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第十六章

よくぞ作戦を見破った……ん?

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 環状通路に入っていくらもいかないうちに、僕らは赤、青、緑に色分けされた三機のスパイダーと鉢合わせになった。

 しばらくの間、双方とも互いに動くことができずににらみ合いとなる。

 やはり陽動を読まれていたのか?

 考えてみれば、見え見えの陽動だったからな。

 それにしてもスパイダーって、円盤状の本体を八本の足で支えている機体だが、他に先端がハサミのようになっている多間接マニュピレーターがあるので、蜘蛛スパイダーというより蟹みたいな姿だ。

 データによると、この円盤に二門の大型ネットランチャーと小口径の機銃一丁が装備されているという。

 軍事兵器ではないので、装甲も攻撃力もたいしたことはないが、スピードだけはこっちを上回っていた。

 だから、そのスピードを生かす前に、側面から奇襲をかけたかったのだが……

 赤いスパイダーのハッチから顔を出し、無言で僕を睨みつけているカルルの目は『おまえの目論見などお見通しだ』と言っているように見える。
 
 しばらくして、カルルは口を開いた。

「さすがだな。北村海斗」

 さすがだと? 皮肉か。本当は『陽動だってバレバレなんだよ! バーカ! バーカ!』とでも言いたいのだろうな。

 しかし、ここで悔しがっては負けだ。

 いや、負けてはいないけど、ここで悔しそうな顔をしてはなんか負けたような気がする。

 だから、悔しがってなどやらない。

「おまえも、なかなかやるな。カルル・エステス」
「いやいや、おまえの方こそ。それでこそ我が好敵手ライバル

 いや、勝手に好敵手ライバル認定されてもイヤなのだが……

「カルル。よくぞ僕の」「海斗。よくぞ俺の」

 僕とカルルは、ほぼ同時に口を開いた。

「「作戦を見破ったな」」

 …………?

「え?」「え?」

 どういう事だ?

「いや、カルル。おまえが僕の陽動を見破ったのだろ?」
「何言っている、海斗。おまえが俺の作戦を見破ったのだろ?」

 んんんん? なんだ? カルルの作戦って?

「海斗。おまえが中央広場に陣地を作っていた事は分かっていた。そこから、中央通路を通ってこっちへ攻撃をかけてくるだろうという事も分かっていた」

 分かっていたもなにも、それが普通の攻撃パターンだろうな。

「だから、おまえの攻撃が始まったら歩兵隊に食い止めさせて、その間にスパイダー隊が別ルートを通っておまえの陣地に側面攻撃をしようと言う俺の作戦をおまえは見破り、こっちへ食い止めにきたのだろう?」

 ええっと……

「いや、僕はただ、中央通路からミールに攻撃をかけさせて、僕らは別ルートから側面攻撃をしようと、この通路を通って来たわけだが……」

 あ! 同じ事考えていたのか。

「あはははは」

 なんか、ここは笑うしかないかな。

「あはははは」

 カルルも笑い始めた。

 敵味方の関係なく、僕とカルルは笑いあっていた。

 なかなか、心温まる状況だ。

「あのお、北村さん」
「ん? なんだい? 芽依ちゃん」

 僕は芽依ちゃんの方を振り向く。

「あのお、エステス様」
「ん? どうした? イリーナ」

 カルルは、青い機体から顔を出している女性兵士の方を振り向いた。

「「笑っている場合ですか!?」」

 そうでした!

 戦闘開始!
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