何となく『惚れ薬』を錬金したら成功したわけですが、うっかり飲んだ女嫌いの王子様に溺愛されるようになりました

日之影ソラ

文字の大きさ
4 / 5

4.ドキドキが止まらない

しおりを挟む
 彼を見ていると、ドキドキが止まらない。
 でも、だからこそ名残惜しい。
 きっとこうして話してくれるのも今だけだ。
 効果がキレれば、またいつも通りに戻る。
 殿下は女嫌いで、私は一人ぼっちのままこの部屋で過ごす。
 
 ならもう一度……ううん、それで良い。
 薬の効果に頼っても、殿下に迷惑をかけるだけだから。
 一時でも、私のことを褒めてくれただけで十分だ。

 そう思って納得した。
 いや、納得させた。
 私がこれ以上、殿下のことを考えてしまわないように。

 それなのに……

「邪魔をするぞ、ユーリア」

 翌日も。

「今日は特に調子がよくない。休む時間をくれるか?」

 翌々日も。

「今日は……特にないが、休ませてくれると助かる」

 そのさらに次の日も、殿下は私の研究室にやってきた。
 おかしい。
 惚れ薬の効果はもっても一日が限界だったはず。
 もうとっくに効果切れだ。
 それでも殿下は毎日、私の元を訪れる。
 他愛のない話をしたり、お互いのことを話したり。
 何気ない時間を過ごしにやってくる。

 語り合ううちに、接し合ううちに、殿下の人柄がわかるようになってきた。
 王城での殿下の評判はあまり良くない。
 女嫌いという点を除いても、他人と深く関わらず、愛想笑いすらしないことで有名だった。
 取り入ろうとする多くの者が諦めてしまうほど、殿下は冷たく孤独を愛する人だと。
 私もそう思っていた。
 でも実際はおしゃべりで、少ないけど笑顔も見せてくれる。
 私の話だってちゃんと聞いてくれて、努力を認めてくれる優しさがある。
 何だか時を過ごすうちに、私のほうが殿下に惹かれていくようで。

 だからこそ、今のままは駄目だと思ったんだ。
 惚れ薬なんて卑怯な手で、殿下の心を引こうなんて。
 そんなことしちゃいけない。
 優しい殿下を裏切る行為だ。

「あ、あの殿下! 私は殿下に謝らないといけません」
「ユーリア? 突然どうしたんだ?」
「私、殿下に嘘をついていました」
「嘘……?」

 責められるのは怖かった。
 嫌われてしまうことは予想できる。
 それでも言うべきだと思って、私はあの日のことを打ち明けた。
 殿下が飲んだのは回復ポーションじゃないくて、私が気まぐれで作った惚れ薬だということを。
 こうして殿下が私を気にかけてくれるのは、すべてその効果なのだと。

「なるほど、惚れ薬か」
「申し訳ありません、殿下。私は殿下の気持ちを……」
「そうか。ようやく合点がいった」
「……え?」

 怒られると思っていた。
 怒られてしかるべき行いだ。
 にも関わらず、真実を知った殿下の表情は、どこか楽しそうだったんだ。

「いや最初から不思議だとは思っていた。あのポーションを飲んでから急に君のことが気になり始めて、気づけば君のことばかり考えていたんだ。翌日も続いて、私はここへ足を運んだ。だがその日以降、徐々に気持ちは落ち着いてきた」
「そ、それは効果が薄れてきたのだと思います。あれは一時的なもので」
「そうなのだろうな。現に翌日、君と話している中で冷静になったよ。あくまで一時の効果なのだな」
「はい。ですから……」

 私は気づく。
 殿下の話通りなら、効果はとっくにきれていたことになる。
 しかも翌日にはもう。
 だったらどうして、今日まで殿下はここに足を運ばれたんだ?
 あの時の自分がおかしいと気づいていたのに。

「どうして……殿下は今日もここに?」
「ふっ、ユーリア、君はどうして俺が女嫌いになったか知っているか?」
「い、いえ」

 様々な噂は流れている。
 しかし本当のことを知っている人はいない。
 私も首を横に振ると、殿下が答える。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

『これも「ざまぁ」というのかな?』完結 - どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな・他

こうやさい
ファンタジー
 短い話を投稿するのが推奨されないということで、既存のものに足して投稿することにしました。  タイトルの固定部分は『どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな・他』となります。  タイトルやあらすじのみ更新されている場合がありますが、本文は近いうちに予約投稿されるはずです。  逆にタイトルの変更等が遅れる場合もあります。  こちらは現状 ・追放要素っぽいものは一応あり ・当人は満喫している  類いのシロモノを主に足していくつもりの短編集ですが次があるかは謎です。  各話タイトル横の[]内は投稿時に共通でない本来はタグに入れるのものや簡単な補足となります。主観ですし、必ず付けるとは限りません。些細な事に付いているかと思えば大きなことを付け忘れたりもします。どちらかといえば注意するため要素です。期待していると肩透かしを食う可能性が高いです。  あらすじやもう少し細かい注意書き等は公開30分後から『ぐだぐだ。(他称)』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/878859379)で投稿されている可能性があります。よろしければどうぞ。 URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/750518948

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

知りませんでした?私再婚して公爵夫人になりました。

京月
恋愛
学生時代、家の事情で士爵に嫁がされたコリン。 他国への訪問で伯爵を射止めた幼馴染のミーザが帰ってきた。 「コリン、士爵も大変よね。領地なんてもらえないし、貴族も名前だけ」 「あらミーザ、知りませんでした?私再婚して公爵夫人になったのよ」 「え?」

処理中です...