507 / 848
第十三章
ミクの不調 1
しおりを挟む
エラは扉を開くと同時に掌を前に突き出して、プラズマボールを連続で放ってきた。
その様子を見ながら古淵は話を続ける。
『アレンスキーさんの話では、プラズマボールの一発や二発ではキラさんの憑代を破壊できない。なので、キラさんの分身体を見つけたら、間髪を入れずに最低十発は連射すると彼女は言っておりました』
キラの分身と戦ったNo.5の記憶から、そう判断したようだな。
実際、マシンガンのように撃ち出されたプラズマボールを浴びて、キラの分身体は消滅した。
『もっとも、この戦い方では魔力の消耗もそうとう激しいみたいなので、本人もあまりやりたくないと言っていましたが……ところで、エラさんが一番警戒していた式神使いの女の子の姿がありませんが……』
ミクの事も知っている! では、ミクの式神への対策も立てているのか?
「ミクは、ちょっと遅刻しているようだ」
『遅刻? 何か、出てこられない事情でもあるのですか?』
船酔いで寝込んでいるなどとは言えんし……恥とかではなくて、こっちの弱点を教えるわけにはいかない。
「ノーコメントだ」
『という事は、式神使いの女の子は、出てこられないのですね。それは困ったな』
「なんで、あんたが困る?」
古淵はそれに答えないで、しばらく黙り込んでいた。
どうやら、レムと話をしているようだ。
『おや? どうやら間に合ったようですね』
なにが? と聞こうとしたが、映像を見てすぐに分かった。
金色の龍……オボロが《アクラ》の上にいたのだ。
ミク! 大丈夫なのか?
映像を拡大してオボロの上に跨っているミクの様子を見ると、服装がいつものセーラー服ではなくジャージ。ベッドから無理に出てきたのか?
オボロの角が輝き、光の玉……プラズマボールを下に向かって発射した。
一方 《アクラ》の上にいたエラも、プラズマボールを撃ち返す。
映像をさらに拡大して、ミクの顔を見るといつもの余裕がない。蒼白な顔をしている。
「やめさせないと」
『なぜです?』
僕の呟きを聞いた古淵は、意外そうな声で聞いてきた。
「なぜって……」
『ああ! もしかして、心配されているのですか? エラさんがあの女の子の能力を打ち破る手段を用意していると。そんな心配はありません。中の人も、あの女の子を殺すつもりはない。むしろこの戦いで、エラさんには死んでもらう予定です。だから、この戦いを邪魔するような事はしないでください』
「という事は、最初からミクとエラを戦わせるのが目的だったのか!?」
『始まってしまった以上、もう隠す必要はないでしょう。あなたのおっしゃる通りです。僕としては当初 《アクラ》は帝国艦隊を切り離して逃げる事を提案したのですがね。中の人が、それを許さなかったのですよ。ミクさんと言いましたか。あの式神使いの女の子とエラさんを戦わせて、その能力を見極めたいようです』
「それじゃあ、フーファイターのエネルギーを無駄遣いして、島に不時着させたのは……」
『最初からその為のお膳立てですよ。矢納さんはこの事を知らなかったのですけどね。だから、僕は『フローティングアンテナの下に潜水艦がいるはず、確実に破壊するには対消滅爆雷を三発ぐらい使った方がいい』とアドバイスしました。その結果、フーファイターは帰還に必要なエネルギーがなくなり、島に不時着することになったのです。自然な形で。当初ので予定では、ここで式神使いの女の子とエラさんを戦わせるはずでした。あそこなら《アクラ》を危険に晒す事もなく、無事に戦いのデータを取って、エラさんと矢納さんの始末ができたのですが……』
しかし、ミクが現れなかった。
当然だ。船酔いで寝込んでいたのだから……
その様子を見ながら古淵は話を続ける。
『アレンスキーさんの話では、プラズマボールの一発や二発ではキラさんの憑代を破壊できない。なので、キラさんの分身体を見つけたら、間髪を入れずに最低十発は連射すると彼女は言っておりました』
キラの分身と戦ったNo.5の記憶から、そう判断したようだな。
実際、マシンガンのように撃ち出されたプラズマボールを浴びて、キラの分身体は消滅した。
『もっとも、この戦い方では魔力の消耗もそうとう激しいみたいなので、本人もあまりやりたくないと言っていましたが……ところで、エラさんが一番警戒していた式神使いの女の子の姿がありませんが……』
ミクの事も知っている! では、ミクの式神への対策も立てているのか?
