71 / 848
第五章
帝国兵は、皆殺しだ!
しおりを挟む
「ミール。ダサエフに、翼竜を今すぐ見たいと言わせてくれ」
「なるほど。案内させるのですね」
「ああ。熱源が多すぎて、このままじゃ時間がかかりすぎる」
『その捕獲した翼竜とやらを、見せてもらってよろしいでしょうか?』
『いいぜ』
ダサエフは、衛兵の方を向いた。
『お前。ドロノフを案内してやれ』
ドロノフは、衛兵に案内され、屋敷から出ていく。
よし、PC画面をドローンカメラに切り替えて……
屋敷から出てきた赤外線源をマークする。
赤外線源は、屋敷から数百メートル移動していった。
不意に動きが止まる。
エシャーのところへ着いたのか?
「ひ……ひどい……せっかく……逃がしたのに……」
ミール? どうしたんだろう? 蒼白な顔をしている。
PC画面を、ドロノフのカメラに切り替えた!
これは……!!
地獄絵図……?
大勢のナーモ族が、鎖に繋がれ拷問を受けていた。
すでに死体となって転がっている者も少なくない。
生きてはいるが、手足を切り取られ泣き叫んでいる者もいる。
泣き叫ぶ子供を、兵士が射殺した。
胃から、何かがこみ上がってくる。
僕は席を立つと背後の茂みに駆け込んだ。
吐いた。
さっき食べた物と、胃液の混じった物を茂みの中にぶちまけた。
今、見た光景はなんだ?
現実に起きている事なのか?
夢じゃないのか?
「ご主人様。大丈夫ですか?」
Pちゃんが差し出してくれたタオルで口のまわりを拭うと、僕は再びPCに向き直った。
夢じゃなかった。
人間は、ここまでひどいことをできるのか?
違う。
こいつらは人間じゃない。
人間に、こんなひどいことができるものか!
『ドロノフ。お前もやってかねえか?』
ドロノフに下卑た声をかけた男は、ナーモ族の女の子を凌辱している最中だった。
一人だけじゃない。
キャンプファイヤーのような大きな火を囲んで、何人もの帝国兵がナーモ族の女の子達を凌辱していた。
「ミール。ドロノフに言わせてくれ。今は仕事中だと」
「あの……これを止めさせるわけには……」
「それは、今から僕がやる。ドロノフは、このまま行かせてくれ」
ミールは黙って頷く。
辛そうな顔をしていた。
このナーモ族の中には、ミールの家族、親族、友達がいるのかもしれない。
いや、そうじゃなくてもミールはこの村に住んでいたんだ。
みんな顔見知りなんだろう
だけど、ここでドロノフの分身を使っても止める事はできない。
止める方法は、一つしかない。
僕はドローンのコントローラーを取り、一機の自動操縦を解除し手動に切り替えた。
高度を下げていく。
地獄絵図の直上にドローンを静止させた。
さっき、ドロノフに声をかけた男は、遠ざかっていくドロノフに向かって何かを叫んでいる。その男の背後から、延髄に照準を合わせた。
トリガーボタンを押す。
消音器によって音を消された銃から放たれた二十二口径の弾丸が、男の延髄を破壊した。
男は、自分に何が起きたのかも分からないまま倒れる。
仲間が死んだというのに、他の男たちは気が付かないで残虐行為に勤しんでいた。
いや、二人ほど気が付いた奴がいた。
『おい、どうした?』
『もう酔いつぶれたか。だらしねえな』
そう言うと、二人は興味を無くして酒を飲み、地面に横たわっている女の子に手を伸ばす。
その汚らわしい手が、女の子に触れる前に背後から弾丸を撃ち込んだ。
どうやら、兵士達はかなり強い酒を飲んでいるようだ。
仲間が倒れても、気が付かないか、酔いつぶれたと勘違いしてゲラゲラ笑うだけ。
その男たちに、一人ずつ背後から弾丸を撃ちこんでいく。
途中で弾が無くなり別のドローンと交代したが、狂乱状態にある男たちは、まだ気が付かない。
最後の二人が、ようやく異変に気が付いたがもう遅い。
ミサイルの発射ボタンを、僕はためらうことなく押した。
二人の男は炎に包まれる。
苦しさのあまり転げまわっていたが、やがて動かなくなった。
僕の考えは甘すぎた。
できれば、帝国兵もなるべく殺さずにエシャーを救出しようと考えていた。
でも、無理だ。
今、助けなきゃならないのはエシャーだけじゃない。
このナーモ族たちも助けるには、帝国兵は皆殺しにするしかない。
殺さなければ、どこまで追いかけて来る。
話し合いなど無駄だ。
生きのびたければ、殺すしかない。
帝国兵は、皆殺しだ!
