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第十六章

高周波スピア

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「でやあああ!」

 抜刀した橋本晶が、緑のスパイダーに切りかかっていった。

 だが、九九式の加速機能を使っているにも関わらず、スパイダーの動きについていけない。

 スパイダーは素早く後退して橋本晶の刃を避けると同時に、ネットを撃ち出す。

「なんの! これしき!」

 橋本晶は愛刀を左右に素早くふるい、空中で広がって多いかぶさってくるネットを切り裂く。

 一方、カルルは……

「イリーナ。俺は海斗の相手をする。森田芽依は君が相手してくれ」
「エステス様。やはり、女は攻撃したくないのですか?」
「そうじゃなくて……女をネットで拘束したりしたら、また海斗に変態呼ばわりされそうなので……」

 ううむ……その作戦は読まれていたか……

 そんな二人に、芽依ちゃんがショットガンを向ける。

「死になさい! 消えなさい! くたばりなさい!」

 戦乙女ワルキューレにチェンジする呪文を叫びながら、芽依ちゃんはショットガンを乱射。

 しかし、素早く動き回るスパイダーに全く当たらない。

 弾を撃ち切ってマガジンを交換している隙に、青いスパイダーがネットを発射。

「きゃ!」

 芽依ちゃんの九九式が緑色のネットで覆われる。

「ほほほ! 良いざまね、メイ・モリタ。もう動く事もできないでしょう。九九式の怪力でも、パラアラミド繊維のネットは引き千切ちぎれないわよ」
「く……その口ぶり。私に何か恨みでも?」
「はあ? まさか忘れたんじゃないでしょうね?」
「ええっと……どちら様でしたっけ?」
「私はイリーナ……イリーナ・ミハルコフ」

 イリーナ……なんか聞いたような……

「イリーナさん? ああ! 先日、私が人じ……いやいや、保護した人でしたね」
「保護じゃなくて、人質でしょうが!」
「そうとも言いますね。あはは……」
「笑って誤魔化すな! とにかく、あの時の屈辱のお礼、たっぷりとさせてもらうわ」
「いえいえ、礼にはおよびません」
「遠慮する事ないわ」
「そうは言っても、スパイダー搭載の機銃では九九式の装甲を貫通できませんよ」
「そうね。でも、スパイダーのマニュピレーターは、いろんなオプションを使えるのよ」

 イリーナの機体は、蟹ハサミのようなマニュピレーターで一本の槍を掴んだ。 

 槍からヴィイイイン! という機械音が鳴り響く。

「これは貴女あなたに復讐するために、特別に用意した武器よ」 
「それは!」
「高周波スピア。刃先が超高速で振動してどんな硬い物でも貫ける武器。九九式の装甲だって、これの前には紙のような物よ。まあ、音が五月蠅うるさいのが難点だけど」
「……」
「安心して。一撃で殺したりはしないわ。急所は外して、何度もチクチクと刺してやるわよ」

 怖えええ! エラ並のサディスト! 

 と、この様子を僕はボーっと見ていたわけではない。

 カルルの放つネットを避けながら、ショットガンやワイヤーガンで攻撃を続けていたのだ。
 
 しかし、スパイダーの動きは素早く、僕の攻撃はさっぱり当たらない。

 橋本晶の方も、緑の機体との戦いで手一杯のようだ。

 このままでは芽依ちゃんが危ない。

 どうすれば……
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