アスカ。偵察ドローンは出せるか?」
「偵察ドローン彩雲さいうん二機が、いつでも出撃可能です」
「では、一機出してくれ」
「了解」

 プロペラ推進の小さな機体が、母機あすかから勢いよく離れていく。

 程なくして、ドローンから情報が送られてきた。
 
「ドローンは十二機。機種はすべてプロペラ機」

 続いて映像が現れる。

 最初は不鮮明な映像だったが、補正がかかり次第に姿が鮮明になってきた。

 後部にプロペラを装備した三角翼の機体。

「帝国軍のS131型ドローンです。弾頭に十五キロの炸薬を搭載した自爆カミカゼドローンになります」

 《あすか》の対空装備は十メガワット自由電子レーザー一基。二十ミリ電磁砲レールガン一基。

 そして空対空ミサイルが二発。

「《あすか》の装備だけで、守り切れる可能性は?」
「四十五パーセントになります」

 九九式機動服ロボットスーツで出るしかないな。

「芽依ちゃん。橋本君。対空装備で出撃する」
「「ラジャー!」」

 しかし、奴らどこから現れたのだろう?
    
 S131の航続距離は九百キロあるから、陸上の基地から飛んでこられないこともないが、それではどこを飛んでいくかも分からない飛行艇《あすか》をピンポイントで補足できるとは思えない。

 近くに母船がいるのか?

 そう思ってアスカに捜させて見た。

「洋上に船を発見しました」

 やはりいたか。

「しかし、S131を十機も積める程の大きさではありません」

 映像に映った船は、全長十メートルほどの木造帆船。

 船上に五人ほどの人間が見える。

 全長二メートル重量百四十キロのドローンを、十機も積めるとは思えない。
 
 たまたま近くに居ただけの漁船か何かのようだ。

 ではS131は、陸上の基地から飛んできたと考えるべきか?

 いや待てよ。帝国軍には、あの手があったな。

 九九式の装着が終わったのはその時。

「お兄ちゃん。あたしも出撃する」

 声の方を振り向くと、ミクが式神の憑代を指にはさんで構えていた。

「ミクは、ここに残ってくれ」
「どうしてよ?」
「危ないから」
「危ないなら、みんな同じじゃない!」
「そうじゃなくて、ミクの姿を敵に見せるわけにはいかないからだよ。レム神に狙われているのを忘れたのか」
「あ! そうだった」
「良い子だから、ここで大人しくしていてくれよ」

 まあ、ミクが大人しい良い子だとは思えんが……

「そうよ。ミクちゃん。ここで大人しくしていてね」
「ああ、芽依ちゃん。君もここに残ってくれ。迎撃は僕と橋本君だけで行う」

 一瞬、芽依ちゃんはショックを受けたような顔をするが……

「君には、ここを守っていて欲しいんだ」
「それはつまり、あのドローン群は陽動で、私達全員が出撃したら別働隊が《あすか》に襲いかかってくると、北村さんは考えているのですか?」

 僕は無言で頷く。

「分かりました。ではここは、私が守ります」
「頼んだよ」

 そう言って、僕は橋本晶を引き連れて飛行艇から空中へと飛び出した。
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