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第十三章

かつての仲間6

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 僕はこの惑星に来て戦っている内に、人を殺すことに何も感じなくなっていた。

 だけど……実際には違う。

 今でも、人を殺すことはつらい。ただ、その辛さに気が付かなくなっていただけ……

「古淵さん。確かにあんたの言う通りだ。だが、必要なら僕は人を殺すことを躊躇ためらわない」
『ええ。隊長もそうでした。隊長も必要とあらば、心を鬼にして人を殺します。その性格を引き継いでいるあなたが僕を殺そうとしない。それは、殺す必要がないと考えたからではないのですか?』

 ……

『あなたは僕と矢部さんを逃がそうとしなかったのは、殺すためではない。僕たちを足止めして《アクラ》と引き離す。それが目的ではないのですか?』

 読まれていた。こいつ、いつから気が付いていた?

 僕はフライング・トラクターの不時着ポイントから上流に《水龍》、下流に《海龍》を配置していた。

 その配置のまま、フライング・トラクターを回収に来た《アクラ》が、川底に隠れている《海龍》に気が付かないで通り過ぎるのを待っていたのだ。

 そして《アクラ》は、僕の思惑通り《海龍》に気が付かないまま通り過ぎていった。《アクラ》がフライング・トラクター回収作業に入ったところを見計らって《水龍》を浮上させて攻撃を仕掛ければ、《アクラ》はまともに戦ったりはしないで下流に向かって逃走を始めるだろう。

 そこで、下流に配置していた《海龍》が、逃げてきた《アクラ》を拿捕する。

 それが僕の立てた作戦だった。

『どうやら図星だったようですね。あいにくと、僕がそれに気が付いたのは、あなたとの戦闘中の事ですよ。《アクラ》を離れる前は予想していませんでした。だから、それに対しては何も対策は立てていません。今頃はあなたの思い通りですよ』

 アーニャからの通信が入ったのはその時……

『こちら《海龍》。今、《アクラ》に接舷したわ』

 どうやら、上手くいったようだ。

「了解です。何かあったら連絡をください」

 アーニャとの通信を切った。小淵が再び話始める。

『内容は暗号になっているので分かりませんが、お仲間から通信がありましたね。電波は《アクラ》の方向から来た。今頃、《アクラ》は制圧されつつある。違いますか?』
「その通りだ」
『やはりね。あなたは潜水艦を二隻用意していた。その一隻が《アクラ》に攻撃をかけ、もう一隻が《アクラ》の逃げる先に待ちかまえていた。その目的は《アクラ》を撃沈するのではなく、移乗白兵戦を仕掛けて拿捕する事。その時に空を飛べる九十九式がいると、妨害を受ける。そこであなたは、僕と矢部さんをここで足止めしていた。そうですね?』
「その通りだ。僕の目的は足止め。君を殺す気はない。矢部さんの場合は、芽衣ちゃんからそうとう恨みを買っていたから仕方なかった。さて、本来なら、ここで降伏しろと言いたいところだが、レムがそれを許さないのだろう。こっちの目的が片づいたら、君は解放する。仲間には『まんまと逃げられた』と言っておくけどね」
『やれやれ。まんまとはめられましたね。ところで、成瀬さんから僕に映像が届いています。一緒に見ますか?』

 どういうつもりだ?
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