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第三章「ナイスなコンビでいざ遠足⁉︎」
⑥
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お昼、写真撮影、イキモノ観察、ちょっとしたレクリエーション(オニごっこ、オニはわたし、なぜかみんなにげないからすぐ交代になった)を終えて、あとは下山。帰りも二列になって、行きと一緒でわたしと夕日ヶ丘君が先頭。さっきのイキモノ観察の時は、何かの虫見つけたら全部こっそり夕日ヶ丘君の近くに運んだ。こうすれば、探さなくてもラクに観察出来るかなって。あとはオニごっこの時も、オニが近くに来たらさりげなーく夕日ヶ丘君に合図送ってたんだけど、途中で舌打ちされて(ジゴク耳のわたしにだけ聞こえた)、これは泣く泣くあきらめた。
チョコはバスの中で渡すとして、下山の時こそはみんなにバレないよう、こっそりウチワであおごう。いや、ハンカチ渡した方がいいかな?新品未使用のやつ、いっぱい持ってきてるし。
みんなで出発したけど、行きよりずっとスムーズに進んでる。疲れたっていうのはあるけど、たぶん上りより下りの方がラクなんだと思う。あとは帰るだけっていう気分的なアレもあるしね。
「なぁ……なんか華組遅くね?」
しばらくしてそう言ったのは、夕日ヶ丘君の友達君。もちろん名前も知ってる、西山君。
「そう言われると、確かに」
「なぁ一心、もっとスピード上げよーぜ」
「華組トロいって言われるのイヤだしね」
ピコン!
来た!またヒラメキの音!今こそ、となりの夕日ヶ丘君にハンカチを渡すタイミングなのでは!
「あの、夕日ヶ丘く……」
ガン見すると怒られるから、あんまり見ないようにしてた。だからこっそり渡そうとして、手が止まる。
夕日ヶ丘君、笑ってる。でも違う。なんでか分かんないけど、分かる。今笑ってるのは、無理してる顔だって。
「……い、いたたたた!」
バッとしゃがんで、叫ぶ。たぶん、今年いち大きい声出した気がする。
「あ、朝日さん⁉︎」
「オナカ、イタイ!」
「だ、大丈夫⁉︎」
「イタイ、オナカ!」
注目されて、かなりテンパってるわたし。ひたすら「オナカイタイ」と「イタイオナカ」を大ボリュームでくり返した。
「こ、これ相当ヤバいんじゃね⁉︎センセ呼ぼうぜ!」
西山君、いい人だ。仮病使ってごめん。
「悪役令嬢でも、ハライタになるんだ……」
西井君、それはヘンケンだと思う。
(夕日ヶ丘君、後ろ行こう!)
バチバチウィンクして、夕日ヶ丘君にだけ分かるようにサインを出した。
「……あー、そういうこと」
「どした?一心」
「いや。おれ、朝日さんと最後尾行くよ。クラス委員長としては、放っておけないし」
やった、通じた!さすが師匠!
「夕日ヶ丘君、優しい」
「ねー、いいなぁ」
「わたしもお腹痛くならないかな」
それはダメだよ。ホントに痛くなったら、辛いからね。わたしのはほら、ウソだから。
「ニッシーごめん。あとは任せた!」
「よっしゃ、任された!」
夕日ヶ丘君は、西山君の肩をパシッと叩く。それから、わたしのジャージをくいっと引っ張った。
「ほら、後ろ行こ」
「ワタシオナカイタイデス」
「はいはい分かったから」
夕日ヶ丘君はジャージを引っ張って、連れて行ってくれる。どんどん顔色が悪くなってる気がして、ハラハラした。
チョコはバスの中で渡すとして、下山の時こそはみんなにバレないよう、こっそりウチワであおごう。いや、ハンカチ渡した方がいいかな?新品未使用のやつ、いっぱい持ってきてるし。
みんなで出発したけど、行きよりずっとスムーズに進んでる。疲れたっていうのはあるけど、たぶん上りより下りの方がラクなんだと思う。あとは帰るだけっていう気分的なアレもあるしね。
「なぁ……なんか華組遅くね?」
しばらくしてそう言ったのは、夕日ヶ丘君の友達君。もちろん名前も知ってる、西山君。
「そう言われると、確かに」
「なぁ一心、もっとスピード上げよーぜ」
「華組トロいって言われるのイヤだしね」
ピコン!
来た!またヒラメキの音!今こそ、となりの夕日ヶ丘君にハンカチを渡すタイミングなのでは!
「あの、夕日ヶ丘く……」
ガン見すると怒られるから、あんまり見ないようにしてた。だからこっそり渡そうとして、手が止まる。
夕日ヶ丘君、笑ってる。でも違う。なんでか分かんないけど、分かる。今笑ってるのは、無理してる顔だって。
「……い、いたたたた!」
バッとしゃがんで、叫ぶ。たぶん、今年いち大きい声出した気がする。
「あ、朝日さん⁉︎」
「オナカ、イタイ!」
「だ、大丈夫⁉︎」
「イタイ、オナカ!」
注目されて、かなりテンパってるわたし。ひたすら「オナカイタイ」と「イタイオナカ」を大ボリュームでくり返した。
「こ、これ相当ヤバいんじゃね⁉︎センセ呼ぼうぜ!」
西山君、いい人だ。仮病使ってごめん。
「悪役令嬢でも、ハライタになるんだ……」
西井君、それはヘンケンだと思う。
(夕日ヶ丘君、後ろ行こう!)
バチバチウィンクして、夕日ヶ丘君にだけ分かるようにサインを出した。
「……あー、そういうこと」
「どした?一心」
「いや。おれ、朝日さんと最後尾行くよ。クラス委員長としては、放っておけないし」
やった、通じた!さすが師匠!
「夕日ヶ丘君、優しい」
「ねー、いいなぁ」
「わたしもお腹痛くならないかな」
それはダメだよ。ホントに痛くなったら、辛いからね。わたしのはほら、ウソだから。
「ニッシーごめん。あとは任せた!」
「よっしゃ、任された!」
夕日ヶ丘君は、西山君の肩をパシッと叩く。それから、わたしのジャージをくいっと引っ張った。
「ほら、後ろ行こ」
「ワタシオナカイタイデス」
「はいはい分かったから」
夕日ヶ丘君はジャージを引っ張って、連れて行ってくれる。どんどん顔色が悪くなってる気がして、ハラハラした。
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