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第四章「かわいいはセイギ!彼のやさしさと、ちょっとのイヘン⁉︎」

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それから交流会はあっという間に終わった。途中でお面を外すと夢が壊れちゃうから、ずっとつけたまま。クラスメイトはみにふわちゃんがわたしだってたぶん気付いてたと思う。だって、誰からも話しかけられなかったしね。
 でも、いいんだ。ホントに、学校のイベントがこんなに楽しいって思えたの、初めてだったから。あ、でも。給食の時間はちょっと大変だったけどね。こっそりお面外したら、子どもたちが「みにふわちゃんどこいった?」って探し出したから、めちゃくちゃ急いで食べて、またみにふわちゃんに変身したし。
「あー、つかれた!」
「でも、みんなかわいかったね」
「ねー、いやされたね」
 放課後、交流会の片付け。わたしはいつもの悪役令嬢に戻って、ただもくもくと手を動かす。さすがに、子どもたちが帰った今は、お面つける勇気ない。
「でも朝日さん、あの作戦はナイスだったよな!」
 夕日ヶ丘君のお友だち、西山君。彼も華組のムードメーカーで、みんなから好かれるいじられキャラ。わたしのことを面と向かって「悪役」って言ったりする、勇気(?)の持ち主。最近、チラチラッと話しかけてくれるようになったような、そうでもないような。
「お面のおかげで、子どもたち泣かなかったし、めちゃくちゃよろこんでたしさ!」
 西山君。それはわたしがみにふわちゃんしゃなかったら、泣かれて大さわぎだったってことですか?
「すごいじゃん、朝日さん!」
「そうかな」
 せっかく話しかけてくれたのに、なんてそっけない返事!麗のバカ!
でも、家族以外にほめられたことなんかないから、恥ずかしくてどうしたらいいのか分かんない。それにあれは、わたしじゃなくて夕日ヶ丘君のアイディアだし。彼のお手柄を、横取りするような真似はいやだ。ああ、ハッキリ「すごいのは夕日ヶ丘君だよ!」って言えないのがモヤモヤする。
「この間の遠足の時も思ったけど、朝日さんちょっとフンイキ変わった?あ、髪切ったとか!」
「いや、切ってないけど……」
「じゃあ、なにしたの?」
「べ、別になにも……」
 なんだろう、身長伸びたからかな?それとも、視力が悪くなって、よけいに目つきが悪役っぽいとか⁉︎そうだったらどうしよう、いやだ!
「うーん、でもなーんか違うんだよなぁ」
 西山君は首をひねりながら、グイッとわたしに顔を近付ける。クラスの誰かが「ヒイッ!」とか「危ない!」とか言ってるけど、わたし別にクマでもワニでもないから、つかまえて食べたりしないよ。
「はいはい、ストップ!ニッシーがサボってるから、いつまで経っても片付けが終わらないだろ?」
「ぐ、ぐえ!一心!」
 夕日ヶ丘君の手が後ろから伸びてきて、西山君の首根っこをつかむ。彼はカエルみたいな声を出して、手足をバタバタさせた。
「ごめんね朝日さん!気にしないで!」
「あ、う、うん……」
 うわぁ、正面からのキラキラスマイルは久しぶりかも。やっぱり夕日ヶ丘君の輝きはハンパじゃないよなぁ。さすが、名前に負けてないよ。うん。わたし「朝日」なのに、全然それっぽくないから、もっと見習わなきゃ。
 夕日ヶ丘君が西山君を引きずって(大丈夫かな)、向こうへいってくれたおかげで、わたしはホッとため息をつく。いやいや、西山君はせっかく話しかけてくれたんだから、もっとちゃんと答えるべきだったんだよね。次はもっとがんばろう。
 
チクッ
 
「あれ……?」
 片付けに戻ろうとしたわたしは、なんでか自分の胸の奥が変な感じになってることに、小さく首を傾げた。初めて感じる、針の先でチョコンとつつかれたような、ちょっとだけの違和感。ちなみに、名札の安全ピンを間違えて指にブッ刺しちゃった時は、もっともっと痛い……って、そうじゃなくて。
 なんだろう。さっき夕日ヶ丘君からキラキラの師匠スマイルをもらって、すごくうれしかったはずなのに。思い出すと、やっぱりチクチクするような。
「……気のせい、だよね」
 もし家に帰ってもこうなら、お母さんに相談して病院に連れてってもらおう。うん、そうしよう。わたしはうんうん頷いて、それからはまた片付けに集中することにした。
 
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