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第十三章
酒は心の痛み止め 2
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ブリーフケースに隠してあった紹興酒を持って司令塔のハッチから顔を出すと、月明かりに照らされた甲板の上で、女子たちがテーブルや椅子を用意して酒宴の支度をしていた。
「悪いわね。私まで呼んでもらって」
なんでアーニャさんまで……
この人、かなり飲みそうだな。ん?
彼女が手にしている赤い瓶は?
「アーニャさん。それは?」
「リトル東京から持ってきた赤ワイン」
「リトル東京では、ワインも作っていたの?」
「清酒も焼酎も作っていたわよ。まあ、私が持ってきたのは、この一本で最後だけど」
「嘘おっしゃい」
声の方を振り向くと、馬艦長が木箱を抱えていた。
中に入っていたのは、赤ワイン、白ワイン、清酒、ブランデー等々などの酒類。
「まだ、こんなに隠し持っていたくせに、出し惜しみしないの」
「ああ! 私の密かな楽しみを!」
アーニャさん。なんか、あんたには親近感が沸いてきたよ。
惚れはしないけど……
だが、その前にやるべき事があったな。
「Pちゃん」
グラスにワインを注いでいたPちゃんが振り向いた。
「何でしょう? ご主人様」
「リトル東京と、直接通話はできるかい?」
「可能です」
古淵は結局生き残ったけど、橋本 晶という女性に古淵のメッセージを伝えておいてもいいだろう。
その事を言うと……
「分かりました。しかし、ご主人様が直接話すより、芽依様にやって頂いた方がよろしいかと思います」
「なんで?」
「ご主人様はその方と面識がありませんが、芽依様なら面識があります」
そうだな。
「それと、今の状況で、ご主人様が初対面の女性と通信を行うのはあまり好ましくありません」
「また虫除けプログラムか」
「違います。現在 《海龍》《水龍》がご主人様のハーレム状態になりかけている事を自覚なされていますか?」
え? え? え? ハーレム? いや、そんなつもりは……
「この状況で、ご主人様が知らない女性と通話した事が艦内に知れ渡ったら、みなさんから『誰と通話していた』と問いつめられる事になりますが」
それは困る。やはりここは芽依ちゃんに頼むか?
「芽依ちゃん」
う! 振り向いた芽依ちゃんの顔は真っ赤になり、目はトローンとしていた。その手には、空っぽのグラス。
「なんれふか? 北村しゃん」
酔っぱらっている。
「ミール。芽依ちゃんはどれだけ飲んだの!?」
一方、ミールは真っ青な顔をしている。
「そ……それが、この赤いお酒をコップ一杯一気に……」
ワインの度数は十二~十八。僕ならこのぐらいではどうと言うことないが、アルコール初心者にはキツいかもしれない。
「芽依ちゃん……気分は?」
「気分れふか? とってもいいれふ。お酒って、最高れふね。うへうへうへへへへ」
あかん。完全に酔っぱらっている。いや、酔っぱらうだけならいい。急性アルコール中毒の危険があるぞ。
「Pちゃん。芽依ちゃんにチェイサーを」
「かしこまりました」
Pちゃんがチェイサーを取りに離れた時に、不意に芽依ちゃんが僕の左腕にしがみついてきた。
「あはは……北村しゃんが、四人もいまふね」
「ちょっと! メイさん。酔っぱらったからってカイトさんに……」
「ミールしゃん。何を言ってましゅ。北村しゃんが、四人に増えたのだから、一人は私がもらってもいいれふね」
「いや、それは四人に見えるだけで、実際は……」
「地球の科学はスゴいのれふよ。コピー機で人間を増やせるのれふ」
「それは知っていますけど、今メイさんが見ているのは……」
「あれえ? 人間の同時複数再生は危険だったはず……」
酔っていても、そういうところは気が付くのだな。
「北村しゃん! 大変れふ! 同時複数再生をするとコピー人間同士でシンクロして……」
そこまで言ったところで、芽依ちゃんはクタっと倒れた。
「悪いわね。私まで呼んでもらって」
なんでアーニャさんまで……
この人、かなり飲みそうだな。ん?
