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第六章「彼のトナリをかけたタイマン勝負⁉︎の前に嫌われちゃった⁉︎」

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 勝負って言ったらまず思い浮かべるのは、タイマンのガチンコバトル。どっちかが立てなくなるまで、熱く苦しい勝負は続く。って、まさかそんなわけない。お兄ちゃんの持ってるヤンキーマンガの見過ぎかな?気を付けなきゃ。
 南さんに言われた勝負の内容は、ズバリ「みんなの前で作文読んでどっちがハクシュ多いでしょう!」対決。分かりやすいような分かりにくいような、どっちともいえない感じ。あ、ごめん南さん。
 イベント盛りだくさんな一学期も、あっという間にもう終わる。夏休みに入る前に、この学期を振り返っての感想発表、みたいなことをするらしい。みんなで書いて、発表するのは希望者数名。そこを、対決の場にするって南さんが決めた。
 そして、それが今日。帰りの会の時にあるってわけ。
 まぁ、どう考えても不利だよね。かわいくて好かれてる南さんと、悪役でこわがられてるわたし。しかもみんなの前に立って発表するのとか、めちゃくちゃ苦手だし。
 でも、勝負を受けるって決めたのは自分自身。それにこれは、いいチャンスかもしれない。わたしの素直な気持ちを、みんなに伝えるいいチャンス。
「みんなに……?」
 ホントに、そう思ってる?伝えたいのはみんなじゃなくて、わたしは……。
 
パチッ
 
 夕日ヶ丘君と目が合ったけど、思いっきりそらされた。それはもう、プイッ!って音が聞こえそうなくらい、分かりやすく。
「うう……痛い……」
 彼としゃべれなくなることが、こんなに辛いとは思わなかった。体の真ん中がズキズキして、気を抜くと立ってられなくなる。
 今まで、こわがられたりいやがられたりしても、ここまで悲しい気持ちにはならなかったのに。
 
「今から、立候補してくれた人数名に作文を発表してもらおうと思います。まずはえっと……あさ」
「は、はい!わたしからお願いします!」
 出席番号順だと思ってたから、一番手はわたしだと思ってた。心臓飛び出そうなくらい緊張してたけど、上川先生が名前を呼ぶ前に、南さんが手をあげた。
「は、恥ずかしいけど……どうしてもがんばりたいから!」
 今日も小さくてふわふわでかわいい南さんは、ほっぺたをピンク色に染めながら、上目遣いで夕日ヶ丘君を見つめてる。
 夕日ヶ丘君は笑ってて、わたしの時みたいにプイッてしない。
 あ、ダメだ。泣いちゃう、ダメダメ。見ないようにしなきゃ。
「では南さんから、お願いします」
「はい……っ」
 かわいい子が緊張してるのって、ますますかわいく見えるよね。守ってあげたいっていうか、応援したくなるっていうか。
「一学期を振り返って。わたしは、小学校生活最後が、この華組で本当に良かったと思っています。どうしてかというと……」
 南さんって、声まで天使。ていうか、作文の内容もめちゃくちゃしっかりしてるし、楽しかったこととか、友達と協力したこととか、二学期に向けての目標とか。上手くまとまってて、聞きやすくて、ちょうどいい長さ。みんな、しっかり耳を傾けてるのが分かる。
「大好きな人たちとの時間を、これからも大切にしていきたいです」
 
パチパチパチ!!
 
終わった瞬間、たくさんの拍手の音。そりゃそうだよね、わたしも思いっきり手叩いちゃったし。南さん、上手だった。うん、すごいし尊敬する。
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