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第十六章

プランB

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 やった!

 と、思っていた。

 ミサイルが命中した瞬間までは……

 命中はしたが、球体の真芯まっしんからかなり外れたところに当たり、ミサイルは二発とも球体表面をすべってイワン後方の岩に当たって爆発した。

 マズいな。

 攻撃が効かなかった上に、こっちの居場所も特定されるとは……とにかく……

「芽依ちゃん! プランBだ」
「はい」

 最初の攻撃に失敗した時は、左右に散って各自の判断で攻撃し、ミサイルを撃ち切ったら撤退すると取り決めていた。

 それがプランB。

 さて、そうと決まったら、掩体えんたいにできそうな岩を探して移動しないと。

 早くしないと、ここに電磁砲レールキャノンが撃ち込まれる。

 タイムリミットは、岩向こうの敵兵が逃げ出すまで……

「北村さん、待って下さい。敵兵が逃げないで残っています」

 え?

 本当だ。岩向こうで敵兵が一人、対空機関砲を撃って上空の菊花隊を牽制している。

「しばらく、ここは安全地帯です」

 まあ、そうだが……

『イリーナ! 何をしている! すぐにそこから離れろ!』

 機関砲の射撃が止んだ頃合いで、カルルがスピーカーで呼びかけてきた。

 名前からして、女性兵士のようだな。

「エステス様! 私はどうなってもかまいません! 私ごと撃って下さい」

 泣かせるセリフだ。

『バカな事を言うな。無駄死にしたいのか』
「無駄死にではありません。私がここでドローンを牽制します。その間に撃って下さい」

 ドローンを牽制? なるほど。

 イワンの装甲は厚いが、攻撃をするにはその装甲の外側に武器を出さなければならない。

 その武器こそイワンの弱点。

 僕たちを攻撃するために電磁砲レールキャノンを出してきたが、それをドローンから攻撃されたら簡単に破壊されてしまう。

 周囲を見回すと、他に三門の対空機関砲が菊花を寄せ付けまいと撃ち続けていた。

 レーダー画面では、七つの光点が対空砲の射程距離ぎりぎりの高度にいる。

 あれ? 七つ?

 作戦中のドローンは菊花が五機、紫雲一機のはず。

 残り、一つはなんだ?

 まあいいか。たぶんアーニャの判断で増援を出したのだろう。

 それより、イワンの攻略法が見えてきたぞ。
 
「芽依ちゃん。プランBを修正。逃げながら、対空砲を潰していく」
「しかし、対空砲に貴重な劣化ウラン弾を使うのは……」
「いや、ロケット砲ではない。接近してブーストパンチで破壊するんだ」
「分かりました。では、私は手始めに、岩向こうの対空砲を破壊します」
「分かった。僕は他の対空砲を狙う。それと、対空砲を破壊しても、イリーナとかいう兵士は、なるべく殺さないようにしてくれ」
「どうしてですか? 女だからですか?」
「いや……そうじゃなくて……ほら、生かしておけば、カルルも撃ちにくいだろう」
「なるほど。人質にするのですね」
「そうそう」

 僕はそのまま、岩陰から飛び出した。
 
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