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 テーブルの上に、完成した栄養ドリンクがずらっと並ぶ。
 本数は五百を超えた。
 殿下はそれを見て、素直に驚いている。

「凄いな。たった一時間と少しでこれだけ作れるのか」
「少ない素材で複数できるので、回復ポーションより簡単なんですよ」
「そういうものなのか。錬金術については詳しくないからな」
「もっと素材があれば、この十倍でも作れますが、どうしますか?」
「十倍……」

 テキトーは言っていない。
 錬金術は慣れるほど、効率が向上し錬成速度が上がる。
 五百本を作るのに一時間かかったが、最後のほうは慣れてきて十分で二百本作れるようになった。
 今なら五千本でも今日中に終わるだろう。

「いや、さすがにそこまで。まずは需要を確かめてからにしよう」
「そうですね。さっそく皆さんに配りたいです」
「ああ、俺も手伝おう。手の空いている騎士にも声をかける。この量を運ぶのは、俺たちだけじゃ無理だからな」
「ありがとうございます!」

 どうやって運ぶかは考えていなかった。
 作るのに夢中で。
 殿下の提案に甘え、手伝ってもらうことになった。
 数名の騎士がアトリエに召集され、事情を説明する。

「――というわけだ。これを建築仕事をしている人に配ろうと思う」
「かしこまりました」
「うん。あ、お前ら疲れてるか?」
「え、いえ、我々は――」
「正直に言って見ろ。眠れてないだろ? 目の下にくまがあるぞ」
「――!」

 騎士の一人が咄嗟に目元を隠した。
 隈なんて私には見えないのだけど……。
 と思っていたら、殿下がクスリと笑った。

「冗談だ。隈なんてないぞ」
「で、殿下!」
「はははっ、お前たちが素直にならないからな」
「……確かに少し疲れはあります。動ける騎士は少ないですから、常に動き回っておりますので」

 集まった三人の騎士たちは顔を合わせて同意する。
 当然ながら、この街で働いているのは大工さんたちだけじゃない。
 騎士の彼らも、見えないところで奮闘しているのだろう。

「よし、じゃあ飲んでみろ」
「え、よろしいのですか?」
「ああ、疲れている奴のために作ったんだ。そうだろ? ルミナ」
「はい! 元気になりますよ?」

 私の経験が保証している。
 自信を持って提供できる一本だ。
 私は胸を張り、笑顔でそう答えると、騎士の一人が栄養ドリンクを手に取る。
 効果は説明済みだ。
 初めてのものだから、少し緊張している?
 私は背中を押すように言う。

「どうぞ!」
「で、ではいただきます」

 そんなに仰々しく飲まなくても。
 ただの栄養ドリンクだ。
 もっとも、異世界の技術、力で作られた栄養ドリンクは一味違う。
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