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第二部
16 王配の心情
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結局、自国の王家と電報で話し合った結果、それで気が済むなら、お子様の相手をして帰るようにとの指示が出た。
今回のお祭りは作物の豊作を祝い、そして来年の豊作も願うという目的らしいのだけれど、あまりそう言ったイメージはなく、通りには食べ物の屋台が並び、たくさんの人が食べ歩きしていて、こんなことを言ってはいけないけれど、好きなように食べて飲む、といった感じだった。
「じゃあ、私とリアムはこっちに行くから! ディールとアイリスも楽しんで!」
上機嫌でリアムの腕をつかんで、セーラ様はリアムを引きずるように歩き出す。
彼は情けない顔をして私を見ていたけれど、すぐに人混みの中に紛れてしまった。
リアムのことだから、セーラ様に誘惑されても大丈夫だとは思うけど、やっぱり複雑な気分。
だけど、これで終わりになるなら、この数時間は我慢しなくちゃ。
「マオニール公爵夫人、僕達も行こうか」
ディール殿下に声を掛けられたので頷いてから、早速、無礼かもしれないけれど、お願いしてみる。
「勝手なお願いとわかっておりますが、殿下とゆっくりお話をさせていただきたいのです。お時間いただけませんでしょうか?」
「お祭りは楽しまなくていいのかい?」
「人混みは苦手ですし、ディール殿下に何かあってもいけませんから」
「普通はそう思うんだろうな……」
ディール殿下が、どこか寂しげな笑みを浮かべてから歩き始める。
どこへ向かうのかわからなくて付いていくと、大きな酒場の中に入っていかれた。
どうしたら良いか迷っていると、ディール殿下が外に出てきて、私を手招きする。
「空いているみたいだから、おいで」
「……は、はい」
どこへ連れて行かれるかわからない不安があって躊躇していると、ディール殿下は微笑んで言う。
「君に手を出したりしないことを誓うよ。そんなことをしたら、国際問題になるだろうし、何より、君の旦那様に殺されそうだ」
「さすがにそこまではないと思いますが……。ただ、国のためには良くないでしょうね」
苦笑してから酒場の中に入っていく。
ディール殿下が慣れた感じで、酒場の奥にある扉を開くと、そこは個室になっていて、木のローテーブルに、赤色の柔らかそうな二人がけのソファーが2つ置いてあるだけの簡素な部屋だった。
部屋の前に騎士達を立たせ、扉は開けた状態でで中に入る。
男性と個室に二人きりというのはやはり良くないので、扉を開けたままにして、ディーン殿下が座ったソファーの向かい側のソファーに座る。
「何か頼もうか」
そう言われて、やって来たお店の人に飲み物を頼むと、すぐにおつまみと飲み物が運ばれてきた。
持ってきてくれた人が出て行くと、ディール殿下は口を開く。
「セーラのワガママに付き合わせて本当に申し訳ない」
そう言って頭を下げてから、ディール殿下はビールを一口飲んでから続ける。
「実は僕も、彼女が欲しがった中の一人なんだよ」
「……それはどういう?」
「セーラと出会った頃、僕には付き合っていた人がいたんだけど、セーラにアプローチされて別れたんだ。もちろん、無理矢理じゃない。セーラのことを好きになったから別れたんだけど」
「……」
なんと言葉を返したら良いのか分からなくて黙っていると、ディール殿下は悲しげな表情で、驚く発言をする。
「いきなり何の話をし始めるのかと驚いてるだろうね。……実は、セーラから君を口説くようにお願いされたんだ。もちろん、僕はそんなことをするつもりはないから安心してほしい。君に魅力がないとか、そういう訳ではない。僕にはセーラだけだからなんだ。だから、情けないけれど、話だけ聞いてもらっていいかな?」
「もちろんです」
頷くと、ディール殿下は小さく息を吐いてから、ぽつりぽつりと彼の心情を吐露し始めた。
今回のお祭りは作物の豊作を祝い、そして来年の豊作も願うという目的らしいのだけれど、あまりそう言ったイメージはなく、通りには食べ物の屋台が並び、たくさんの人が食べ歩きしていて、こんなことを言ってはいけないけれど、好きなように食べて飲む、といった感じだった。
「じゃあ、私とリアムはこっちに行くから! ディールとアイリスも楽しんで!」
上機嫌でリアムの腕をつかんで、セーラ様はリアムを引きずるように歩き出す。
彼は情けない顔をして私を見ていたけれど、すぐに人混みの中に紛れてしまった。
リアムのことだから、セーラ様に誘惑されても大丈夫だとは思うけど、やっぱり複雑な気分。
だけど、これで終わりになるなら、この数時間は我慢しなくちゃ。
「マオニール公爵夫人、僕達も行こうか」
ディール殿下に声を掛けられたので頷いてから、早速、無礼かもしれないけれど、お願いしてみる。
「勝手なお願いとわかっておりますが、殿下とゆっくりお話をさせていただきたいのです。お時間いただけませんでしょうか?」
「お祭りは楽しまなくていいのかい?」
「人混みは苦手ですし、ディール殿下に何かあってもいけませんから」
「普通はそう思うんだろうな……」
ディール殿下が、どこか寂しげな笑みを浮かべてから歩き始める。
どこへ向かうのかわからなくて付いていくと、大きな酒場の中に入っていかれた。
どうしたら良いか迷っていると、ディール殿下が外に出てきて、私を手招きする。
「空いているみたいだから、おいで」
「……は、はい」
どこへ連れて行かれるかわからない不安があって躊躇していると、ディール殿下は微笑んで言う。
「君に手を出したりしないことを誓うよ。そんなことをしたら、国際問題になるだろうし、何より、君の旦那様に殺されそうだ」
「さすがにそこまではないと思いますが……。ただ、国のためには良くないでしょうね」
苦笑してから酒場の中に入っていく。
ディール殿下が慣れた感じで、酒場の奥にある扉を開くと、そこは個室になっていて、木のローテーブルに、赤色の柔らかそうな二人がけのソファーが2つ置いてあるだけの簡素な部屋だった。
部屋の前に騎士達を立たせ、扉は開けた状態でで中に入る。
男性と個室に二人きりというのはやはり良くないので、扉を開けたままにして、ディーン殿下が座ったソファーの向かい側のソファーに座る。
「何か頼もうか」
そう言われて、やって来たお店の人に飲み物を頼むと、すぐにおつまみと飲み物が運ばれてきた。
持ってきてくれた人が出て行くと、ディール殿下は口を開く。
「セーラのワガママに付き合わせて本当に申し訳ない」
そう言って頭を下げてから、ディール殿下はビールを一口飲んでから続ける。
「実は僕も、彼女が欲しがった中の一人なんだよ」
「……それはどういう?」
「セーラと出会った頃、僕には付き合っていた人がいたんだけど、セーラにアプローチされて別れたんだ。もちろん、無理矢理じゃない。セーラのことを好きになったから別れたんだけど」
「……」
なんと言葉を返したら良いのか分からなくて黙っていると、ディール殿下は悲しげな表情で、驚く発言をする。
「いきなり何の話をし始めるのかと驚いてるだろうね。……実は、セーラから君を口説くようにお願いされたんだ。もちろん、僕はそんなことをするつもりはないから安心してほしい。君に魅力がないとか、そういう訳ではない。僕にはセーラだけだからなんだ。だから、情けないけれど、話だけ聞いてもらっていいかな?」
「もちろんです」
頷くと、ディール殿下は小さく息を吐いてから、ぽつりぽつりと彼の心情を吐露し始めた。
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