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第十五章
残るは五人
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「そして、スパイがいるとして、どうやって情報を流していたか? Pちゃん。《海龍》《水龍》から、僕たちに気づかれないで電波を出すことは可能か?」
「ほぼ不可能です」
電波ではないとすると……
「プシトロンパルスか。誰かがレムと接続されているという事だな」
そうだとするなら、僕も少しは気が楽になるな。自分の意志で裏切ったのではなく、ブレインレターで無理矢理接続されたのなら、本人に悪気なんてなかったのだから。
それに、レムとの接続を断ち切る目処もたったのだ。
誰なのか分かったのなら、しばらくの間は監禁して北ベイス島の地下施設を手に入れてから、接続を断ってやればいい。
僕はジジイの分身体の方に目を向けた。
「レムと接続されたという事は、どうしたら分かる?」
確か、レイラ・ソコロフは地下施設の医療機器とスキャナーを使ったと言っていたと思うが、そのスキャナーというのが僕たちコピー人間のデータをとるのに使ったのと同じ物なのか、別物なのかを聞いていなかった。
「状況によって異なるのう。レムの方から話しかけてくれば、嫌でも脳内に声が聞こえるから接続されたと自覚できるが、何も話しかけて来なければ自覚できないじゃろうな」
いや、僕が聞きたいのは自覚できるかじゃなくて……
「自覚はいい。それより、レムに接続されている事を他者が見破るにはどうすればいい?」
「PET(ポジトロン断層法)を使って、脳内での神経活動の様子を見れば一発で分かるのう」
「PETだと!?」
「脳間通信機能が覚醒していて、それが一時的なものなのか、常時接続状態なのかは、PETを使えば容易に分かる」
容易に分かるのか。PETがあれば……
だが、PETって確か、陽電子放出核種を体内に入れるのだったな。
陽電子なんて、プリンターではどうにもできない。
「他に方法はないのか? レイラ・ソコロフはスキャナーを使っていた様な事を言っていたが」
「レイラ・ソコロフは「スキャナー」と言っていたのか? それは恐らくPETの事じゃろう。実際に、わしも北島の地下施設ではPETを使い、レムとの接続が切れている事を確認したのじゃ」
「しかし、それには陽電子放出核種が必要なはず。それはどうやって調達した?」
「北島の地下に、サイクロトロンがある。それを使っていた」
「サイクロトロン? そんな大きな物をプリンターで作ったのか?」
「そんなに大きくはないぞ。大型バイクぐらいの大きさじゃ」
マジか? そういえば、病院内にも設置できるような小型のサイクロトロンもあると聞いたな。いや、僕の時代から二百年経っているなら、掌サイズのサイクロトロンがあってもおかしくないか。
「Pちゃん。プリンターでサイクロトロンを作れるか?」
「小型のサイクロトロンは作れますが、それを操作するには専門の技術者が必要です。さらに、それを使って陽電子放出核種を作ったとしても、シロートにPETは扱えません」
だめか。それに陽電子なんて迂闊に扱ったら被爆するし、やめておいた方がいいか。
こうなると、機械的な手段に頼らないでスパイを見分けるしかないな。
僕はジジイの分身体の方を向いた。
「レムの方から話しかけて来なければ、接続された人は自覚する事もできないと、さっき言ったな」
「うむ。そうじゃ」
「そうなると」
僕はミールの方を向いた。
「僕とミールが接続されていても分からないという事だな」
「そういう事になりますね。あたしも、頭の中に変な声なんか聞こえてきませんし」
「だけど、僕とミール、それにナージャは接続されていない」
「カイトさん。どうしてですか?」
「僕たちが南ベイス島に上陸してそこを拠点にする事は、艦隊内の全員が知っていた。だからレムにそのことは伝わっていたとしても、ベイス島に上陸した僕たちの行動は、把握できていなかったと思う」
「なぜです?」
「もし、把握していたなら、ドローンが偵察にくる時間も正確に分かったはず。それなら、ミールの分身体を見ても騒がないように、兵士たちには徹底していたと思う。なにより、その時間帯だけ巡回をやめるという事もできたはずだ」
「なるほど……」
「そして何より、フーファイターが僕たちの舟の上で待ち伏せしていたという事だ。レムがそれを知ったのなら、直ちにやめさせるはずだ。レムとしては、あそこで僕らに死なれては困るわけだから」
「分かりました。という事は、あたしとカイトさん、ナージャさんは接続されてはいないと考えていいのですね」
「それと、ロータス偵察の時からスパイがいたのならば、それ以降にメンバーに加わったカミラもエラもスパイではない。それと、ミクも違う。ミクがすでに接続されていたのなら、拉致するためにこんなややこしい事はする必要がない」
「となると、残るは六人。キラ、芽依さん、アーニャさん、馬艦長、レイホーさん……あ! ミーチャは以前に、分身体を作って尋問したから違いますね」
残るは五人か。さて、その中からどうやって探し出すか……
「ほぼ不可能です」
電波ではないとすると……
「プシトロンパルスか。誰かがレムと接続されているという事だな」
そうだとするなら、僕も少しは気が楽になるな。自分の意志で裏切ったのではなく、ブレインレターで無理矢理接続されたのなら、本人に悪気なんてなかったのだから。
それに、レムとの接続を断ち切る目処もたったのだ。
誰なのか分かったのなら、しばらくの間は監禁して北ベイス島の地下施設を手に入れてから、接続を断ってやればいい。
僕はジジイの分身体の方に目を向けた。
「レムと接続されたという事は、どうしたら分かる?」
確か、レイラ・ソコロフは地下施設の医療機器とスキャナーを使ったと言っていたと思うが、そのスキャナーというのが僕たちコピー人間のデータをとるのに使ったのと同じ物なのか、別物なのかを聞いていなかった。
「状況によって異なるのう。レムの方から話しかけてくれば、嫌でも脳内に声が聞こえるから接続されたと自覚できるが、何も話しかけて来なければ自覚できないじゃろうな」
いや、僕が聞きたいのは自覚できるかじゃなくて……
「自覚はいい。それより、レムに接続されている事を他者が見破るにはどうすればいい?」
「PET(ポジトロン断層法)を使って、脳内での神経活動の様子を見れば一発で分かるのう」
「PETだと!?」
「脳間通信機能が覚醒していて、それが一時的なものなのか、常時接続状態なのかは、PETを使えば容易に分かる」
容易に分かるのか。PETがあれば……
だが、PETって確か、陽電子放出核種を体内に入れるのだったな。
陽電子なんて、プリンターではどうにもできない。
「他に方法はないのか? レイラ・ソコロフはスキャナーを使っていた様な事を言っていたが」
「レイラ・ソコロフは「スキャナー」と言っていたのか? それは恐らくPETの事じゃろう。実際に、わしも北島の地下施設ではPETを使い、レムとの接続が切れている事を確認したのじゃ」
「しかし、それには陽電子放出核種が必要なはず。それはどうやって調達した?」
「北島の地下に、サイクロトロンがある。それを使っていた」
「サイクロトロン? そんな大きな物をプリンターで作ったのか?」
「そんなに大きくはないぞ。大型バイクぐらいの大きさじゃ」
マジか? そういえば、病院内にも設置できるような小型のサイクロトロンもあると聞いたな。いや、僕の時代から二百年経っているなら、掌サイズのサイクロトロンがあってもおかしくないか。
「Pちゃん。プリンターでサイクロトロンを作れるか?」
「小型のサイクロトロンは作れますが、それを操作するには専門の技術者が必要です。さらに、それを使って陽電子放出核種を作ったとしても、シロートにPETは扱えません」
だめか。それに陽電子なんて迂闊に扱ったら被爆するし、やめておいた方がいいか。
こうなると、機械的な手段に頼らないでスパイを見分けるしかないな。
僕はジジイの分身体の方を向いた。
「レムの方から話しかけて来なければ、接続された人は自覚する事もできないと、さっき言ったな」
「うむ。そうじゃ」
「そうなると」
僕はミールの方を向いた。
「僕とミールが接続されていても分からないという事だな」
「そういう事になりますね。あたしも、頭の中に変な声なんか聞こえてきませんし」
「だけど、僕とミール、それにナージャは接続されていない」
「カイトさん。どうしてですか?」
「僕たちが南ベイス島に上陸してそこを拠点にする事は、艦隊内の全員が知っていた。だからレムにそのことは伝わっていたとしても、ベイス島に上陸した僕たちの行動は、把握できていなかったと思う」
「なぜです?」
「もし、把握していたなら、ドローンが偵察にくる時間も正確に分かったはず。それなら、ミールの分身体を見ても騒がないように、兵士たちには徹底していたと思う。なにより、その時間帯だけ巡回をやめるという事もできたはずだ」
「なるほど……」
「そして何より、フーファイターが僕たちの舟の上で待ち伏せしていたという事だ。レムがそれを知ったのなら、直ちにやめさせるはずだ。レムとしては、あそこで僕らに死なれては困るわけだから」
「分かりました。という事は、あたしとカイトさん、ナージャさんは接続されてはいないと考えていいのですね」
「それと、ロータス偵察の時からスパイがいたのならば、それ以降にメンバーに加わったカミラもエラもスパイではない。それと、ミクも違う。ミクがすでに接続されていたのなら、拉致するためにこんなややこしい事はする必要がない」
「となると、残るは六人。キラ、芽依さん、アーニャさん、馬艦長、レイホーさん……あ! ミーチャは以前に、分身体を作って尋問したから違いますね」
残るは五人か。さて、その中からどうやって探し出すか……
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