36 / 44
第六章「彼のトナリをかけたタイマン勝負⁉︎の前に嫌われちゃった⁉︎」
③
しおりを挟む
勝負って言ったらまず思い浮かべるのは、タイマンのガチンコバトル。どっちかが立てなくなるまで、熱く苦しい勝負は続く。って、まさかそんなわけない。お兄ちゃんの持ってるヤンキーマンガの見過ぎかな?気を付けなきゃ。
南さんに言われた勝負の内容は、ズバリ「みんなの前で作文読んでどっちがハクシュ多いでしょう!」対決。分かりやすいような分かりにくいような、どっちともいえない感じ。あ、ごめん南さん。
イベント盛りだくさんな一学期も、あっという間にもう終わる。夏休みに入る前に、この学期を振り返っての感想発表、みたいなことをするらしい。みんなで書いて、発表するのは希望者数名。そこを、対決の場にするって南さんが決めた。
そして、それが今日。帰りの会の時にあるってわけ。
まぁ、どう考えても不利だよね。かわいくて好かれてる南さんと、悪役でこわがられてるわたし。しかもみんなの前に立って発表するのとか、めちゃくちゃ苦手だし。
でも、勝負を受けるって決めたのは自分自身。それにこれは、いいチャンスかもしれない。わたしの素直な気持ちを、みんなに伝えるいいチャンス。
「みんなに……?」
ホントに、そう思ってる?伝えたいのはみんなじゃなくて、わたしは……。
パチッ
夕日ヶ丘君と目が合ったけど、思いっきりそらされた。それはもう、プイッ!って音が聞こえそうなくらい、分かりやすく。
「うう……痛い……」
彼としゃべれなくなることが、こんなに辛いとは思わなかった。体の真ん中がズキズキして、気を抜くと立ってられなくなる。
今まで、こわがられたりいやがられたりしても、ここまで悲しい気持ちにはならなかったのに。
「今から、立候補してくれた人数名に作文を発表してもらおうと思います。まずはえっと……あさ」
「は、はい!わたしからお願いします!」
出席番号順だと思ってたから、一番手はわたしだと思ってた。心臓飛び出そうなくらい緊張してたけど、上川先生が名前を呼ぶ前に、南さんが手をあげた。
「は、恥ずかしいけど……どうしてもがんばりたいから!」
今日も小さくてふわふわでかわいい南さんは、ほっぺたをピンク色に染めながら、上目遣いで夕日ヶ丘君を見つめてる。
夕日ヶ丘君は笑ってて、わたしの時みたいにプイッてしない。
あ、ダメだ。泣いちゃう、ダメダメ。見ないようにしなきゃ。
「では南さんから、お願いします」
「はい……っ」
かわいい子が緊張してるのって、ますますかわいく見えるよね。守ってあげたいっていうか、応援したくなるっていうか。
「一学期を振り返って。わたしは、小学校生活最後が、この華組で本当に良かったと思っています。どうしてかというと……」
南さんって、声まで天使。ていうか、作文の内容もめちゃくちゃしっかりしてるし、楽しかったこととか、友達と協力したこととか、二学期に向けての目標とか。上手くまとまってて、聞きやすくて、ちょうどいい長さ。みんな、しっかり耳を傾けてるのが分かる。
「大好きな人たちとの時間を、これからも大切にしていきたいです」
パチパチパチ!!
