70 / 848
第五章
ストーカー
しおりを挟む
『名前はカイト・キタムラ。カルル・エステスが落とした船に乗っていた奴だ。エステスは見つけても、迂闊に手を出すなと言っていた。かなり、ヤバイ奴らしい』
こいつに『ヤバイ奴』呼ばわりされるのは、なんかヤだな。
『こんなヤバイ奴相手に戦って、十二人も生きて帰ってきたのなら、むしろ上出来だと言うべきだな』
実際は、もっと生きてるけどね。ただし帰れないけど……
でも、出発前に見た時には三人ほど死んでいた。
とうとう僕も、殺人童貞卒業か……
『よし。夜が明けたら、部下を連れてこいつを探し出せ』
『あの、手を出さないのでは……』
『当たり前だ。俺は探し出せと言っただけだ。見つけても手を出すなよ。これ以上部下が減ったら、かなわん』
「自分で、減らしたくせに……」
ミールは、何を言ってるんだろう?
『見つけたら、気づかれないように見張っていろ。とにかく監視しているだけでいい』
ストーカーかよ!
まあ僕が今やってることも似たようなものだけど……
『エステスの話では、凄いお宝を持っているそうだ。マ……マ……なんて言ったっけ?』
副官が耳打ちする。
『そうだ。マテリアルカートリッジだ。奴を見張り、隙を見てそれを盗み出すんだ。そして、手に入れたら俺のところに持ってこい。他の奴に見つからないようにな』
『あの……マテリアルカートリッジとは、どのようなものですか?』
『俺が知るか。エステスが言うには凄い宝だという。そんな良い物なら俺の物にしてやるぜ』
いや、おまえが手に入れても猫に小判だって……
「カイトさん、あんな事言っていますけどどうします? 今のうちに、始末しておきますか?」
「ご主人様。私もミールさんの意見に賛成です。ドロノフに持たせた自爆装置のボタン、ポチっとしちゃいましょう、今すぐ」
おいおい、可愛い女の子が二人して物騒な事言わないでほしいな。
まあ、このダサエフという男、今始末しておけば付け狙われなくて済むわけだが……
「今はだめだ。エシャーの救出が難しくなる」
ドロノフの事はミールに任せて、僕はPC画面を他のカメラの映像に切り替えた。だが、エシャーはまだ見つかっていない。
上空には三機の飛行船タイプのドローンを浮かべて、見つかった赤外線源を、ミールの分身たちが虱潰しに探しているのだが、人や馬など雑多な赤外線源が多すぎるのだ。
隣席からミールが僕の肩を叩いた。
「カイトさん。ダサエフが興味深い事を言っています」
「興味深い事?」
「ドロノフに、翼竜に乗ってみないかと」
「翼竜? それって……」
「なんでも、帝国では近いうちに竜騎士団を編成するから、使えそうなベジドラゴンを見つけたら捕獲するように命令されていたそうです」
あいつら……エシャーにそんな事をさせようというのか……
だが、好都合だ。
それなら、エシャーが殺される心配はない。
PCの画面をドロノフのカメラに切り替えた。
『ダサエフ大尉、翼竜など飼い馴らせるものでしょうか?』
『だから、ドロノフよ。お前で実験するんだよ。なに、おまえなら落ちて死んでも惜しくはない』
『そんな……』
『心配すんな。ベジドラゴンというのは、人間の言葉が分かるらしいぜ。だから、鞭で引っ剥いて恐怖を植え付けてやれば、後はおまえの言葉通りに動くようになる』
鞭で叩くだと……あの優しいエシャーを鞭で叩くだと!
やはり、ここでドロノフを自爆させようか……いやいや、落ち着け。
その前に助け出せばいいだけのことだ。
こいつに『ヤバイ奴』呼ばわりされるのは、なんかヤだな。
『こんなヤバイ奴相手に戦って、十二人も生きて帰ってきたのなら、むしろ上出来だと言うべきだな』
実際は、もっと生きてるけどね。ただし帰れないけど……
でも、出発前に見た時には三人ほど死んでいた。
とうとう僕も、殺人童貞卒業か……
『よし。夜が明けたら、部下を連れてこいつを探し出せ』
『あの、手を出さないのでは……』
『当たり前だ。俺は探し出せと言っただけだ。見つけても手を出すなよ。これ以上部下が減ったら、かなわん』
「自分で、減らしたくせに……」
ミールは、何を言ってるんだろう?
『見つけたら、気づかれないように見張っていろ。とにかく監視しているだけでいい』
ストーカーかよ!