「なるほど。案内させるのですね」
「ああ。熱源が多すぎて、このままじゃ時間がかかりすぎる」
『その捕獲した翼竜とやらを、見せてもらってよろしいでしょうか?』
『いいぜ』
ダサエフは、衛兵の方を向いた。
『お前。ドロノフを案内してやれ』
ドロノフは、衛兵に案内され、屋敷から出ていく。
よし、PC画面をドローンカメラに切り替えて……
屋敷から出てきた赤外線源をマークする。
赤外線源は、屋敷から数百メートル移動していった。
不意に動きが止まる。
エシャーのところへ着いたのか?
「ひ……ひどい……せっかく……逃がしたのに……」
ミール? どうしたんだろう? 蒼白な顔をしている。
PC画面を、ドロノフのカメラに切り替えた!
これは……!!
地獄絵図……?
大勢のナーモ族が、鎖に繋がれ拷問を受けていた。
すでに死体となって転がっている者も少なくない。
生きてはいるが、手足を切り取られ泣き叫んでいる者もいる。
泣き叫ぶ子供を、兵士が射殺した。
胃から、何かがこみ上がってくる。
僕は席を立つと背後の茂みに駆け込んだ。
吐いた。
さっき食べた物と、胃液の混じった物を茂みの中にぶちまけた。
今、見た光景はなんだ?
現実に起きている事なのか?
夢じゃないのか?
「ご主人様。大丈夫ですか?」
Pちゃんが差し出してくれたタオルで口のまわりを拭うと、僕は再びPCに向き直った。
夢じゃなかった。
人間は、ここまでひどいことをできるのか?
違う。
こいつらは人間じゃない。
人間に、こんなひどいことができるものか!
『ドロノフ。お前もやってかねえか?』
ドロノフに下卑た声をかけた男は、ナーモ族の女の子を凌辱している最中だった。
一人だけじゃない。
キャンプファイヤーのような大きな火を囲んで、何人もの帝国兵がナーモ族の女の子達を凌辱していた。
「ミール。ドロノフに言わせてくれ。今は仕事中だと」
「あの……これを止めさせるわけには……」
「それは、今から僕がやる。ドロノフは、このまま行かせてくれ」
ミールは黙って頷く。
辛そうな顔をしていた。
このナーモ族の中には、ミールの家族、親族、友達がいるのかもしれない。
いや、そうじゃなくてもミールはこの村に住んでいたんだ。
みんな顔見知りなんだろう
だけど、ここでドロノフの分身を使っても止める事はできない。
止める方法は、一つしかない。
僕はドローンのコントローラーを取り、一機の自動操縦を解除し手動に切り替えた。
高度を下げていく。
地獄絵図の直上にドローンを静止させた。
さっき、ドロノフに声をかけた男は、遠ざかっていくドロノフに向かって何かを叫んでいる。その男の背後から、延髄に照準を合わせた。
トリガーボタンを押す。
消音器によって音を消された銃から放たれた二十二口径の弾丸が、男の延髄を破壊した。
男は、自分に何が起きたのかも分からないまま倒れる。
仲間が死んだというのに、他の男たちは気が付かないで残虐行為に勤しんでいた。
いや、二人ほど気が付いた奴がいた。
『おい、どうした?』
『もう酔いつぶれたか。だらしねえな』
そう言うと、二人は興味を無くして酒を飲み、地面に横たわっている女の子に手を伸ばす。
その汚らわしい手が、女の子に触れる前に背後から弾丸を撃ち込んだ。
どうやら、兵士達はかなり強い酒を飲んでいるようだ。
仲間が倒れても、気が付かないか、酔いつぶれたと勘違いしてゲラゲラ笑うだけ。
その男たちに、一人ずつ背後から弾丸を撃ちこんでいく。
途中で弾が無くなり別のドローンと交代したが、狂乱状態にある男たちは、まだ気が付かない。
最後の二人が、ようやく異変に気が付いたがもう遅い。
ミサイルの発射ボタンを、僕はためらうことなく押した。
二人の男は炎に包まれる。
苦しさのあまり転げまわっていたが、やがて動かなくなった。
僕の考えは甘すぎた。
できれば、帝国兵もなるべく殺さずにエシャーを救出しようと考えていた。
でも、無理だ。
今、助けなきゃならないのはエシャーだけじゃない。
このナーモ族たちも助けるには、帝国兵は皆殺しにするしかない。
殺さなければ、どこまで追いかけて来る。
話し合いなど無駄だ。
生きのびたければ、殺すしかない。
帝国兵は、皆殺しだ!
