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8 ノボウ伯爵家のメイドの後悔 ①
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私がシドと一緒にセオドア様に保護されたことは、アーバネット様だけでなく、多くの貴族にも知らされた。セオドア様はこちらから理由を公にすることによって、私との間に変な噂を立てられないようにしたのだ。
思った以上に早く噂が広まったのは、ジンシ侯爵が手を回してくれたおかげらしいけど、侯爵に頼んだのはセオドア様だろう。侯爵にセオドア様の素性について聞いてみようかと思ったが、わざと隠しているのであれば、侯爵も教えてくれないだろうと判断してやめた。
それに真実を知った時に、どんな未来が待っているかがわからない。隠すと言うことは知られたくない秘密があるということ。興味本位で探ることで口封じに殺されたくない。
これからどうしようかと思いながら朝食をとっていると、隣に座るシドが尋ねてくる。
「おねえちゃん。これから、ぼくたちはどうなっちゃうのかな?」
「わからないけれど、これだけは言えるわ。シドがあの小屋に戻ることは絶対にない」
「よかった! ……でも、おかあさまのところには、もうかえれないの?」
「シドは、お母様の所に帰りたいの?」
「……わかんない」
何度も首を横に振って、悲しそうな顔をするシドを慰める。
「お母様の元に帰るか帰らないかは、あなた次第だと思う。だけど今は駄目。辛いだろうけど我慢してくれる?」
「うん。ぼく、いいこにする! だから、おねえちゃんはいっしょにいてね!」
腕にしがみついてきたシドの頭をなでると、えへへと笑った。今のシドは目を輝かせて子供らしい無邪気な姿を見せている。
私は大人なんだもの。この笑顔を守ってあげなくちゃ。シドがアリドみたいな生意気な子なら、アーバネット様に歯向かうことなんてしなかったでしょうから、そこは反省しないと駄目ね。
「できる限りは一緒にいるつもりよ」
「やくそくだよ?」
「うん」
頷いた私を見てシドは嬉しそうに笑うと、話題を変える。
「おにいちゃんはいつかえってくるの?」
お兄ちゃんというとはセオドア様のことだ。
セオドア様は仕事があるため、一度子爵家に帰り、3日後の昼にはこちらに戻ると言っていた。4日後の昼にアーバネット様たちと会うことを約束をしているから、それまでに戻ってきてくれるつもりみたいだ。
「3日後の昼には戻ってくるんだって。お仕事が忙しいみたい」
「おしごとをがんばっているから、おにいちゃんはすごいおかねもちなんだね」
「そうね。だけど、あれがほしいとかワガママを言っちゃ駄目よ」
「おなかすいたは、いってもいい?」
「それはワガママじゃないから言っていいわよ」
「んー。どれがワガママじゃないかとか、わかんないや」
子供に言っても無理なんだろうなと思っていると、シドは続ける。
「おなかすいたっていったら、おかあさまはワガママいうなっていったよ」
「……そうだったの」
お金に困って食べさせてあげられなくて、そんなことを言ってしまったなら、気持ちはわからないでもない。
だけど、ロロミナ様は離婚後、アリドたちを連れて友人の家を渡り歩いていた。全て貴族の男性だったし、食べ物に困ったことはないはずだ。
ロロミナ様が結婚式後に押しかけてきたのも、男性たちから結婚の話を聞いたからでしょう。どうせなら結婚前に来てくれればいいものをと思ったが、私からアーバネット様を奪うためにわざとそうしなかったんでしょうね。
4日後はどうしてシドに辛く当たるのか。そのことも確認して、アーバネット様に別れを告げよう。行く当てはないが、シドは面倒を見てもらえるでしょうし、自分のことは自分で何とかするわ!