「ミクは、ちょっと遅刻しているようだ」
『遅刻? 何か、出てこられない事情でもあるのですか?』
船酔いで寝込んでいるなどとは言えんし……恥とかではなくて、こっちの弱点を教えるわけにはいかない。
「ノーコメントだ」
『という事は、式神使いの女の子は、出てこられないのですね。それは困ったな』
「なんで、あんたが困る?」
古淵はそれに答えないで、しばらく黙り込んでいた。
どうやら、レムと話をしているようだ。
『おや? どうやら間に合ったようですね』
なにが? と聞こうとしたが、映像を見てすぐに分かった。
金色の龍……オボロが《アクラ》の上にいたのだ。
ミク! 大丈夫なのか?
映像を拡大してオボロの上に跨っているミクの様子を見ると、服装がいつものセーラー服ではなくジャージ。ベッドから無理に出てきたのか?
オボロの角が輝き、光の玉……プラズマボールを下に向かって発射した。
一方 《アクラ》の上にいたエラも、プラズマボールを撃ち返す。
映像をさらに拡大して、ミクの顔を見るといつもの余裕がない。蒼白な顔をしている。
「やめさせないと」
『なぜです?』
僕の呟きを聞いた古淵は、意外そうな声で聞いてきた。
「なぜって……」
『ああ! もしかして、心配されているのですか? エラさんがあの女の子の能力を打ち破る手段を用意していると。そんな心配はありません。中の人も、あの女の子を殺すつもりはない。むしろこの戦いで、エラさんには死んでもらう予定です。だから、この戦いを邪魔するような事はしないでください』
「という事は、最初からミクとエラを戦わせるのが目的だったのか!?」
『始まってしまった以上、もう隠す必要はないでしょう。あなたのおっしゃる通りです。僕としては当初 《アクラ》は帝国艦隊を切り離して逃げる事を提案したのですがね。中の人が、それを許さなかったのですよ。ミクさんと言いましたか。あの式神使いの女の子とエラさんを戦わせて、その能力を見極めたいようです』
「それじゃあ、フーファイターのエネルギーを無駄遣いして、島に不時着させたのは……」
『最初からその為のお膳立てですよ。矢納さんはこの事を知らなかったのですけどね。だから、僕は『フローティングアンテナの下に潜水艦がいるはず、確実に破壊するには対消滅爆雷を三発ぐらい使った方がいい』とアドバイスしました。その結果、フーファイターは帰還に必要なエネルギーがなくなり、島に不時着することになったのです。自然な形で。当初ので予定では、ここで式神使いの女の子とエラさんを戦わせるはずでした。あそこなら《アクラ》を危険に晒す事もなく、無事に戦いのデータを取って、エラさんと矢納さんの始末ができたのですが……』
しかし、ミクが現れなかった。
当然だ。船酔いで寝込んでいたのだから……
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめる予定ですー!

2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?

神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
ゲームで第二の人生を!~最強?チート?ユニークスキル無双で【最強の相棒】と一緒にのんびりまったりハチャメチャライフ!?~
俊郎
SF
『カスタムパートナーオンライン』。それは、唯一無二の相棒を自分好みにカスタマイズしていく、発表時点で大いに期待が寄せられた最新VRMMOだった。
が、リリース直前に運営会社は倒産。ゲームは秘密裏に、とある研究機関へ譲渡された。
現実世界に嫌気がさした松永雅夫はこのゲームを利用した実験へ誘われ、第二の人生を歩むべく参加を決めた。
しかし、雅夫の相棒は予期しないものになった。
相棒になった謎の物体にタマと名付け、第二の人生を開始した雅夫を待っていたのは、怒涛のようなユニークスキル無双。
チートとしか言えないような相乗効果を生み出すユニークスキルのお陰でステータスは異常な数値を突破して、スキルの倍率もおかしなことに。
強くなれば将来は安泰だと、困惑しながらも楽しくまったり暮らしていくお話。
この作品は小説家になろう様、ツギクル様、ノベルアップ様でも公開しています。
大体1話2000~3000字くらいでぼちぼち更新していきます。
初めてのVRMMOものなので応援よろしくお願いします。
基本コメディです。
あまり難しく考えずお読みください。
Twitterです。
更新情報等呟くと思います。良ければフォロー等宜しくお願いします。
https://twitter.com/shiroutotoshiro?s=09
聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!
山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」
────何言ってんのコイツ?
あれ? 私に言ってるんじゃないの?
ていうか、ここはどこ?
ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ!
推しに会いに行かねばならんのだよ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる