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王家騒動編

第128話 昨日の敵は今日も敵

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「では調子にのったフォルン領を追い落とす会議を始める」
「…………」

 とある貴族の地下室。俺は拳を握りながらなんとか怒りをこらえる。

 円卓のような机を囲み、俺を除いて無能な貴族たちが並んでいる。何を隠そうこいつらは、フォルン領が嫌いだから集まったクズ共だ。

 何で俺がそんな奴らと一緒にいるかというと、敵の敵は味方というだけだ。

 俺はレスタンブルクの国王になりたくない。こいつらは俺がこれ以上権力を握るのを嫌がっている。

 信じられないことに利害が一致しているのだ。向こうからコンタクトを取って来たのだが、組んでみるのもよいかと思ってお呼ばれしたわけだ……したわけだが……。

「まずは会議前の挨拶。フォルン領は滅ぶべし、アトラス伯爵は貴族ではなく醜き豚。この国の汚点」
「「「フォルン領は滅ぶべし、アトラス伯爵は貴族ではなく醜き豚。この国の汚点」」」

 すでに俺の怒りが我慢の限界を越えようとしている。

 こいつら、俺がいるのを分かっていてやってるのだ。主格の男が俺を見てゲスい笑みを浮かべている。

 お前らの顔は覚えたぞ。俺が王になるのを免れたら、徹底的に潰してやるからな!

「さて、まずは我ら『救国の清廉なる血の盟約』同盟として、各自の成果を教えてもらおう」
「ぷっ」

 俺は必死に爆笑しそうになるのをこらえる。そんな痛々しい名で笑いとってくるのやめろ!

 そもそも盟約なのか同盟なのかはっきりしろ!

 他のクズどもは真面目な顔してるのが更に笑いを誘ってくる。

「私はフォルン領の作物は他と比べて高い粗悪品と、噂を広めております」
「アトラス伯爵は罪なき少女を誘拐し、犯しまくっているクズと広めております」
「よし!」

 何がよしだ! こいつら全員今すぐぶちのめしたい……!

 全て事実無根だろうが! せめて真実を噂しろ、真実を! まあ俺は清廉潔白だから嘘しか噂にできないんだろうが。

「フォルン領は変人ぞろいと噂を広めております」
「くだらんことを言うな! そんなしょうもない噂を誰が信じる!」

 主格の男が円卓を叩いて怒りを叫ぶ。だが俺からするとその噂が一番困る……それだけ真実じゃねぇか!

「それで今日は極めて愚かなゴミが会議にいる。何を隠そうアトラス伯爵が、我らの陣営に降ると宣言した」
「勝手に降らすな! 俺もこれ以上、自分自身の評判が上がると困るだけだ」
「ふん。田舎貴族の分際で、我らの血盟に入ろうとするとはな……その存在そのものが悪だというのに」

 ……今更だが組む相手間違えたなこれ。いくらバカどもでも、少しは役に立つと思った俺がバカだった。

 バカどもは俺に視線を向けた後。

「アトラス伯爵を王都で裸踊りさせればいい。そうすれば評判はだだ下がりだ」
「ふざけんな! 評判が下がる程度で済むか! 犯罪者じゃねえか!」
「ええい! なんとワガママな! 貴様なぞ生きているだけで罪だというに!」

 貴族たちは俺を睨みながら口々に好き勝手なことを言う。

「少女を強姦させればよいのでは?」
「待て。ただの少女なら我らもやるから、あまり問題にされぬ可能性がある。ここはもっと問題のある相手にすべきだ」
「ならばこの国の姫にさせればよいのでは?」
「「「それだ!」」」

 ヤバイ。ツッコミが追い付かない。

 こいつらサラッと恐ろしいことをフェードアウトしたぞ……。

 しかもこの国の姫ってカーマとラークじゃん。俺の妻なんですがそれは……。

 ここにいる真正のバカどもは、吐き気がするような笑みを浮かべると。

「姫君をさらって犯してこい。それで貴様の評判は地に落ちる」
「誰が従うか! 俺の評判を落とす以外の方法で考えろ!」
「なんとワガママなっ!」
「これだから田舎貴族はっ!」