気合いを入れていると、メイドが笑みを浮かべて話しかけてくる。
「お食事が終わられましたら出かけましょうか」
「……出かける?」
「はい。今日は4日後の話し合いに向けての買い物をいたしましょう!」
そういえば昨日、セオドア様は買い物の話をしてくれていた。
「話し合いのための買い物、ですか?」
「ええ。他人の夫を奪い、自分の子供を虐待する酷い女には嫌な思いをさせてあげましょう!」
意気込む彼女に連れられて行った先は、ロロミナ様が贔屓にしている仕立て屋のお店だった。
思った以上に早く噂が広まったのは、ジンシ侯爵が手を回してくれたおかげらしいけど、侯爵に頼んだのはセオドア様だろう。侯爵にセオドア様の素性について聞いてみようかと思ったが、わざと隠しているのであれば、侯爵も教えてくれないだろうと判断してやめた。
それに真実を知った時に、どんな未来が待っているかがわからない。隠すと言うことは知られたくない秘密があるということ。興味本位で探ることで口封じに殺されたくない。
これからどうしようかと思いながら朝食をとっていると、隣に座るシドが尋ねてくる。
「おねえちゃん。これから、ぼくたちはどうなっちゃうのかな?」
「わからないけれど、これだけは言えるわ。シドがあの小屋に戻ることは絶対にない」
「よかった! ……でも、おかあさまのところには、もうかえれないの?」
「シドは、お母様の所に帰りたいの?」
「……わかんない」
何度も首を横に振って、悲しそうな顔をするシドを慰める。
「お母様の元に帰るか帰らないかは、あなた次第だと思う。だけど今は駄目。辛いだろうけど我慢してくれる?」
「うん。ぼく、いいこにする! だから、おねえちゃんはいっしょにいてね!」
腕にしがみついてきたシドの頭をなでると、えへへと笑った。今のシドは目を輝かせて子供らしい無邪気な姿を見せている。
私は大人なんだもの。この笑顔を守ってあげなくちゃ。シドがアリドみたいな生意気な子なら、アーバネット様に歯向かうことなんてしなかったでしょうから、そこは反省しないと駄目ね。
「できる限りは一緒にいるつもりよ」
「やくそくだよ?」
「うん」
頷いた私を見てシドは嬉しそうに笑うと、話題を変える。
「おにいちゃんはいつかえってくるの?」
お兄ちゃんというとはセオドア様のことだ。
セオドア様は仕事があるため、一度子爵家に帰り、3日後の昼にはこちらに戻ると言っていた。4日後の昼にアーバネット様たちと会うことを約束をしているから、それまでに戻ってきてくれるつもりみたいだ。
「3日後の昼には戻ってくるんだって。お仕事が忙しいみたい」
「おしごとをがんばっているから、おにいちゃんはすごいおかねもちなんだね」
「そうね。だけど、あれがほしいとかワガママを言っちゃ駄目よ」
「おなかすいたは、いってもいい?」
「それはワガママじゃないから言っていいわよ」
「んー。どれがワガママじゃないかとか、わかんないや」
子供に言っても無理なんだろうなと思っていると、シドは続ける。
「おなかすいたっていったら、おかあさまはワガママいうなっていったよ」
「……そうだったの」
お金に困って食べさせてあげられなくて、そんなことを言ってしまったなら、気持ちはわからないでもない。
だけど、ロロミナ様は離婚後、アリドたちを連れて友人の家を渡り歩いていた。全て貴族の男性だったし、食べ物に困ったことはないはずだ。
ロロミナ様が結婚式後に押しかけてきたのも、男性たちから結婚の話を聞いたからでしょう。どうせなら結婚前に来てくれればいいものをと思ったが、私からアーバネット様を奪うためにわざとそうしなかったんでしょうね。
4日後はどうしてシドに辛く当たるのか。そのことも確認して、アーバネット様に別れを告げよう。行く当てはないが、シドは面倒を見てもらえるでしょうし、自分のことは自分で何とかするわ!
気合いを入れていると、メイドが笑みを浮かべて話しかけてくる。
「お食事が終わられましたら出かけましょうか」
「……出かける?」
「はい。今日は4日後の話し合いに向けての買い物をいたしましょう!」
そういえば昨日、セオドア様は買い物の話をしてくれていた。
「話し合いのための買い物、ですか?」
「ええ。他人の夫を奪い、自分の子供を虐待する酷い女には嫌な思いをさせてあげましょう!」
意気込む彼女に連れられて行った先は、ロロミナ様が贔屓にしている仕立て屋のお店だった。
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