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。
暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。
筋肉少女まりあ★マッスル 全力全開!
謎の人
SF
元気いっぱい恋する乙女の小学5年生 安部まりあ。
ある日突然彼女の前に現れたのは、願いを叶える魔獣『かがみん』だった。
まりあは、幼馴染である秋月灯夜との恋の成就を願い、魔力を授かり魔法少女となる決意を固める。
しかし、その願いは聞き届けられなかった。
彼への恋心は偽りのものだと看破され、失意の底に沈んだまりあは、ふとある日のことを思い出す。
夏休み初日、プールで溺れたまりあを助けてくれた、灯夜の優しさと逞しい筋肉。
そして気付いた。
抱いた気持ちは恋慕ではなく、筋肉への純粋な憧れであることに。
己の願いに気付いたまりあは覚醒し、魔法少女へと変身を遂げる。
いつの日か雄々しく美しい肉体を手に入れるため、日夜筋トレに励む少女の魔法に満ち溢れた日常が、今幕を開ける―――。
*小説家になろうでも投稿しています。
https://ncode.syosetu.com/n0925ff/
銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児
潮崎 晶
SF
数多の星大名が覇権を目指し、群雄割拠する混迷のシグシーマ銀河系。
その中で、宙域国家オ・ワーリに生まれたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、何を思い、何を掴み取る事が出来るのか。
日本の戦国時代をベースにした、架空の銀河が舞台の、宇宙艦隊やら、人型機動兵器やらの宇宙戦記SF、いわゆるスペースオペラです。
主人公は織田信長をモデルにし、その生涯を独自設定でアレンジして、オリジナルストーリーを加えてみました。
史実では男性だったキャラが女性になってたり、世代も改変してたり、そのうえ理系知識が苦手な筆者の書いた適当な作品ですので、歴史的・科学的に真面目なご指摘は勘弁いただいて(笑)、軽い気持ちで読んでやって下さい。
大事なのは勢いとノリ!あと読者さんの脳内補完!(笑)
※本作品は他サイト様にても公開させて頂いております。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
銀河太平記
武者走走九郎or大橋むつお
SF
いまから二百年の未来。
前世紀から移住の始まった火星は地球のしがらみから離れようとしていた。火星の中緯度カルディア平原の大半を領域とする扶桑公国は国民の大半が日本からの移民で構成されていて、臣籍降下した扶桑宮が征夷大将軍として幕府を開いていた。
その扶桑幕府も代を重ねて五代目になろうとしている。
折しも地球では二千年紀に入って三度目のグローバリズムが破綻して、東アジア発の動乱期に入ろうとしている。
火星と地球を舞台として、銀河規模の争乱の時代が始まろうとしている。
琥珀と二人の怪獣王 建国の怪獣聖書
なべのすけ
SF
琥珀と二人の怪獣王の続編登場!
前作から数か月後、蘭と秀人、ゴリアスは自分たちがしてしまった事に対する、それぞれの償いをしていた。その中で、古代日本を研究している一人の女子大生と三人は出会うが、北方領土の火山内から、巨大怪獣が現れて北海道に上陸する!戦いの中で、三人は日本国の隠された真実を知ることになる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる