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第十五章

これから、お兄さんたちは怖いことをするから

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 聞こえた銃声は五発。その後は、聞こえてこない。 

 廃工場内に入った人たちには、エラを護衛に付けてあるから大丈夫だとは思うが……

「カイトさん」

 ミールは不安気な眼差しを僕に向ける。

「ここは、あたしの分身体を中に送り込みましょう」

 それをやったら、《海龍》に残してきたジジイの分身体が確実に消える。

「待ってくれ。ミール」
「でも」

 僕はミールの耳元に口を寄せ、そっとささやいた。

「分かったんだよ。誰が接続されていたのか」
「え!? レムは、アンドロイドに引っかからなかったのでは」
「接続されていたのは……」

 名前を聞いてミールは驚く。

「そのことで、どうしてもジジイの分身体から確認したい事がある」
「そうですか」
「北村君」

 アーニャに呼ばれて振り向く。

 彼女の手には、通信機が握られていた。

「エラの通信機とつながらないのよ」

 おそらく、電撃を使って自分の通信機を壊してしまったのだろう。

「ちょっと様子を見てくる」

 みんなにそう告げると、僕は加速機能を使って廃工場に駆け込んだ。

 だが、僕が到着した時には……

「司令官殿。もう片づいたぞ」

 予想はしていたが、残党はすでにエラが片付けた後だった。

 エラの周囲で、三人の男たちが倒れている。

 近くに黒こげ死体となっているものも……いや、黒こげ死体の方がはるかに多いか。

 プラズマボールを使ったな。

 それはいいのだが、近くにいる子供たちが黒こげ死体を見て怯えているぞ。

 こりゃトラウマになりそうだな。

「残党が、子供たちの列に襲いかかってきたのでな。とっさにプラズマボールを浴びせて、黒こげにしてやった」
「銃声が聞こえたが、怪我人は?」
「大丈夫だ。銃弾は、すべて私の高周波磁場で防いだ」

 よかった。

「司令官殿が口を割らせたいだろうと思って、三人ほど生かしておいたぞ」
「それは助かる」

 早速、一人を揺り起こして質問した。

「おい。おまえらの仲間は対岸の砦に行ったぞ。なぜおまえらは残っていた?」
「へん! 誰が言うか」

 そう来ると思った。

 僕は様子を見ている子供たちの方を向く。

「君たち。これから、お兄さんたちは怖いことをするから、後ろを向いて耳を塞いでいてくれないかな」
「はーい」

 子供たちは、素直に僕の言うことを聞いて、後ろを向き両手で耳を塞ぐ。

 一方、それを聞いていた男は……

「おい! 怖い事って? 俺に何をする気だ?」
「おまえが素直に僕の質問に答えるのなら、子供たちが怯えるような事は何もないのだが、話す気になったかい?」
「ならねえよ」
「そうか。エラ。話したくなるようにしてやってくれ」
「任せておけ。一々起こすのは面倒だから、気絶しない程度に加減しておこう」
「ちょっと待て! 気絶しない程度って、俺に何を……ウギャア!」

 気絶しない程度の電撃がしばらく続き、男はようやく話す気になった。

「子供たちを少しでも砦に連れていこうと……それと、ボドリャギンの奴が余計な事を喋る前に始末しろと、モロゾフさんの指示で……」

 ボドリャギン? ああ! ダニの事か。

「ボドリャギンは、おまえらのリーダーだろ? なぜ殺す?」
「ボドリャギンがリーダーだったのは、さっきまでだ。今のリーダーはモロゾフ」

 モロゾフって、落書き女の父親だったな。

 なるほど。この混乱に乗じて、リーダーの座を乗っ取ったわけか。

 ボドリャギンを殺すのも、口封じというより邪魔になったからだな。

「子供たちを連れて行こうとしたと言ったが、あの砦には子供はいないのか?」
「いない」

 いないのか。ならば、砦は《海龍》《水龍》からの艦砲射撃で片付くな。

 ただ、こいつが本当の事を言っているか確認するには、やはりミールの分身魔法しかないな。

 尋問はここまでとして、僕たちは廃工場から出た。
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