終わった瞬間、たくさんの拍手の音。そりゃそうだよね、わたしも思いっきり手叩いちゃったし。南さん、上手だった。うん、すごいし尊敬する。
南さんに言われた勝負の内容は、ズバリ「みんなの前で作文読んでどっちがハクシュ多いでしょう!」対決。分かりやすいような分かりにくいような、どっちともいえない感じ。あ、ごめん南さん。
イベント盛りだくさんな一学期も、あっという間にもう終わる。夏休みに入る前に、この学期を振り返っての感想発表、みたいなことをするらしい。みんなで書いて、発表するのは希望者数名。そこを、対決の場にするって南さんが決めた。
そして、それが今日。帰りの会の時にあるってわけ。
まぁ、どう考えても不利だよね。かわいくて好かれてる南さんと、悪役でこわがられてるわたし。しかもみんなの前に立って発表するのとか、めちゃくちゃ苦手だし。
でも、勝負を受けるって決めたのは自分自身。それにこれは、いいチャンスかもしれない。わたしの素直な気持ちを、みんなに伝えるいいチャンス。
「みんなに……?」
ホントに、そう思ってる?伝えたいのはみんなじゃなくて、わたしは……。
パチッ
夕日ヶ丘君と目が合ったけど、思いっきりそらされた。それはもう、プイッ!って音が聞こえそうなくらい、分かりやすく。
「うう……痛い……」
彼としゃべれなくなることが、こんなに辛いとは思わなかった。体の真ん中がズキズキして、気を抜くと立ってられなくなる。
今まで、こわがられたりいやがられたりしても、ここまで悲しい気持ちにはならなかったのに。
「今から、立候補してくれた人数名に作文を発表してもらおうと思います。まずはえっと……あさ」
「は、はい!わたしからお願いします!」
出席番号順だと思ってたから、一番手はわたしだと思ってた。心臓飛び出そうなくらい緊張してたけど、上川先生が名前を呼ぶ前に、南さんが手をあげた。
「は、恥ずかしいけど……どうしてもがんばりたいから!」
今日も小さくてふわふわでかわいい南さんは、ほっぺたをピンク色に染めながら、上目遣いで夕日ヶ丘君を見つめてる。
夕日ヶ丘君は笑ってて、わたしの時みたいにプイッてしない。
あ、ダメだ。泣いちゃう、ダメダメ。見ないようにしなきゃ。
「では南さんから、お願いします」
「はい……っ」
かわいい子が緊張してるのって、ますますかわいく見えるよね。守ってあげたいっていうか、応援したくなるっていうか。
「一学期を振り返って。わたしは、小学校生活最後が、この華組で本当に良かったと思っています。どうしてかというと……」
南さんって、声まで天使。ていうか、作文の内容もめちゃくちゃしっかりしてるし、楽しかったこととか、友達と協力したこととか、二学期に向けての目標とか。上手くまとまってて、聞きやすくて、ちょうどいい長さ。みんな、しっかり耳を傾けてるのが分かる。
「大好きな人たちとの時間を、これからも大切にしていきたいです」
パチパチパチ!!
終わった瞬間、たくさんの拍手の音。そりゃそうだよね、わたしも思いっきり手叩いちゃったし。南さん、上手だった。うん、すごいし尊敬する。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
怪談掃除のハナコさん
灰色サレナ
児童書・童話
小学校最後の夏休み……皆が遊びに勉強に全力を注ぐ中。
警察官の両親を持つしっかり者の男の子、小学6年生のユウキはいつでも一緒の幼馴染であるカコを巻き込んで二人は夏休みの自由研究のため、学校の不思議を調べ始める。
学校でも有名なコンビである二人はいつもと変わらずはしゃぎながら自由研究を楽しむ……しかし、すすり泣くプール、踊る人体模型、赤い警備員……長い学校の歴史の裏で形を変える不思議は……何にも関係ないはずの座敷童の家鳴夜音、二次動画配信者として名を馳せる八尺様を巻き込んで、本物の不思議を体験することになった。
学校の担任や校長先生をはじめとする地域の大人が作り上げた創作不思議、今の世に発祥した新しい怪異、それを解明する間にユウキとカコは学校の最後のにして最初の不思議『怪談掃除のハナコさん』へと至る。
学校の不思議を舞台に紡がれるホラーコメディ!
この夏の自由研究(読書感想文)にどうですか?
菊池兄弟のいそがしい一年 ―妖怪退治、はじめました!―
阿々井 青和
児童書・童話
明日誕生日を迎える菊池和真(きくちかずま)は学校の帰り道に口さけ女に襲われた。
絶体絶命と思われたその時、颯兄こと兄の颯真(そうま)が助けに入り、どうにかピンチを乗り切った。
が、そこで知らされる菊池家の稼業の話。
しゃべるキツネのぬいぐるみに、妖怪を呼べる巻物、さらに都市伝説とバトルって何!?
本が好き以外は至って平凡な小学二年生の和真は、どんどん非現実な世界へと足を踏みこんで行くことになり……?