まあ僕が今やってることも似たようなものだけど……
『エステスの話では、凄いお宝を持っているそうだ。マ……マ……なんて言ったっけ?』
副官が耳打ちする。
『そうだ。マテリアルカートリッジだ。奴を見張り、隙を見てそれを盗み出すんだ。そして、手に入れたら俺のところに持ってこい。他の奴に見つからないようにな』
『あの……マテリアルカートリッジとは、どのようなものですか?』
『俺が知るか。エステスが言うには凄い宝だという。そんな良い物なら俺の物にしてやるぜ』
いや、おまえが手に入れても猫に小判だって……
「カイトさん、あんな事言っていますけどどうします? 今のうちに、始末しておきますか?」
「ご主人様。私もミールさんの意見に賛成です。ドロノフに持たせた自爆装置のボタン、ポチっとしちゃいましょう、今すぐ」
おいおい、可愛い女の子が二人して物騒な事言わないでほしいな。
まあ、このダサエフという男、今始末しておけば付け狙われなくて済むわけだが……
「今はだめだ。エシャーの救出が難しくなる」
ドロノフの事はミールに任せて、僕はPC画面を他のカメラの映像に切り替えた。だが、エシャーはまだ見つかっていない。
上空には三機の飛行船タイプのドローンを浮かべて、見つかった赤外線源を、ミールの分身たちが虱潰しに探しているのだが、人や馬など雑多な赤外線源が多すぎるのだ。
隣席からミールが僕の肩を叩いた。
「カイトさん。ダサエフが興味深い事を言っています」
「興味深い事?」
「ドロノフに、翼竜に乗ってみないかと」
「翼竜? それって……」
「なんでも、帝国では近いうちに竜騎士団を編成するから、使えそうなベジドラゴンを見つけたら捕獲するように命令されていたそうです」
あいつら……エシャーにそんな事をさせようというのか……
だが、好都合だ。
それなら、エシャーが殺される心配はない。
PCの画面をドロノフのカメラに切り替えた。
『ダサエフ大尉、翼竜など飼い馴らせるものでしょうか?』
『だから、ドロノフよ。お前で実験するんだよ。なに、おまえなら落ちて死んでも惜しくはない』
『そんな……』
『心配すんな。ベジドラゴンというのは、人間の言葉が分かるらしいぜ。だから、鞭で引っ剥いて恐怖を植え付けてやれば、後はおまえの言葉通りに動くようになる』
鞭で叩くだと……あの優しいエシャーを鞭で叩くだと!
やはり、ここでドロノフを自爆させようか……いやいや、落ち着け。
その前に助け出せばいいだけのことだ。
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
銀河太平記
武者走走九郎or大橋むつお
SF
いまから二百年の未来。
前世紀から移住の始まった火星は地球のしがらみから離れようとしていた。火星の中緯度カルディア平原の大半を領域とする扶桑公国は国民の大半が日本からの移民で構成されていて、臣籍降下した扶桑宮が征夷大将軍として幕府を開いていた。
その扶桑幕府も代を重ねて五代目になろうとしている。
折しも地球では二千年紀に入って三度目のグローバリズムが破綻して、東アジア発の動乱期に入ろうとしている。
火星と地球を舞台として、銀河規模の争乱の時代が始まろうとしている。
銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児
潮崎 晶
SF
数多の星大名が覇権を目指し、群雄割拠する混迷のシグシーマ銀河系。
その中で、宙域国家オ・ワーリに生まれたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、何を思い、何を掴み取る事が出来るのか。
日本の戦国時代をベースにした、架空の銀河が舞台の、宇宙艦隊やら、人型機動兵器やらの宇宙戦記SF、いわゆるスペースオペラです。
主人公は織田信長をモデルにし、その生涯を独自設定でアレンジして、オリジナルストーリーを加えてみました。
史実では男性だったキャラが女性になってたり、世代も改変してたり、そのうえ理系知識が苦手な筆者の書いた適当な作品ですので、歴史的・科学的に真面目なご指摘は勘弁いただいて(笑)、軽い気持ちで読んでやって下さい。
大事なのは勢いとノリ!あと読者さんの脳内補完!(笑)
※本作品は他サイト様にても公開させて頂いております。

アシュターからの伝言
あーす。
SF
プレアデス星人アシュターに依頼を受けたアースルーリンドの面々が、地球に降り立つお話。
なんだけど、まだ出せない情報が含まれてるためと、パーラーにこっそり、メモ投稿してたのにパーラーが使えないので、それまで現実レベルで、聞いたり見たりした事のメモを書いています。
テレパシー、ビジョン等、現実に即した事柄を書き留め、どこまで合ってるかの検証となります。
その他、王様の耳はロバの耳。
そこらで言えない事をこっそりと。
あくまで小説枠なのに、検閲が入るとか理解不能。
なので届くべき人に届けばそれでいいお話。
にして置きます。
分かる人には分かる。
響く人には響く。
何かの気づきになれば幸いです。


目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
筋肉少女まりあ★マッスル 全力全開!
謎の人
SF
元気いっぱい恋する乙女の小学5年生 安部まりあ。
ある日突然彼女の前に現れたのは、願いを叶える魔獣『かがみん』だった。
まりあは、幼馴染である秋月灯夜との恋の成就を願い、魔力を授かり魔法少女となる決意を固める。
しかし、その願いは聞き届けられなかった。
彼への恋心は偽りのものだと看破され、失意の底に沈んだまりあは、ふとある日のことを思い出す。
夏休み初日、プールで溺れたまりあを助けてくれた、灯夜の優しさと逞しい筋肉。
そして気付いた。
抱いた気持ちは恋慕ではなく、筋肉への純粋な憧れであることに。
己の願いに気付いたまりあは覚醒し、魔法少女へと変身を遂げる。
いつの日か雄々しく美しい肉体を手に入れるため、日夜筋トレに励む少女の魔法に満ち溢れた日常が、今幕を開ける―――。
*小説家になろうでも投稿しています。
https://ncode.syosetu.com/n0925ff/
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる