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第十五章

一番考えたくない問題

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 正直言って、考えたくはなかった。

 仲間の中に、裏切り者がいるなんて……

 だが……

「僕たちがベイス島へ偵察に来る事を、レムがたまたま予測していたと、僕は考えていたのだが……」

 ミールは、首を横にふった。

「その可能性はないとは言えません。でも、考えてみてください。レムが確証のない予想だけで行動していたと考えるよりも、こちらからの情報が、レムに漏れていたと考える方が可能性は高いです」
 
 今回だけ偶然という事は……いや、僕は偶然だと思いたいのだな。仲間を疑うぐらいなら……

 だけど、希望的観測で事を進めるのは危険だ。

「カイトさん。あたしだって偶然だと思いたいです。だけど、ロータスでも盗聴がばれましたね」
「ああ」
「盗聴器が見つかったのはともかく、あの女……ナルセは盗聴していたのがカイトさんだと見破りました。サガミハラさんは、推測で適当に言っただけだろうと言っていましたが、それは違うと思います。そもそもあの時点で、帝国艦隊にとっての最大の驚異は、ナンモ解放戦線だったはずです。カルカからの追撃は予想していたとしても、確認はしていないはずです」

 少なくとも推測だけで、僕たちの戦力までは把握できていない。

 僕たちとナンモ解放戦線を同士討ちさせるなんて考えたのは、こちらの戦力を把握していたからだろう。

「ハイド島で戦ったとき、ヤナははっきり言いましたね。『次はおまえらの隠れている潜水艦を叩きに行く』と。でも、あたしたちが潜水艦で追いかけて来ている事を、いつ知ったのでしょうか?」

 それに関しては、成瀬真須美たちがロータスに偵察ドローンを残していったらしいので、そこから情報を得たのだと思っていたのだが……

 ちなみになぜそれが分かったかというと、戦いの後で所属不明のドローンの残骸が多数見つかったから。

 ただ、それが本当に成瀬真須美の残した物という確証はないし、そうだとしても実際に潜水艦まで見つかったのかわからない。
 
 もし、潜水艦がドローンのカメラで発見されたのなら、ドローンもこちらのレーダーに映るはず。

 だが、《海龍》《水龍》のレーダー記録にそんなデータはなかった。

「ハイド島で戦った時、フライング・トラクターはあっさり逃げて行きましたね。でも、あそこでエラ・アレンスキーを降ろしても良かったのではないでしょうか? そうすれば、こっちも対抗するためにミクちゃんを出してくると考えると思うのです。でも、そうはしなかった。ハイド島に上陸したこちらのメンバーの中に、ミクちゃんがいない事を知っていたからではないでしょうか?」

 確かに、あんな樹木で視界が遮られている状況で、こっちにミクがいない事を確認できるとは思えない。《海龍》の医務室で寝ていることを、スパイから伝えられて知ったのか?

「Pちゃん。君はどう思う?」
「ミールさんの言っている事は論理的です。可能性は、かなり高いです」

 そうか。となると問題は……

「誰が裏切っているのか?」

 一番考えたくない問題だな……
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