これは小さな町を舞台に兄弟が繰り広げる、現代の妖怪退治の記録である。
落ちこぼれ魔女・火花の魔法改革!〜孤独なマーメイドと海の秘宝〜
朱宮あめ
児童書・童話
火花は天真爛漫な魔女の女の子。
幼なじみでしっかり者のノアや、臆病だけど心優しい親友のドロシー、高飛車なダリアンたちと魔法学校で立派な魔女を目指していた。
あるとき、授業の一環で魔女にとって魔法を使うための大切な燃料『星の原石』を探しに行くことに。
火花とドロシーが選んだのは、海の中にある星の原石。
早速マーメイドになって海の中を探検しながら星の原石を探していると、火花は不思議な声を聴く。
美しくも悲しい歌声に、火花は吸い寄せられるように沈没船へ向かう。
かくして声の主は、海の王国アトランティカのマーメイドプリンセス・シュナであった。
しかし、シュナの声をドロシーは聴くことができず、火花だけにしか届かないことが発覚。
わけを聞くと、シュナは幼い頃、海の魔女・グラアナに声を奪われてしまったのだという。
それを聞いた火花は、グラアナからシュナの声を取り戻そうとする。
海の中を探して、ようやくグラアナと対峙する火花。
しかし話を聞くと、グラアナにも悲しい過去があって……。
果たして、火花はシュナの声を取り戻すことができるのか!?
家族、学校、友達、恋!
どんな問題も、みんなで力を合わせて乗り越えてみせます!
魔女っ子火花の奇想天外な冒険譚、ここに誕生!!
大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。
takemot
児童書・童話
薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。
「シチュー作れる?」
…………へ?
彼女の正体は、『森の魔女』。
誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。
そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。
どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。
「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」
「あ、さっきよりミルク多めで!」
「今日はダラダラするって決めてたから!」
はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。
子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。
でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。
師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。
表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。
わたしたちの恋、NGですっ! ~魔力ゼロの魔法少女~
立花鏡河
児童書・童話
【第1回きずな児童書大賞】奨励賞を受賞しました!
応援して下さった方々に、心より感謝申し上げます!
「ひさしぶりだね、魔法少女アイカ」
再会は突然だった。
わたし、愛葉一千花は、何の取り柄もない、フツーの中学二年生。
なじめないバスケ部をやめようかと悩みながら、掛けもちで園芸部の活動もしている。
そんなわたしには、とある秘密があって……。
新入生のイケメン、乙黒咲也くん。
わたし、この子を知ってる。
ていうか、因縁の相手なんですけどっ!?
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
わたしはかつて、魔法少女だったんだ。
町をねらう魔物と戦う日々――。
魔物のリーダーで、宿敵だった男の子が、今やイケメンに成長していて……。
「意外とドジですね、愛葉センパイは」
「愛葉センパイは、おれの大切な人だ」
「生まれ変わったおれを見てほしい」
★*゚*☆*゚*★*゚*☆*゚*★
改心した彼が、わたしを溺愛して、心をまどわせてくる!
光と闇がまじりあうのはキケンです!
わたしたちの恋愛、NGだよね!?
◆◆◆第1回きずな児童書大賞エントリー作品です◆◆◆
表紙絵は「イラストAC」様からお借りしました。
カラダラッパー!
青西瓜(伊藤テル)
児童書・童話
過去の経験から目立たないように生きていくことにした主人公・月野翔太のクラスに『カラダラッパー』を初手で名乗る・朝倉アタルという転校生がやって来た。
あんなヤツにはなりたくないと思いながらアタルのことを見ていた翔太だが、ひょんなことからアタルに「どこに何の教室があるか紹介してほしい」と頼まれて、まあ別にいいかと思い、学校の紹介をすることに。
そこで翔太のリアクションから察し、翔太が曲作りをしていることをアタルが言い当てる。
アタルはなんとか頼み込んで、曲を聞かせてもらい、アタルは「カラダラッパーのDJになって」と懇願する。
そこで翔太が過去に歌のコンテストで恥をかいて、目立つことをしたくなくなったと言う。
しかしアタルはめげず説得すると、クラスメイトたちには秘密で一緒に活動することに。
オタわん〜オタクがわんこ系イケメンの恋愛レッスンをすることになりました〜
石丸明
児童書・童話
豊富な恋愛知識をもち、友人からアネゴと呼ばれる主人公、宮瀬恭子(みやせきょうこ)。けれどその知識は大好きな少女漫画から仕入れたもので、自身の恋愛経験はゼロ。
中二で同じクラスになった、みんなのアイドル的存在である安達唯斗(あだちゆいと)から、好きな人と仲良くなるための「恋愛レッスン」をして欲しいと頼まれ、断りきれず引き受ける。
唯斗はコミュニケーション能力が高く、また気遣いもできるため、恭子に教えられることは特になかった。それでも練習として一緒に下校などするうちに、二人は仲を深めていった。
恭子は、あどけない唯斗のことを「弟みたい」だと感じ、惹かれていくが……。
左左左右右左左 ~いらないモノ、売ります~
菱沼あゆ
児童書・童話
菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。
『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。
旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』
大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる