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第十一章

宇宙機vs宇宙機(天竜過去編)

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 《青龍》《朱雀》《白虎》《玄武》の各一隻から五機ずつ、合計二十機の宇宙機が出撃した。
 向かってくる敵の前衛をやり過ごし、僕達は後衛二十五機へと向かっていく。
 先に送り出した無人索敵機から情報が送られてきた。
 敵後衛は、五機のレーザー機を中心にして、二十機の護衛機で取り囲む球形陣を取っている。
 
 当初の作戦では、こっちの編隊は四つのグループに分かれて四方向からの同時攻撃をかけ、敵後衛を四つの方向から爆散円で包み込んで、一気に殲滅するはずだった。しかし、敵だってレーダーでこちらの動きを捉えている。
 大人しく、取り囲まれるはずがない。
 敵は軌道を大きく変更して、囲みから逃れてしまった。
 
「作戦を、プランBに変更」

 姿は見えないが、楊さんの指示が聞こえてきた。
 プランBは、包囲が不可能となった場合、各隊の判断で攻撃ということ。
 僕ら朱雀隊の指揮は、アーニャが取っていた。
 僕は一番年下だし、王だと趙が言う事を聞かないし、趙だと王が言う事を聞かない。
 柳は気が弱い。
 アーニャをリーダーにするのが妥当だろうな。

「みんな。球形陣の中心を狙って」
 
 アーニャの指示に従い、僕達は電磁砲レールキャノンの照準を球形陣の中心にいるレーザー機に合わせた。

「射撃と同時に、全員各自の判断で回避運動。すぐに攻撃が来るわよ」

 合図と同時に僕はトリガーを引いた。
 口径三十ミリの砲弾三十発が数秒で撃ち尽くされる。
 反対方向に同じ質量の砲弾が射出され、反動は完全に打ち消されていた。

 射撃終了と同時に、僕は機体を反転させメインエンジンを点火。
 最大加速で逃げる。
 電子エレクトロン陽電子ポジトロンの対消滅反応が生み出す膨大エネルギーに押し出されて、僕の機体は二十Gの加速度で敵の弾丸から遠ざかっていく。
 それでも完全には逃げ切れないようだ。

「メインエンジン停止、進路反転百八十度、エアバック展開」

 機体は加速を止めて、迫り来る砲弾に正面を向けた。
 エアバックが膨らむ。
 レーダー画面の中で砲弾が数キロ手前で爆発した。
 砲弾のまき散らした破片を表す爆散円が迫る。

 やがてレーダー上で爆散円と僕の機体が重なった。
 激しい振動が伝わってくる。
 振動が収まった時、エアバックはズタズタに引き裂かれていたが、機体は無事だった。
 姿の見えない揚さんの声が聞こえてくる。

「柳 魅音機大破」

 見回すと柳魅音のアバターが見当たらない。
 避けきれなかったのか。
 各隊の損害が文字情報で表示される。

 青龍隊 大破 二  小破 一

 朱雀隊 大破 一  小破 〇

 白虎隊 大破 三  小破 二

 玄武隊 大破 四  小破 〇

「俺達の損害が一番少なかったようだな」

 僕の隣で王のアバターがガッツボーズをしていた。

「もう一機、デブも落とされればよかったのに」

 余計な事を呟く趙麗華。王はこめかみに青筋に浮かべる。こういう感情表現までできるなんて、よくできたアバターだな……て、感心している場合じゃない。


「王、押さえて、押さえて」
「大丈夫だ、章。俺は冷静だぜ」
「そう……ならいいけど……」

 僕は趙麗華の方を振り向く。

「趙さんも、無意味な挑発はやめて。今は戦闘中だよ。下手したら僕達死ぬんだよ」
「馬鹿じゃないの。これは所詮アバターよ。私達が遠隔操作している宇宙機がやられても、母船の中の私達は何ともないのよ」
「そりゃあそうだけど……」
「それとも怖いの? 臆病者ね。章君。あなた女の子みたいな可愛い顔しているけど、中身も、本当は女の子なんじゃないの」
「なんだと!」
「章、おまえも落ち着け」

 は! 僕までカッとなってしまった。
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