彼女が手にしている赤い瓶は?
「アーニャさん。それは?」
「リトル東京から持ってきた赤ワイン」
「リトル東京では、ワインも作っていたの?」
「清酒も焼酎も作っていたわよ。まあ、私が持ってきたのは、この一本で最後だけど」
「嘘おっしゃい」
声の方を振り向くと、馬艦長が木箱を抱えていた。
中に入っていたのは、赤ワイン、白ワイン、清酒、ブランデー等々などの酒類。
「まだ、こんなに隠し持っていたくせに、出し惜しみしないの」
「ああ! 私の密かな楽しみを!」
アーニャさん。なんか、あんたには親近感が沸いてきたよ。
惚れはしないけど……
だが、その前にやるべき事があったな。
「Pちゃん」
グラスにワインを注いでいたPちゃんが振り向いた。
「何でしょう? ご主人様」
「リトル東京と、直接通話はできるかい?」
「可能です」
古淵は結局生き残ったけど、橋本 晶という女性に古淵のメッセージを伝えておいてもいいだろう。
その事を言うと……
「分かりました。しかし、ご主人様が直接話すより、芽依様にやって頂いた方がよろしいかと思います」
「なんで?」
「ご主人様はその方と面識がありませんが、芽依様なら面識があります」
そうだな。
「それと、今の状況で、ご主人様が初対面の女性と通信を行うのはあまり好ましくありません」
「また虫除けプログラムか」
「違います。現在 《海龍》《水龍》がご主人様のハーレム状態になりかけている事を自覚なされていますか?」
え? え? え? ハーレム? いや、そんなつもりは……
「この状況で、ご主人様が知らない女性と通話した事が艦内に知れ渡ったら、みなさんから『誰と通話していた』と問いつめられる事になりますが」
それは困る。やはりここは芽依ちゃんに頼むか?
「芽依ちゃん」
う! 振り向いた芽依ちゃんの顔は真っ赤になり、目はトローンとしていた。その手には、空っぽのグラス。
「なんれふか? 北村しゃん」
酔っぱらっている。
「ミール。芽依ちゃんはどれだけ飲んだの!?」
一方、ミールは真っ青な顔をしている。
「そ……それが、この赤いお酒をコップ一杯一気に……」
ワインの度数は十二~十八。僕ならこのぐらいではどうと言うことないが、アルコール初心者にはキツいかもしれない。
「芽依ちゃん……気分は?」
「気分れふか? とってもいいれふ。お酒って、最高れふね。うへうへうへへへへ」
あかん。完全に酔っぱらっている。いや、酔っぱらうだけならいい。急性アルコール中毒の危険があるぞ。
「Pちゃん。芽依ちゃんにチェイサーを」
「かしこまりました」
Pちゃんがチェイサーを取りに離れた時に、不意に芽依ちゃんが僕の左腕にしがみついてきた。
「あはは……北村しゃんが、四人もいまふね」
「ちょっと! メイさん。酔っぱらったからってカイトさんに……」
「ミールしゃん。何を言ってましゅ。北村しゃんが、四人に増えたのだから、一人は私がもらってもいいれふね」
「いや、それは四人に見えるだけで、実際は……」
「地球の科学はスゴいのれふよ。コピー機で人間を増やせるのれふ」
「それは知っていますけど、今メイさんが見ているのは……」
「あれえ? 人間の同時複数再生は危険だったはず……」
酔っていても、そういうところは気が付くのだな。
「北村しゃん! 大変れふ! 同時複数再生をするとコピー人間同士でシンクロして……」
そこまで言ったところで、芽依ちゃんはクタっと倒れた。
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