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十七歳になった私は、宮廷で働く錬金術師の一人になった。
宮廷は錬金術師としての最高峰であり、選ばれることは名誉なことだった。
今までの努力が認められたようで、凄く嬉しかったことを覚えている。
ただ、喜んでいたのは私一人だった。
「どうしてあの子が先に……リエリアなら喜べたのに、不愉快だわ」
「すまない。強引にでも試験を受けさせないようにするべきだったが、それでは他の貴族たちから不審がられてしまう」
「わかっているわ。あなたを責めているわけじゃないもの」
お父様とお義母様は、私よりリエリアお姉様に期待していた。
だから私が先に宮廷入りしたことを、まったく喜んではくれなかった。
お姉様自身も同じだ。
「勘違いするんじゃないわよ! あなたのほうが優秀だったわけじゃないわ! 私が錬金術の勉強を始めたのはつい最近よ? あなたはずっとやっていたでしょう? やることもなかったものね? だから先に受かっただけ! 同じ条件なら、私がずっと前に試験を受けて合格していたわ!」
お姉様にも私と同じく、錬金術師の才能があった。
酷い言いがかりだけど、彼女の発言がまったく嘘という訳ではないだろう。
現に、彼女が錬金術を本格的に学んだのは十歳を超えたあたりからだ。
私より五年も遅く始めたのに、みるみる内に成長して、私が宮廷入りした半年後には、彼女も宮廷入りを達成した。
才能だけで言うなら、私よりもお姉様のほうが上なのかもしれない。
当然、お姉様が合格した時は、二人ともすごく喜んでいた。
「さすが私たちの娘ね」
「ああ、自慢の娘だ!」
「ありがとうございます! お義父様! お母様!」
「……」
――私は?
私はあなたの娘じゃないの?
お父様……。
今は家族じゃないんですか?
お義母様……。
一緒に喜んではくれないの?
お姉様……。
どこまで行っても、この人たちは他人なんだと。
この頃の私の心を支えてくれたのは、婚約者になったばかりの彼だった。
「こんにちは、ルミナ」
「――! こんにちは、ゼオリオ様」
ゼオリオ・マーベル侯爵子息。
次期候爵家の当主になる彼は、私が宮廷入りした際に知り合い、婚約することになった。
貴族としての身分は私のほうが上だったこともあり、最初から丁寧に接してくれて、私のことをちゃんと女性として扱ってくれた。
彼は優しかった。
私のことを見てくれていた。
「君と出会えたことは運命だったよ。この出会いに感謝している」
「はい。私もです」
一人でいいんだ。
私のことを見てくれる人がいてくれたらそれで……。
頑張ろうと思える。
自分だけのために生きるのは寂しい。
誰かと一緒にいたい。
誰かのために頑張るほうが、私はより力を出せる気がした。
けれど、幸せなのは最初の一年ほどだった。
厳密にはもっと短かっただろう。
明確な変化が訪れたのは、お姉様が宮廷入りしてからだった。
「ルミナ、この仕事もお願いね」
「え、でもこれ、お姉様に任されたお仕事じゃ……」
「私は他のことで忙しいのよ。あなたはこれしか取柄がないんだから、私の代わりに全部やっておいてちょうだい」
「……」
「いいわね?」
「……はい」
宮廷入りして間もなくして、お姉様は自分の仕事を私に押し付けるようになった。
私がお姉様の分のお仕事もしている間、お姉様はパーティーに参加したり、出会った男性と仲良くしたり、好き勝手に振舞っていた。
貴族としての地位もあり、宮廷入りした錬金術師としての才能もある。
加えて女性目線からでも美しい容姿は、多くの男性貴族を魅了し、言い寄る男性は数知れず。
お姉様は婚約者を選ぶのが大変だと言っていた。
「見なさいルミナ、こんなにもプレゼントをもらってしまったわ」
「……よかったですね、お姉様」
「ええ、あなたにも一つくらい分けてあげましょうか?」
「いえ……お姉様が貰ったものですので」
「そうね。あなたにはどれも似合わないわ」
「あはは……」
よく男性にプレゼントされたものを見せびらかしてきた。
別に羨ましいとは一切思わない。
どれだけ多くの男性に言い寄られようと、大切なのは心を通じ合わせた一人だけ。
その一人が、私のことを見てくれていればいい。
