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第4章 切らなければならない縁

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 お姉様が出て行ったあと、黙っていたロビースト様が口を開く。

「シード! どうして、あんな失礼なことを言うのですか! わたくしは完璧な人間です! このわたくしの婚約者に一時でもなれたことは光栄なはずです! それなのに、勝ち組ではないなどと言うだなんて!」
「ロビースト様! きっと、野蛮な方にはロビースト様の良さがわからないんですわ!」

 ソレーヌ様がロビースト様に媚びる発言をする。
 
 この二人が上手くいってくれるのは、わたしにとっては悪いことではない。
 二人で破滅の道を歩んでくれるのが一番だけど、そうなった時には、お姉様はどうなるのかしら。

 ――もう、お姉様のことを気にする必要はないかしらね。

「大丈夫か?」

 シード様が顔を覗き込んできたので、笑顔を作る。

「はい。助けていただきありがとうございます」
「フィーナ嬢はロビーストに依存してるみてぇだな。ロビーストの何が良いのかわからん。顔が好みなんかな。それとも、自分以外に彼女を嫁にする人間なんていない的なことでも言ったのか?」
「お姉様に聞いてみないとわかりません」

 シード様はロビースト様のことを兄さんと呼ぶのはやめたらしく、さっきから呼び捨てにしてしまっている。

 それが気に食わなかったのか、ロビースト様が叫ぶ。

「シード! こんな勝手なことばかりするのであれば、わたくしはあなたに協力はしません! 縁を切りますので、あなたはもう、わたくしの弟ではありません! 今すぐこの家から出ていきなさい!」

 シード様は小さく息を吐いて、ロビースト様に応える。

「先に言われちまったな。まあいいか。今食ってるものを食い終えたら出てくわ。捨てるのもったいないしな。セフィリア、君も早く食べろ」
「はい!」
「セフィリアも連れて行って良いとは言っていません!」

 ロビースト様が言うと、シード様は眉根を寄せた。

「ふざけんなよ。お前にはソレーヌ嬢がいんだろ」
「それとこれとは別です! それに、連れて行くならフィーナを連れて行ってください!」
「嫌だよ。俺は自分の婚約者を連れて帰るだけだ。フィーナ嬢は管轄外だ」

 シード様はそこまで言ったあと、わたしのほうを見た。

「フィーナ嬢も連れて帰ってほしいか?」
「いいえ。姉はきっとここに残ることを希望するでしょうから結構です」

 子供じゃないんだもの。
 嫌になったら、自分でお父様に連絡するでしょう。

 わたしが答えると、シード様はロビースト様に顔を向ける。

「どうしても邪魔するってんなら、相手になるけど、俺に勝てんのか?」
「う、うるさい!」

 ロビースト様は焦った顔で叫ぶと、わたしを睨みつけてきた。

「絶対に後悔することになりますよ!」
「そうですわ! お兄様のことといい、ロビースト様のことといい、セフィリア様は選択肢を間違えておられます!」
「選択肢を間違えまくってんのはお前だろ」

 シード様に、わたしの言いたいことを先に言われてしまい、抗議の目を向ける。

「悪い」
「かまいませんわ」

 謝ってきたシード様に苦笑してから、ソレーヌ様に向き直って微笑む。

「ソレーヌ様、今回もいらないものを引き受けていただき、本当にありがとうございます。今度こそ幸せになってくださいませ」

 深々と頭を下げると、ソレーヌ様は鼻で笑う。

「強がらなくても良いんですよ?」
「強がってなんていませんが、そのほうが楽しいのであれば、そう思っておけば良いかと思われます」

 勝ち誇ったような顔をしているロビースト様とのソレーヌ様の前を横切り、廊下にいるマディアスとエルファに声を掛ける。

「食事を終えて荷物の整理をしたら、ここを出るわ。エルファたちも食事をして、出る準備をしてちょうだい」
「承知しました」

 エルファたちは明るい表情で返事をしてくれた。


※次の話はフィーナ(姉視点)です。
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