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最終章「悪役令嬢は卒業!って、世の中そんなに甘くない⁉︎」
③
しおりを挟む「六年生は、夏休み中も、いろいろな行事があります。熱中症などに気を付けながら、宿題やその他の課題にも、積極的に取り組んで……」
帰りのホームルームで、上川先生がメガネのブリッジをくいくいしながら、説明する。
「夏休みかぁ……」
わたしは手元の「夏休みのしおり」を見つめながら、ポソッと呟いた。
宿題はまぁ、なんとかなる。わたしって意外と、そういうところはちゃんとしてるんだよね。テストは平気ど真ん中だけど。
お兄ちゃんが、見た目あんななのに頭良くて、やたらとわたしのカテイキョーシをやりたがる。それが毎年、助かるようなめんどくさいような。
でも夏休みになったら、お父さんたちの作業してるところを見学し放題だから、今からワクワクしてるんだよね。もちろん、ジャマにならないように、遠くからこっそりだけどさ。
「……さん」
お父さん、木材にもめちゃくちゃこだわってて、特に大黒柱なんかは、木材屋さんに着いて一緒に森に行っちゃうこともある。すごいよね、そういう《職人のコダワリ》ってやつ。
「……日さん……朝日…ん……おい、おいって!」
今年はわたしも、一緒に連れてってもらえないかなー。ムリかな、やっぱり。でも行きたいなー、森っていいよなー。
「いいかげん目を覚ませ朝日麗!」
ペシッ!
「い、いた!」
「痛くないように叩いかたら痛くない!」
「そ、それはどうもありがとう?」
「フン!」
気が付いたら、もう教室には誰もいない。ウソでしょ、わたしずっと夏休みの妄想してたの⁉︎
「今ちょっと、自分で自分がこわいかも……」
「おれはとっくに気付いてたけどね」
「ん?」
今、ちょっと失礼なこと言われた気がするけど、気のせい?
「ありがとう、夕日ヶ丘君!」
「そのまま放っといたら、朝までいそうだったし」
「それはさすがに」
アハハッて笑ったけど、夕日ヶ丘君の目は本気だった。ウソ、わたしそんなにヤバい⁉︎
「あれそういえば今日は南さん、いないね?」
あの勝負の日以降、わたしと夕日ヶ丘君が話そうとすると、大体南さんがいる。真っ赤になったほっぺたを思いっきりふくらませて、わたしに向かって怒ってる。
「ああ、うん。南さんはね、もう帰ったんじゃない?」
「ふぅん?そうなんだ」
「それより、なんでそんなにボーッとしてたの?」
わたしに質問する夕日ヶ丘君の手には、クルッと丸まった「夏休みのしおり」が握られてる。あ、わたしそれでペシッとされたのか。
「夏休みのこと考えてたんだ!」
「えっ、朝日さんに予定ってあるの⁉︎」
「失礼な!わたしにだって予定くらいありますよ!」
わたしの言葉に、夕日ヶ丘君は目をまん丸にする。
「クラスの誰かと?」
「違うよ、お父さんたちの仕事を見に行くんだ!こっそり、ジャマしないように、だけどね!」
ふふん!って胸を張ったのに、なんでか思いっきりため息つかれた。
「なんで⁉︎」
「いや、別に?」
んん?その顔はどういう意味なんだろう。呆れてるでもない、怒ってるでもない、うらやましがってるでもない……?
「……ちょっと安心しただけ」
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「なんでもないって!」
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