そう思っていたのに……。
宮廷は錬金術師としての最高峰であり、選ばれることは名誉なことだった。
今までの努力が認められたようで、凄く嬉しかったことを覚えている。
ただ、喜んでいたのは私一人だった。
「どうしてあの子が先に……リエリアなら喜べたのに、不愉快だわ」
「すまない。強引にでも試験を受けさせないようにするべきだったが、それでは他の貴族たちから不審がられてしまう」
「わかっているわ。あなたを責めているわけじゃないもの」
お父様とお義母様は、私よりリエリアお姉様に期待していた。
だから私が先に宮廷入りしたことを、まったく喜んではくれなかった。
お姉様自身も同じだ。
「勘違いするんじゃないわよ! あなたのほうが優秀だったわけじゃないわ! 私が錬金術の勉強を始めたのはつい最近よ? あなたはずっとやっていたでしょう? やることもなかったものね? だから先に受かっただけ! 同じ条件なら、私がずっと前に試験を受けて合格していたわ!」
お姉様にも私と同じく、錬金術師の才能があった。
酷い言いがかりだけど、彼女の発言がまったく嘘という訳ではないだろう。
現に、彼女が錬金術を本格的に学んだのは十歳を超えたあたりからだ。
私より五年も遅く始めたのに、みるみる内に成長して、私が宮廷入りした半年後には、彼女も宮廷入りを達成した。
才能だけで言うなら、私よりもお姉様のほうが上なのかもしれない。
当然、お姉様が合格した時は、二人ともすごく喜んでいた。
「さすが私たちの娘ね」
「ああ、自慢の娘だ!」
「ありがとうございます! お義父様! お母様!」
「……」
――私は?
私はあなたの娘じゃないの?
お父様……。
今は家族じゃないんですか?
お義母様……。
一緒に喜んではくれないの?
お姉様……。
どこまで行っても、この人たちは他人なんだと。
この頃の私の心を支えてくれたのは、婚約者になったばかりの彼だった。
「こんにちは、ルミナ」
「――! こんにちは、ゼオリオ様」
ゼオリオ・マーベル侯爵子息。
次期候爵家の当主になる彼は、私が宮廷入りした際に知り合い、婚約することになった。
貴族としての身分は私のほうが上だったこともあり、最初から丁寧に接してくれて、私のことをちゃんと女性として扱ってくれた。
彼は優しかった。
私のことを見てくれていた。
「君と出会えたことは運命だったよ。この出会いに感謝している」
「はい。私もです」
一人でいいんだ。
私のことを見てくれる人がいてくれたらそれで……。
頑張ろうと思える。
自分だけのために生きるのは寂しい。
誰かと一緒にいたい。
誰かのために頑張るほうが、私はより力を出せる気がした。
けれど、幸せなのは最初の一年ほどだった。
厳密にはもっと短かっただろう。
明確な変化が訪れたのは、お姉様が宮廷入りしてからだった。
「ルミナ、この仕事もお願いね」
「え、でもこれ、お姉様に任されたお仕事じゃ……」
「私は他のことで忙しいのよ。あなたはこれしか取柄がないんだから、私の代わりに全部やっておいてちょうだい」
「……」
「いいわね?」
「……はい」
宮廷入りして間もなくして、お姉様は自分の仕事を私に押し付けるようになった。
私がお姉様の分のお仕事もしている間、お姉様はパーティーに参加したり、出会った男性と仲良くしたり、好き勝手に振舞っていた。
貴族としての地位もあり、宮廷入りした錬金術師としての才能もある。
加えて女性目線からでも美しい容姿は、多くの男性貴族を魅了し、言い寄る男性は数知れず。
お姉様は婚約者を選ぶのが大変だと言っていた。
「見なさいルミナ、こんなにもプレゼントをもらってしまったわ」
「……よかったですね、お姉様」
「ええ、あなたにも一つくらい分けてあげましょうか?」
「いえ……お姉様が貰ったものですので」
「そうね。あなたにはどれも似合わないわ」
「あはは……」
よく男性にプレゼントされたものを見せびらかしてきた。
別に羨ましいとは一切思わない。
どれだけ多くの男性に言い寄られようと、大切なのは心を通じ合わせた一人だけ。
その一人が、私のことを見てくれていればいい。
そう思っていたのに……。
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