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   プロローグ

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 子爵令嬢だった私、サブリナ・エイトンが伯爵令息のアキーム・オルドリン様と初めて出会ったのは、王都にあるレストランだった。

 彼と私は12の年齢差があり、当時10歳だった私は、彼のことを年の離れたお兄さんとしか思えなかった。

 気持ちが変化したのは、私が14歳の時で、オルドリン伯爵家で催された、アキーム様の誕生日パーティーの時だった。

 初めての社交場で緊張して会場の隅で大人しくしていた私を、同じ学園に通う男子が見つけると近寄ってきた。
 そして「気持ち悪い」「暗い」「ブス」など、嫌な言葉を投げかけてきた。

 私は学園でいじめられていたから、悪い意味で有名人だった。

 貴族の娘だというのに、オドオドしていて俯いてばかり。

 そんな態度に苛立ちを覚えるのだと、よく言われていた。

 このままじゃいけない。

 そう思った私は、勇気を振り絞って言い返したことがあった。

 でも、意地悪は酷くなるだけで、嫌なことをしてくる人が増えただけだった。
 多くの人は我関せず、もしくは自分が巻き込まれないようにと見てみぬふりをしていた。

 パーティーでは大人が多いのに、誰も助けてくれない。

 耐えることしかできなくて泣きそうになっていたところを、アキーム様が来てくれて私を助けてくれた。

 いじめられていた私の目には、意地悪をする男の子たちから助けてくれた彼が、お話に出てくるヒーローのように見えた。

 その日は、胸の高鳴りが中々おさまらなかったことを、今でもはっきりと覚えている。

 それから約5年の月日が流れ、私と彼はめでたく夫婦となった。

 結婚するまでは、二人で幸せになるのだと信じて疑わなかった。

 だって、それまでのアキーム様はとても優しくて、これからの未来についての不安なんてなかったから。

 結婚後、アキーム様から「旦那様と呼んでほしい」と言われたので、躊躇うことなく承諾した。

 結婚してからまだ40日ほどだが、旦那様と呼ぶことにも慣れてきた。

 このまま、幸せな生活が続くのだと思っていたのに、雲行きが怪しくなったのは、今思えば、結婚して二日目からだった。

 旦那様が領地の視察に行かなければいけないと旅立っていき、帰ってきても「疲れているから」と言って、会話もせずに眠るようになった。

 おかしいと思い始めていた頃、私は旦那様と、女性が密会している場面を見てしまう。

 そして、私は今回の結婚が政略結婚ではなく、旦那様を含めた家族や義家族からの嫌がらせだったことを知ることになる。
 
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