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8−1  親友

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「メアリーから連絡がきたんだが、俺を刺すように指示したのは、ロードウェルで間違いなさそうだ」

 エドが昼食を一緒にとる際に、メアリーからの手紙を見せてくれた。

 メアリーからの手紙にはロンバートが高熱を出してうなされている事が書かれていて、ロンバートが罪を告白している事もわかった。
 そして、オルザベートの事も。

「メアリーの書き方だと、ロンバートがエドを傷つけるようにお願いしただけで、その指示したのはオルザベートになるわよね?」
「そうなるな」
「でも、オルザベートはあなたの事を知らないはずよ。そこまで恨みを持つかしら?」
「そんな事はない」

 きっぱりとエドに否定されてしまい、私が困惑していると、エドが言葉を続ける。

「君が忘れているだけで、彼女には僕の話をしているはずだ。それに、一度、彼女と会った事もある」
「…そうなの?」

 今になって、本当に自分が何も考えていなかった事を感じさせられた。
 私の中でのエドが関わる記憶は、綺麗に消されているのだから、オルザベートにエドの話をした事がないのじゃなくて、した事を忘れてしまっているだけだという事かもしれないのに。

「でも、オルザベートから、そんな話をされた記憶もないんだけど…」
「君の両親から僕の話を聞いた事は?」
「それが、今となってはエドの事がわかるのに、その時は忘れていたって言うの」
「どういう事だ? 君の両親にも誰かが忘却魔法をかけていたって事か?」
「そうなのかもしれない。お祖父様とお祖母様も、他に魔法使いがいたみたいな事を言っていたから。でも、それは別として、オルザベートがエドと会った事を忘れる必要ってあったのかしら? オルザベートの事だから、エドの事を知っていたなら、何か言いそうなものなんだけど…」

 エドは私の言葉を聞いて、眉根を寄せた。

「君が思ってる以上に彼女は君に執着しているのかもしれない」
「エドを殺してまで、私を彼女の元に戻そうとしてたという事?」
「たぶん。僕ももっと気をつけておくべきだった」
「まさかあんな小さな子供がそんな事をするなんて思わないわよ。護衛の騎士だって、そう思ったから、あなたに近付けさせたんだと思うわ」
「その事についても考えないとな」

 エドが頭を抱えた。
 エドが刺された件で、騎士達は責任を取ると言って、辞める事になった。
 気持ちはわからないでもない。
 護衛しないといけない人間を瀕死にさせてしまったのだから。
 ただ、そのせいで、護衛騎士の人数が1チーム分、少なくなってしまった。
 代わりの護衛騎士の募集もかけなければいけない。

「友人の公爵令息から、騎士は一時期だけ借りれる事になったか、その事に関しては、犯人を捕らえる事にしてから考える事にする。まずは、ロードウェル伯爵がどう出てくるか、だな」
「そうね。ロンバートが接触したのは大人だから、いくら、はっきり顔を見ていないと言っても声や雰囲気でわかるかもしれないし、彼だと証言してもらえるかもしれないし、顔を見てもらわないと」
「まあ、まずはロードウェル伯爵の熱が下がらないと、どうしようもないかもしれないが」
「あまり高熱が続くと良くないと聞くわよね。それにしても…」

 私が暗い顔をしていると、エドが尋ねてくる。

「どうかしたのか?」
「あなたを傷付けようとしたのが、ロンバートやオルザベートだったとして、お腹の子が可哀想だと思ったの」
「…そうだな。僕が減刑を望まなければ、彼女はお腹の子供ごと処刑される。彼女が子供を生んでから処刑したとしても、父親も母親もいなくなってしまう」
「イザメル様が育てようものなら、ある事ない事を吹き込んで、私達に復讐させようとするでしょうね」

 食事をする気になれなくて、私は皿の上にフォークを置いた。

「とにかく、エアリスは何も考えなくていいよ。僕が巻き込まれた以上、僕が動きやすくなったから」
「もう、危ない事は起きない?」 
「あんなヘマはしないよ」

 また、エドが狙われたら嫌だと思って聞くと、エドが微笑んで言ってから続ける。

「あと、僕を刺した子供に関しては減刑を求める事に決めた」
「…それでいいの?」
「ああ。刺される前に彼らの生活を確認したけれど、食べる事もままならない毎日を暮らしていて、治安も悪く略奪なども当たり前だ。お金があれば、母も自分も楽になると考えたんだろう。まあ、そのお金を誰かに奪われるかもしれないという事を考えていないのも、子供だからだろうな」

 エドが目を伏せて言った時だった。
 扉が叩かれ、アズが慌てた様子で部屋に入ってきた。

「お食事中に申し訳ございません。エアリス様宛に手紙が届きまして」
「誰からなの?」
「…それが…、オルザベート・トゥッチ様からです」

 アズの答えを聞いて、私とエドは顔を見合わせた。
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