334 / 828
第十一章
撹乱幕を突破せよ(天竜過去編)
しおりを挟む
レーザーは確かに命中した……はずだった。しかし……
「効いてない」「そんな……」
ん? 変だ。こっちのレーザーが届くなら向こうのレーザーも届くはず。それなのに敵はレーザーを撃ってこない。
「章君! 私の後に戻って!」
「え?」
言われた通り、僕は馬 美玲機の後に戻った。
「レーザー攪乱膜よ。ここから撃っても通じないわ。敵は私達が来る前に、レーザー攪乱膜を張っていたのよ」
馬 美玲の言う通り、レーダーには、僕達と敵の間に雲のような影が横たわっている様子が映っていた。これが、レーザー攪乱膜?
だから、向こうはレーザーを撃ってこないのか。
「いったい、どうすれば……」
「奴を仕留めるには、レーザー攪乱膜の内側に入らなきゃならない。でも、その前に奴らは電磁砲を撃ってくる。並んで行ったら、二人ともやられてしまうわ。だから、最初の予定通り私が盾になって章君を守る。章君は何としても攪乱膜の内側に入って、奴を仕留めて」
「分かった」
僕達は金属箔の漂う宙域に入った。
「これが、レーザー攪乱膜?」
「そうよ。敵はこの辺りの宙域に、金属箔を撒いたのね……しまった!」
「どうしたの?」
馬 美玲機がエアバックを展開した。敵が電磁砲を撃ってきたのか?
「章君。絶対に私の後から出ないで。出たら、あなたもやられてしまう」
「え?」
そうか! 薄い金属箔と言っても、真空中では破壊力のあるデブリだ。
この相対速度ではホイップルバンパーももたない。
「章君。聞いて。私の機体は、デブリでかなりダメージを受けた。もうすぐコントロール不能になる」
「なんだって?」
「章君は加速を止めて慣性航行に入って。もうこれ以上速度を上げる必要はないわ」
僕はメインエンジンを停止させた。
「私の機体からは、爆発の危険がある燃料と推進剤はすべて投棄したわ。今は自力では動けないただの盾よ。章君は私の機体を盾にして、攪乱膜を突破して」
「分かった」
「奴を必ず仕留めてね。《天竜》で会いましょう」
馬 美玲のアバターが消えた。
とうとう僕一人だけ。
今は物言わぬ球体となってしまった馬 美玲の機体が切り開いてくれる空隙を僕は進んでいた。この空隙から少しでも外れたら、僕の機体は破壊される。
いつまで、この状態が続くのだろう?
レーダーの画面は真っ白。攪乱膜の影響で、レーダーも効かないようだ。
今、電磁砲を撃ってこられても、僕には分からない。
突然、先行している球体が大きく揺れた。
電磁砲を受け止めたのだろうか?
「白龍君」
唐突に楊さんの声が聞こえた。
「楊さん。どこ?」
「今はアバターを出せないけど、声だけで我慢してね」
「はい」
「状況を伝えるわ。先ほど《天竜》から連絡が入ったの。敵の前衛部隊を殲滅したわ。《天竜》は無事よ」
「よかった」
「後は私達よ。もうすぐ、予備機による包囲も完成するわ」
「それじゃあ、僕はもうそっちへ戻っても……」
「いいえ」
「え?」
「白龍君には一機でもいいから、レーザー機を潰してほしいの。嫌な予感がするのよ」
「分かりました」
攪乱膜を突破したのはその時だった。
スラスターを噴射して馬 美玲機の陰から出ると、敵のレーザー機が丸見えだった。
照準を合わせる。
トリガーを引いた。
シリンダー状のレーザー機は白熱していく。
やがて爆発した。
次の瞬間、僕の機体に敵のレーザーが雨のように降り注ぐ。
僕は機体とのリンクを切って、《朱雀》に意識を戻した。
「効いてない」「そんな……」
ん? 変だ。こっちのレーザーが届くなら向こうのレーザーも届くはず。それなのに敵はレーザーを撃ってこない。
「章君! 私の後に戻って!」
「え?」
言われた通り、僕は馬 美玲機の後に戻った。
「レーザー攪乱膜よ。ここから撃っても通じないわ。敵は私達が来る前に、レーザー攪乱膜を張っていたのよ」
馬 美玲の言う通り、レーダーには、僕達と敵の間に雲のような影が横たわっている様子が映っていた。これが、レーザー攪乱膜?
だから、向こうはレーザーを撃ってこないのか。
「いったい、どうすれば……」
「奴を仕留めるには、レーザー攪乱膜の内側に入らなきゃならない。でも、その前に奴らは電磁砲を撃ってくる。並んで行ったら、二人ともやられてしまうわ。だから、最初の予定通り私が盾になって章君を守る。章君は何としても攪乱膜の内側に入って、奴を仕留めて」
「分かった」
僕達は金属箔の漂う宙域に入った。
「これが、レーザー攪乱膜?」
「そうよ。敵はこの辺りの宙域に、金属箔を撒いたのね……しまった!」
「どうしたの?」
馬 美玲機がエアバックを展開した。敵が電磁砲を撃ってきたのか?
「章君。絶対に私の後から出ないで。出たら、あなたもやられてしまう」
「え?」
そうか! 薄い金属箔と言っても、真空中では破壊力のあるデブリだ。
この相対速度ではホイップルバンパーももたない。
「章君。聞いて。私の機体は、デブリでかなりダメージを受けた。もうすぐコントロール不能になる」
「なんだって?」
「章君は加速を止めて慣性航行に入って。もうこれ以上速度を上げる必要はないわ」
僕はメインエンジンを停止させた。
「私の機体からは、爆発の危険がある燃料と推進剤はすべて投棄したわ。今は自力では動けないただの盾よ。章君は私の機体を盾にして、攪乱膜を突破して」
「分かった」
「奴を必ず仕留めてね。《天竜》で会いましょう」
馬 美玲のアバターが消えた。
とうとう僕一人だけ。
今は物言わぬ球体となってしまった馬 美玲の機体が切り開いてくれる空隙を僕は進んでいた。この空隙から少しでも外れたら、僕の機体は破壊される。
いつまで、この状態が続くのだろう?
レーダーの画面は真っ白。攪乱膜の影響で、レーダーも効かないようだ。
今、電磁砲を撃ってこられても、僕には分からない。
突然、先行している球体が大きく揺れた。
電磁砲を受け止めたのだろうか?
「白龍君」
唐突に楊さんの声が聞こえた。
「楊さん。どこ?」
「今はアバターを出せないけど、声だけで我慢してね」
「はい」
「状況を伝えるわ。先ほど《天竜》から連絡が入ったの。敵の前衛部隊を殲滅したわ。《天竜》は無事よ」
「よかった」
「後は私達よ。もうすぐ、予備機による包囲も完成するわ」
「それじゃあ、僕はもうそっちへ戻っても……」
「いいえ」
「え?」
「白龍君には一機でもいいから、レーザー機を潰してほしいの。嫌な予感がするのよ」
「分かりました」
攪乱膜を突破したのはその時だった。
スラスターを噴射して馬 美玲機の陰から出ると、敵のレーザー機が丸見えだった。
照準を合わせる。
トリガーを引いた。
シリンダー状のレーザー機は白熱していく。
やがて爆発した。
次の瞬間、僕の機体に敵のレーザーが雨のように降り注ぐ。
僕は機体とのリンクを切って、《朱雀》に意識を戻した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
142
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる