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第十四章

集落2

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 振り向くとヨボヨボの爺さんが、ミールの尻をなで回している。

「ふほほほ。良い尻じゃのう。ナーモ族のお嬢ちゃん」
「な……何するんですか! いきなり」

 ミールが爺さんをひっぱたこうとしたが、老体とは思えぬ素早い動きでひらりと避ける。

「あ! このスケベジジイ! また帰ってきたか」
「お客さんに、なんて事すんのよ!」
「村の恥さらしが! 今日と言う今日は許さない」

 女性たちは手にほうきやすりこぎ棒を持って、爺さんを追い回し始めた。

 しかし、女性たちが棒や箒を振るっても、爺さんは寸前でかわしてしまう。

「待てえ! エロジジイ!」
「こりゃ娘たち。か弱い老人に何をする気じゃ」
「おのれのどこがか弱いんじゃ!」「村の娘だけで飽きたらず、ナーモ族の娘にまで」
「老い先短い老人の唯一の楽しみじゃ。大目に見ろ」
「老い先短いなら、今日を命日にしてやるわよ!」

 な……なんなんだ? この爺さんは……

「ふえーん! カイトさん! 変なおじいさんにお尻を触られてしまいました」
「ミール……その……」
「ミールはもうお嫁に行けません。エッグ! エッグ!」

 大丈夫だよ……と言おうとしたとき、胸ポケットから顔を出したPちゃんが先に口を挟んできた。

左様さようでございますか。では、ミールさん。ご主人様のお嫁さんになるのはあきらめるのですね?」
「イヤです。諦めません。それに……」 

 ミールはお腹に手を当てた。

「ここには、カイトさんの赤ちゃんが……」

 えええええ!? いや……身に覚えは……あるのだが……

「宿る予定ですので……」

 予定だったのか……あせった……

「あの、お嬢さん」

 ナージャのおばさんが心配そうに声をかけてきた。

「うちのエロオヤジが、本当に申し訳ない事をしました。許してください」
「あ……いえ……あの爺さんはいったい……」

 僕の質問にナージャが答えた。

「ルスラン・クラスノフ博士。自分では偉大な大科学者だと言っているけど、お婆ちゃんに言わせるとマッドサイエンティストだそうよ」

 マッドサイエンティスト?

 おばさんの方を見ると頭を抱えていた。

「恥ずかしながら、私の父です。元気がいいのだからナンモ解放戦線に行けば良かったのに『か弱い老人を戦争に行かせる気か』と行って村に止まっていたのよ。まったく、どこがか弱いのだか。あんなに元気がいいのなら、戦争に行ってくりゃいいのに」

 困った爺さんだ。

「おばさん。私も同意見だけど、今爺さんに死なれると困るのよね」
「ナージャ。別に困ることないだろう」

 いや、その言い方ヒドくね。実の父に対して……

「いや、私としてはここにいる北村さんに、あの爺さんを引き合わせたいと思っていたんだ」

 なに?

「どういう事だ。ナージャ」
「私のうろ覚えの記憶なのだけど、子供の頃あの爺さんに聞いた事があるんだ。爺さんのオリジナル体が地球にいたとき、レム・ベルキナのオリジナル体と会った事あるそうなんだよ」

 なんだって!? 
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