 バカどもは口々に意味不明なことを言い出す。

 なんて奴らだ。お前らなんぞ『腐国のバカなる血液凝固』だ。

「他になにかよい案はないか?」
「そもそもアトラス伯爵など、どうあがいてもゴミの存在。普通に生きていれば評判は落ちるだけではないか」
「いっそ殺してしまえばよいのでは? それなら評判も落ちない」
「「「それだ!」」」
「ふざけんな! 評判の代わりに俺の首が落ちるだろうが!」

 だがバカどもは我が意を得たりと俺に邪悪な笑みを浮かべてくる。

「結論が出た。貴様はここで死ね。案ずるな、姫君は我がもらいうける。貴様が遺言で私に姫を娶れと言ったことにしてやる」

 バカの主格が指を鳴らすと、武装した衛兵たちが部屋に駆け込んでくる。

 いくら何でも呼んでから来るまでが早過ぎる。どうやら最初から控えさせていたようだ。

「卑怯者め。最初から俺を捕らえるか殺す気だったな!」
「当たり前だ! 自ら網に突っ込んできた奴を、逃すわけがあるか!」

 衛兵たちは俺に槍を構えて近づいてくる。俺も我慢の限界だったので、仕返しに指を鳴らす。

 すると床から木の根が生えてきて、衛兵たちをぶっ飛ばす。衛兵たちは壁に叩きつけられて意識を失い、木の根に地面に引き込まれていく。

「なにっ!?」

 主格の男が驚いた表情でこちらを見てくる。

 馬鹿め。お前らなんぞ最初から信用するわけないだろうが!

「残念だったな! 俺も護衛を控えさせてたんだよ!」
「なんという! この卑怯者がっ!」
「お前には言われたくねぇ! エフィルン! 全員ぶちのめせ! こんなゴミな奴ら、二度と地上に帰す必要はない!」

 更に床から大量の木の根が出現。バカどもを打ちのめして、地面の穴へと引きずり込んでいく。

「ひ、ひいっ!? おたすけぇ! もうやりません! もう無辜の民で遊びませんからぁ!」
「あ、ああっ! 民から重税で搾り取った金貨が!」

 木の根に引きずり込まれながら、阿鼻叫喚の悲鳴をあげるゴミたち。

 真剣にこいつら、このまま土に還したほうがよいかもしれない。

「ああああぁぁぁぁぁ!?」

 主格の男が地面に引きずり込まれて、全てのバカは土に還った。

 それと入れ替わるようにエフィルンが扉から部屋に入って来た。
 
「主様、ご無事ですか」
「大丈夫だ。ところでクズたちはどうなったんだ?」
「魔法で出した大樹の木の根で巻き付いて、地面の中に埋めました。放置していれば木の栄養になります」
「……その大樹、根から腐り落ちたりしないだろうな」

 性根の腐った奴らの栄養で育った木……正直見たくねぇ。

 てかあれでも一応は貴族だ。ここで殺したら楽に死なせてしまうことになる。

 ここは彼らがクズの本懐を遂げられるように、ようは極力苦しむように尽力してやるべきだ。

 話を聞いた限りでは死んだ方がマシな奴らなので、王家に押し付け……献上しておけばいいか。

 しかし可哀そうだよな王家。俺だったらこんな奴らは献上拒否する。

 エフィルンにとりあえず奴らを地面から引き上げるように指示。後で王家に渡すために、俺の【異世界ショップ】で拉致監禁することになった。

『ちょっと!? なんか気持ち悪いオッサンがいっぱい来たんだけど!?』
「しばらく置いといてくれ、餌とかいらんから。てか拉致監禁するたびに文句言ってくるけど、どんな奴なら不満ないんだよ」
「美少女! 縛られたカーマちゃんやラークちゃんならなお嬉しい!」

 ミーレの言葉は聞かなかったことにした。
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