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第十六章
いつから守りが手薄だと錯覚していた?
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どうやら、イリーナは最初自分の方に注目を集めてから、《海龍》甲板上……ちょうど橋本晶の背後付近にワームホールを開き、奇襲を狙っていたらしい。
だが、甘い。橋本晶に死角などないのだ。
彼女の背後に立つという事は、デューク東郷の背後に立つのと同じぐらい危険なこと……
しかし、さっきはなんとか撃退できたが、今度は《水龍》が狙われている。
どうやら、ミーチャの見た光景が、レム神に伝わりそれを目印にレム神はワームホールを開いているようだ。
しかし……
「地下施設は、プシトロンパルスを遮っているのではなかったのか?」
僕の疑問にジジイが答える。
「おそらく、時空穿孔機付近に中継機があるのじゃろう」
「中継機? そんな物は見あたらなかったぞ。それに中継機を運用するには交代要員が……」
「いや、タウリ族の作った中継機じゃ。おそらく、生体などには頼らない装置なのじゃろう」
なるほど……おっと! 今は、考えている場合ではない。《水龍》に開いたワームホールから、帝国兵がワラワラと出てきた。
イリーナはメガホンを《水龍》に向ける。
「《水龍》を占領しなさい。今なら、守りは手薄なはずよ」
イリーナは僕の方をふり向き、邪悪な笑みを浮かべた。
「カイト・キタムラ。《水龍》は頂くわよ。レム様を欺いた罰としてね」
ワームホールから出てきた八人の兵士たちは、甲板上に集合すると司令塔へ向かって駆けだした。
「イリーナ。聞いていいか?」
「何かしら?」
先頭の兵士が《水龍》司令塔を登り、ハッチを開いた。
「いつから《水龍》の防御が、手薄だと錯覚していた?」
「はあ? 錯覚? 実際手薄でしょ。今、あの船にいるのは、帝国を裏切った薬師のカミラ・マイスキーだけ。艦長の章麗華は、ヘリコプターで出撃している事は知っているわ」
一人の兵士が《水龍》艦内へ侵入。
「なるほど。ミーチャを通じて見ていたか?」
帝国兵は続々と《水龍》へ侵入して行く。
「ええ。そのまま、ヘリコプターは南ベイス島へ向かうそうね」
「アーニャ・マレンコフの操縦するヘリはそうだ。だが、章麗華のヘリは一度 《水龍》に立ち寄ってから、再び北ベイス島へ戻り、そこから南ベイス島へ向かう事になっている」
帝国兵は全員 《水龍》に入り切った。
「は? 何のために?」
「先にある人物を《水龍》に降ろすためさ」
「ある人物?」
帝国兵が悲鳴を上げて《水龍》のハッチから逃げ出して来たのはその時。
「どわわわわ!」「た……助けてくれえ!」
一度は《水龍》内部に侵入した兵士たちは、我先にとハッチから逃げ出してきた。
ただし、八人全員ではない。出てこられたのは六人だけ。残り二人がどうなったか? 推して知るべし。
帝国兵が逃げ出した後、ハッチから出てきたのは……
「わはははは! この私、エラ・アレンスキーの守る船に忍び込むとは、つくづく運の悪い奴らだな」
本当に運が悪い。
まあ、そうでもなかったら《水龍》のハッチも《海龍》同様ロックしておくけどね。
司令塔の上で仁王立ちになったエラは、矢継ぎ早にプラズマボールを放ち、帝国兵を次々と焼き払っていく。
しばしの間、唖然としてその様子を見ていたイリーナが、不意に僕の方を振り向いた。
「ファースト・エラだと!? カイト・キタムラ! おまえ、まさか我々の襲撃を予想して、先にあいつを帰していたのか?」
「ははははは! その通りだ! おまえたちの目論見などお見通し」
というのは嘘。
エラを先に帰したのは、倫理上の問題からだ。
だってねえ、他のエラより社会適合できるようになったとは言え、ファースト・エラが重度のショタコンである事に変わりないのだから、少年兵たちと一緒のヘリに乗せられないでしょ。
だからレイホーのヘリには、エラ一人を乗せて《水龍》に行ってもらった後、北ベイス島に戻り、アーニャ・マレンコフのヘリに乗せ切れなかった少年兵たちを乗せたわけだ。
ちなみにレイホーのヘリが《水龍》でエラを降ろす時、ミーチャは《海龍》艦内で大人しくさせておくように馬美鈴に指示してあった。
エラの姿を見たら、ミーチャが怯えると思ってやった処置だが、そのおかげでエラが 《水龍》に降りるところをミーチャは見ていない。
そのために、レム神は《水龍》の守りが手薄だと思い違いをしてしまったようだな。
「で……ではカイト・キタムラ。我々がワームホールを使って奇襲をかけてくる事も予想していて、その対策も立てていたのだな?」
「ははははは! 当然だ」
ごめん。それ嘘。ジジイに言われるまで気が付かなかった。
正直どうやって防げばいいんだ?
こんな、ドメル艦隊の瞬間物質輸送機攻撃みたいな戦法。
だが、甘い。橋本晶に死角などないのだ。
彼女の背後に立つという事は、デューク東郷の背後に立つのと同じぐらい危険なこと……
しかし、さっきはなんとか撃退できたが、今度は《水龍》が狙われている。
どうやら、ミーチャの見た光景が、レム神に伝わりそれを目印にレム神はワームホールを開いているようだ。
しかし……
「地下施設は、プシトロンパルスを遮っているのではなかったのか?」
僕の疑問にジジイが答える。
「おそらく、時空穿孔機付近に中継機があるのじゃろう」
「中継機? そんな物は見あたらなかったぞ。それに中継機を運用するには交代要員が……」
「いや、タウリ族の作った中継機じゃ。おそらく、生体などには頼らない装置なのじゃろう」
なるほど……おっと! 今は、考えている場合ではない。《水龍》に開いたワームホールから、帝国兵がワラワラと出てきた。
イリーナはメガホンを《水龍》に向ける。
「《水龍》を占領しなさい。今なら、守りは手薄なはずよ」
イリーナは僕の方をふり向き、邪悪な笑みを浮かべた。
「カイト・キタムラ。《水龍》は頂くわよ。レム様を欺いた罰としてね」
ワームホールから出てきた八人の兵士たちは、甲板上に集合すると司令塔へ向かって駆けだした。
「イリーナ。聞いていいか?」
「何かしら?」
先頭の兵士が《水龍》司令塔を登り、ハッチを開いた。
「いつから《水龍》の防御が、手薄だと錯覚していた?」
「はあ? 錯覚? 実際手薄でしょ。今、あの船にいるのは、帝国を裏切った薬師のカミラ・マイスキーだけ。艦長の章麗華は、ヘリコプターで出撃している事は知っているわ」
一人の兵士が《水龍》艦内へ侵入。
「なるほど。ミーチャを通じて見ていたか?」
帝国兵は続々と《水龍》へ侵入して行く。
「ええ。そのまま、ヘリコプターは南ベイス島へ向かうそうね」
「アーニャ・マレンコフの操縦するヘリはそうだ。だが、章麗華のヘリは一度 《水龍》に立ち寄ってから、再び北ベイス島へ戻り、そこから南ベイス島へ向かう事になっている」
帝国兵は全員 《水龍》に入り切った。
「は? 何のために?」
「先にある人物を《水龍》に降ろすためさ」
「ある人物?」
帝国兵が悲鳴を上げて《水龍》のハッチから逃げ出して来たのはその時。
「どわわわわ!」「た……助けてくれえ!」
一度は《水龍》内部に侵入した兵士たちは、我先にとハッチから逃げ出してきた。
ただし、八人全員ではない。出てこられたのは六人だけ。残り二人がどうなったか? 推して知るべし。
帝国兵が逃げ出した後、ハッチから出てきたのは……
「わはははは! この私、エラ・アレンスキーの守る船に忍び込むとは、つくづく運の悪い奴らだな」
本当に運が悪い。
まあ、そうでもなかったら《水龍》のハッチも《海龍》同様ロックしておくけどね。
司令塔の上で仁王立ちになったエラは、矢継ぎ早にプラズマボールを放ち、帝国兵を次々と焼き払っていく。
しばしの間、唖然としてその様子を見ていたイリーナが、不意に僕の方を振り向いた。
「ファースト・エラだと!? カイト・キタムラ! おまえ、まさか我々の襲撃を予想して、先にあいつを帰していたのか?」
「ははははは! その通りだ! おまえたちの目論見などお見通し」
というのは嘘。
エラを先に帰したのは、倫理上の問題からだ。
だってねえ、他のエラより社会適合できるようになったとは言え、ファースト・エラが重度のショタコンである事に変わりないのだから、少年兵たちと一緒のヘリに乗せられないでしょ。
だからレイホーのヘリには、エラ一人を乗せて《水龍》に行ってもらった後、北ベイス島に戻り、アーニャ・マレンコフのヘリに乗せ切れなかった少年兵たちを乗せたわけだ。
ちなみにレイホーのヘリが《水龍》でエラを降ろす時、ミーチャは《海龍》艦内で大人しくさせておくように馬美鈴に指示してあった。
エラの姿を見たら、ミーチャが怯えると思ってやった処置だが、そのおかげでエラが 《水龍》に降りるところをミーチャは見ていない。
そのために、レム神は《水龍》の守りが手薄だと思い違いをしてしまったようだな。
「で……ではカイト・キタムラ。我々がワームホールを使って奇襲をかけてくる事も予想していて、その対策も立てていたのだな?」
「ははははは! 当然だ」
ごめん。それ嘘。ジジイに言われるまで気が付かなかった。
正直どうやって防げばいいんだ?
こんな、ドメル艦隊の瞬間物質輸送機攻撃みたいな戦法。
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