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第三章

重力制御って、結局実現しなかったの?

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「Pちゃん。マルチプリンターで、ドローンは作れるかい?」
「作れます」
「よし、こっちからもドローンを飛ばそう」
「しかし、下手にドローンを飛ばすと、こちらの位置を特定される危険があります」
「小型のドローンを、低空で飛ばすというならどうだ?」
「シャトルの不時着地点まで、二百五十キロ離れています。小型のドローンでは、そこまでの航続距離がありません」
「そうか……」
「カイト、ドローンテ、空トブ、玩具ノコト?」
 エシャーはドローンを見た事があるのかな?
「そうだよ。知ってるのかい?」
「リトルトーキョーデ見タ、一緒ニ飛ンダ、楽シカッタ」
 そうだ!

 トレーラーから、プリンターを引っ張り出した。
 意外と小さいな。
 こんな物で、どうやってこんな大きなトレーラーを作ったんだ?
 と思っていたら、折り畳み式になっていたようだ。
 Pちゃんが操作すると、バスタブぐらいの大きさだった金属隗が、ガシャガシャと音を立てて、トレーラーがすっぽり入るぐらいの、中空の直方体が組みあがった。
 この中で、物体を再生するらしい。
「ご主人様、ドローンのカタログを出しました。どれがいいか、選んでください」
 プリンターのコントロールパネルのディスプレーに、様々なドローンの写真が表示されている。
 僕の時代にあった物から、もっと未来に開発された物まで様々。
 ヘリコプタータイプがもっとも多いが、固定翼のプロペラ機や、オスプレイの様なVTOLやジェット機もある。
 航続距離優先の飛行船タイプもあった。
 それにしても、未来の技術なら実現していても良さそうな物が見あたらない。実現しなかったのかな?
「重力制御って、結局実現しなかったの?」
 大気圏突入の時にGを相殺できなかったという事は、実現しなかったって事だろうだと思うが……
「実現していますよ。もちろん、地球にはそれを応用したドローンもあります」
「じゃあ、なんでこの中にないんだ?」
「重力制御システムは、基本的にコピーができないのですよ」
「なぜ?」
「ご主人様の時代にあったプリンターは、トナーを吹き付けて積み上げていく装置でしたね。このマルチプリンターは、原子を一つ一つ積み上げていく装置です」
 それは、ここへくる途中で聞いていた。
 そのために、このコピー機には水素からビスマスまで八十三種の元素を、純粋な状態で入れた元素マテリアルカートリッジがあると。
 この惑星で、元素マテリアルカートリッジは大変な貴重品。だから、一個たりともシャトルに残しておけないというので、トレーラーを作ったのだ。
「ですから。このコピー機はバリオン物質でできている製品なら、何でも作ることができます」
「じゃあ、なぜ重力制御はダメなんだ?」
「重力制御には、非バリオン物質が必要なのです。一応、重力を制御する装置は作れますが、その中に非バリオン物質を封入しなければ、重力制御効果は得られません」
「非バリオン物質って、プリンターではどうにもならないの?」
「なりません。非バリオン物質を集めるには、巨大なプラントと膨大なエネルギーが必要となります。それと専門知識を持った技術者」
 とりあえず、重力制御は不可能ではないが、ここでは使えないって事か。
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