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第三章

ハーレムなんかねえよ

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「じゃあエシャー頼んだよ」
「マカセテ」
 エシャーは、弟を連れて飛び立った。
 エシャーが首から下げている籠には、さっきプリンターで作った三機のドローンが入っている。
 元々、エシャーはお父さんの所へ、リリアの実を届ける途中だった。
 だから、ついでにドローンを持っていくことを頼んだのだ。
 ただ、こっちのドローンを持っているところを敵のドローンに見られたら、エシャーが攻撃される危険がある。だから、現地に着いたら、シャトルの影に隠れて、こっそりドローンを置いてくるように言い含めておいた。
 でも、ちゃんと理解してくれたかな?

 エシャーの姿が、塩平線に消えるまで僕は見送っていた。
「翼竜の雌まで手なずけるなんて、ご主人様は女ったらしですね」
 すぐ背後で、Pちゃんが怨嗟の籠った声で囁くように言う。
 いや……怨嗟が籠っているような気がしただけだ。
 ロボットにそんな感情あるわけない。
 たぶん、ないと思う。
 ないんじゃないかな?
 まあ、ちっと覚悟しておこう。
「女ったらしって!? 何言ってるんだ、おまえ!!」
「いえいえ。こんな事はあり得ないと思うのですが、魔法か何かであの翼竜が人化でもしたら、ご主人様のハーレムに、加わってしまうのではないかと……」
「加わるも何も、ハーレムなんかねえよ!!」
「無いけど、これから作るつもりですね」
「つもりもない!!」
「まあ、作ろうとしても、私の目の黒いうちは、させませんけど……」
「だから、作るつもりはないし……、仮にあったとして、なぜお前が邪魔をする?」
「え? いえ、ご主人様が悪い女に騙されるような事あってはならないと……」
 まさか、こいつ……焼きもちを焼いてるのか?
 ロボットと言っても、二百年の間にかなり進歩しているはずだ。
 感情を持ったロボットが、作られた可能性は十分にあるが……
 あるいは懐中時計と同じで、こういう状況で焼きもちを焼いたように振る舞うようなプログラムでもあるのかな?
 いかん! こんなしょうもない事やってる場合じゃなかった。
「そんな事より、敵のドローンの動きはどうなっている? シャトルは発見されてしまったのか?」
「今のところ、近づいてくる様子はありません。発見は、されていないものと推測できます」
「そうか。ところで、今更聞くのもなんだけど、二百五十キロ先のドローンをコントロールできるの? この惑星にはGPS衛星は、なかったと思うけど……」
「普通は無理ですが、シャトルの近くなら可能です」
「どうして?」
「この惑星には、赤道上空に三機の通信衛星があります。さっきから私がシャトルのサブコンピューターと連絡を取っているのは、そのうちの一つを使っているからです」
「なるほど。しかし、この惑星の静止軌道がどのくらいか知らないけど、かなり遠いだろ? そんな遠くからの極超短マイクロ波を、ドローンは受信できるの?」
「ですから、シャトルの近くと言ったのです。ドローンのアンテナでは、静止軌道からの極超短マイクロ波は弱くて受信できません。そのためにシャトルの通信機を経由するのです。エシャーさんがシャトルの近くまで来たら、ドローンをコントロールできます」
 そういう裏ワザを使っていたのか。
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