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自分が働くお店、アトリエの見学。
こんなにワクワクすることはないだろう。
扉を開けるとベルがなった。
来客を告げるための仕掛けだ。
入ってすぐにショーケースや棚が並んでいる。
今は何も置いていない。
でも、想像することはできる。
ここに並ぶ商品を、自分が働く光景を。
「いい感じ」
「ここが店舗、で裏手が工房になってる」
「はい!」
案内されて裏手へ向かった。
店舗とは別の部屋があり、そこは宮廷で働いていた研究室とよく似ている。
錬金術師の職場は、大体同じような外観になるのだろう。
必要な道具は、すでに揃えられていた。
「設備は宮廷とそん色ない。ポーション用の小瓶はあるし、宮廷で使っているような素材は一部だが用意してある」
「本当だ」
薬草にハーブ、あとは肝心な水も。
他にも香草だったり、ポーションづくりに使えそうなものがある。
「ここにある物は自由に使ってくれ。実際に店舗としてオープンするのはまだ先になる。練習に使ってもいいし、残しておいても自由だ」
「自由……」
この素材なら……。
「あの、少しお待ちいただいてもよろしいですか?」
「ん? なんだ?」
「えっと、作りたい物があるんです。殿下にも見ていただきたくて」
「へぇ、面白そうだな。いいぞ」
「ありがとうございます!」
許可は頂いた。
自由にしていいなら、そうさせてもらおう。
私は王都から持ってきたカバンから、一枚の布を取り出す。
「それは?」
「使いまわせる錬成陣です。毎回書くのは大変なので」
「なるほどな。で、何の錬成陣だ?」
「ポーションです。一応くくりは回復系ですけど」
用途はちょっと違う。
私は素材を錬成陣の上に乗せて、錬金術を発動させた。
光が放たれて、素材が消失して粒子になる。
粒子は集まり、再構成されていく。
そうして一本の小瓶に入った黄色い液体が完成した。
「できました。私特性の、えーっと……栄養ドリンクです!」
「栄養ドリンク?」
上手い名前が浮かばなかった。
少しストレートすぎたかな?
でも意味合いはまさにそのままだ。
「何なんだ? 回復のポーション」
「を、より薄めて常用できるようにしたものです。滋養強壮に効果があって、疲れが溜まっている時に飲むといいんですよ」
「漢方みたいなものか?」
「はい。それより効果は高いですし、早いです」
前世の栄養ドリンクを参考にしたものだ。
効果は前世の物より優れている。
この世界には栄養ドリンクなんてものはなかったけど、激務をこなす私にとっては不可欠な相棒だった。
「いっぱい働いている人も多いですし、肉体労働の疲れにいいかなと思いまして」
「もしかして、街の連中に?」
「はい。ここにある素材だけで数百本は作れそうなので。回復ポーションより素材が少なく済むんです。もしよかったら使ってもらえると……殿下?」
殿下はキョトンとしていた。
けどすぐ、呆れたように笑って。
「はははっ、お前は最高だな」
「え? へ?」
「来てすぐに、自分じゃなくて周りのことを見ている。中々できないぞ?」
「そ、そうでしょうか」
「ああ、やっぱりお前を選んで正解だった」
殿下は私の肩をポンと叩く。
「ありがとう。有難く使わせてもらうよ」
「は、はい!」
殿下に褒められて喜ぶ私が、小瓶に反射して映っていた。
私がここに来て初めて作ったポーションもどき。
まさかこれが、後に大ヒット商品になるとは、この時は思いもしなかった。
こんなにワクワクすることはないだろう。
扉を開けるとベルがなった。
来客を告げるための仕掛けだ。
入ってすぐにショーケースや棚が並んでいる。
今は何も置いていない。
でも、想像することはできる。
ここに並ぶ商品を、自分が働く光景を。
「いい感じ」
「ここが店舗、で裏手が工房になってる」
「はい!」
案内されて裏手へ向かった。
店舗とは別の部屋があり、そこは宮廷で働いていた研究室とよく似ている。
錬金術師の職場は、大体同じような外観になるのだろう。
必要な道具は、すでに揃えられていた。
「設備は宮廷とそん色ない。ポーション用の小瓶はあるし、宮廷で使っているような素材は一部だが用意してある」
「本当だ」
薬草にハーブ、あとは肝心な水も。
他にも香草だったり、ポーションづくりに使えそうなものがある。
「ここにある物は自由に使ってくれ。実際に店舗としてオープンするのはまだ先になる。練習に使ってもいいし、残しておいても自由だ」
「自由……」
この素材なら……。
「あの、少しお待ちいただいてもよろしいですか?」
「ん? なんだ?」
「えっと、作りたい物があるんです。殿下にも見ていただきたくて」
「へぇ、面白そうだな。いいぞ」
「ありがとうございます!」
許可は頂いた。
自由にしていいなら、そうさせてもらおう。
私は王都から持ってきたカバンから、一枚の布を取り出す。
「それは?」
「使いまわせる錬成陣です。毎回書くのは大変なので」
「なるほどな。で、何の錬成陣だ?」
「ポーションです。一応くくりは回復系ですけど」
用途はちょっと違う。
私は素材を錬成陣の上に乗せて、錬金術を発動させた。
光が放たれて、素材が消失して粒子になる。
粒子は集まり、再構成されていく。
そうして一本の小瓶に入った黄色い液体が完成した。
「できました。私特性の、えーっと……栄養ドリンクです!」
「栄養ドリンク?」
上手い名前が浮かばなかった。
少しストレートすぎたかな?
でも意味合いはまさにそのままだ。
「何なんだ? 回復のポーション」
「を、より薄めて常用できるようにしたものです。滋養強壮に効果があって、疲れが溜まっている時に飲むといいんですよ」
「漢方みたいなものか?」
「はい。それより効果は高いですし、早いです」
前世の栄養ドリンクを参考にしたものだ。
効果は前世の物より優れている。
この世界には栄養ドリンクなんてものはなかったけど、激務をこなす私にとっては不可欠な相棒だった。
「いっぱい働いている人も多いですし、肉体労働の疲れにいいかなと思いまして」
「もしかして、街の連中に?」
「はい。ここにある素材だけで数百本は作れそうなので。回復ポーションより素材が少なく済むんです。もしよかったら使ってもらえると……殿下?」
殿下はキョトンとしていた。
けどすぐ、呆れたように笑って。
「はははっ、お前は最高だな」
「え? へ?」
「来てすぐに、自分じゃなくて周りのことを見ている。中々できないぞ?」
「そ、そうでしょうか」
「ああ、やっぱりお前を選んで正解だった」
殿下は私の肩をポンと叩く。
「ありがとう。有難く使わせてもらうよ」
「は、はい!」
殿下に褒められて喜ぶ私が、小瓶に反射して映っていた。
私がここに来て初めて作ったポーションもどき。
まさかこれが、後に大ヒット商品になるとは、この時は思いもしなかった。
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