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もう一度、多田羅に太陽を
33、雨と共に現れた人
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涙は雨へと変わった。乾いた土がしだいに色濃い土の色へと染まっていった。パラパラという音がザーザーと風を伴って降り始める。
その音に隠れるように朱実は声をあげて泣いていた。ずっと我慢していた気持ちが抑えられなくなったのだ。
泰然と離れたことが不安だったのか、知らぬ土地で蒼然という掴みどころのない秋の神との生活が辛かったのか。確かに無期限に続けるこの生活は辛いかもしれない。しかし、それらは取るに足りない小さなことだと朱実は思っている。
神のことをなにも知らずに神社の娘だからと、神職まがいな行いをし満足していた。多田羅のために身を捧ぐ自分に、どことなく酔っていた気がする。理解ある泰然という神に見初められたことが、より自分は特別だと思ってしまったかもしれない。轟然や龍然にも認められたと思い込み、多田羅のためにと蒼然に会いに来た。泰然もいるから大丈夫だという安心感もあった。
「わたしには、なにもない……。なんの力も、ない」
乾いた土を雨が叩くので、小さな土埃がぽこぽこと湧いた。土の湿ったあの独特の臭いが朱実を包む。雨足は一層増して、後頭部から顎へと雫がつたい落ちた。
(ああ、いけない。袴がびしょびしょになる……)
そう思っていると、滴り落ちるものが止まった。
雨が止んだのか、いやそうではない。誰かが朱実の頭上に傘をさしてくれている。恐る恐る振り返ると、そこにいたのは月白色の着物を着た女性だった。
「こんなになるまで、ここで何をしていたのです? 風邪をひいてしまいます」
「えっ……」
とても綺麗な女性だった。透明感のある白い肌、小顔なのに目も鼻も唇も形よく整っている。派手さはなく、どこか儚げでこの世の人ではないような不思議な気配だった。
朱実はゆっくりと立ち上がる。すると女性は大きな和傘を半分、朱実に差し出して濡れないようにと朱実の手を引いた。間近に迫った女性の顔を見て、朱実は息を呑んだ。
(お母さん‼︎)
目元にうっすらと入った紅色のシャドウが、狐に扮した母親の写真とそっくりだったのだ。驚きで涙は止まったものの、今度は唇が震えだす。何か言わなければと思うのに、心の中がぐちゃぐちゃで言葉が出てこない。
「さあ、屋根の下に入りましょう。着替えたほうがよいですね。裾まですっかりびしょ濡れです」
「あ、あの」
「泣いて、いましたね」
女性はゆったりとした仕草で、朱実の頬を指の甲でそっと撫でた。母ではないかと、思えばその声も懐かしく聞こえる。いるはずのない母の影が彼女と重なって、もうそうとしか見えなくなっていた。
いや、そうだと思いたい自分がいた。
「ごめ……っ、ごめんなさい。私はお母さんが守ろうとした多田羅の町をダメにしてしまいました。してはならない恋に落ちて、土地神さまと結婚をしました。神さまのこと何も知らないくせに、多田羅のためにと都合よく理由をつけて。お母さんの大切な人を傷つけて、悲しませて、こんなに遠くの土地に追いやってしまいました。それなのに、またこうやって訪ねてきて、迷惑をかけています」
女性は朱実の手を握りしめたまま何も言わない。反応のない彼女の顔を見るのが辛くて、俯いたまま再び口を開いた。
「本当は、蒼然さまに多田羅に戻って来てくれませんかとお願いするつもりでした。神使のお加代さんに、また会ってほしいとか、多田羅の秋を以前のように守って欲しいなんて……あまりにも身勝手なことを口にするところでした。蒼然さまの気持ちや、お母さんの願いに蓋をして……あまりにも無遠慮でした」
朱実は母が選んだ未来を尊重し、受け入れた蒼然の決断を軽んじたことを恥じた。謝って済むようなことではない。泣いたからといって、何かが変わるものでもない。そんな朱実に女性は問いかける。
「あなたは、結婚したことを後悔しているのですか? 自分がしたことが間違っていると、思っているのですか? その程度の気持ちで、あなたは神社を継いだのですか」
そう問われて、朱実は顔を上げた。
後悔や反省の念を全て壊されたような、そんな言葉に朱実は茫然とした。ではいったい、どうすればよかったのだろうか。
「朱実さん。あなたにしかできない選択です。誰がどうあなたに助言をしても、決めるのはあなたです。私は知っています。あなたは流されてここまで来たわけではないでしょう。他人の気持ちなど、本当にわかる人はいないのです。ましてや、神の気持ちなど人間にはとうてい掴めないものです。だからといって、何も伝えずにこのまま去るおつもりですか。せっかくあの人がくれた時間です」
「あの人……」
「はい。少し気難しくて、愛情表現が下手なあの人。でも、とても思いやりがあって優しい人なのです。私は小さい頃からあの人のことをお慕いしていました。人、ではなかったと知ったのは大人になってからですけど」
「おかあ……さん」
朱実は思わずそういってしまう。しかし、彼女はなんのことかときょとんした表情で首を傾げてしまった。いつもならこれ以上はと引き下がるところだが、今の朱実には確信があった。彼女は自分が幼い時に病死した、母の舞衣子だと。
「あなたは舞衣子さん、ですね」
すると、女性は口元を綻ばせる。
「わたしのことをご存知なのですか? どこかでお会いしたのかしら。どうりで放っておけないと思ってしまったのですね。蒼然さまったら何もおっしゃらないから。珍しいんですよ。あの人が人の子を置くなんて。あらあら、どうしたの? どこか痛いの? 苦しいの?」
朱実に溢れる涙を止める術などあるわけがない。悲しさよりも嬉しさに似た、とても複雑な気持ちが溢れてくるのだ。
病死したのは嘘だったのだろうか。それとも神である蒼然が病気を治して、この土地で新しい人生を歩ませてくれているのだろうか。
「舞衣子さんの大好きな人は、蒼然さまなんですね。ずっとここで一緒に暮らしているんですか?」
「暮らしている。と言えるのかは分かりませんが、とても幸せな時間を過ごしています。わたしには過去の記憶がありません。ただここで、神としてこの土地を見守っているだけです」
「あなたは神さまなのですか⁉︎」
「もともとは人間だったそうです。残念ながら不治の病で命を終えました。しばらくして、かんながらの道を歩もうとこの地に戻ってきたのです。神のおぼしめしのままに、わたしはこうしています。誰のためでもなくただここに居たいと、蒼然さまと共にいたいという想いだけで存在しています。わたしよりもあなたの方が立派ですよ。町のこと、未来のこと、お母さんのことを考えて悩んでいるのですから」
舞衣子は朱実のことを何も覚えていないようだった。朱実の神社では、家族の誰かが命を終えると、その家を守るために神となるのだと教わった。しかし、母舞衣子は家ではなく、好きな人のそばで神として生きている。
(お母さんは、なにも覚えていないんだ。真っ白な心でよみがえって、大好きな蒼然さまと生きている)
なんとも言えない気持ちになった。
人は人の人生を終えると、まっさらな心を持って神として生まれ変わるのか。人の時代で愛した夫や娘のことを忘れてしまうなんて、信じられない。いや、心の底から愛した人は蒼然ただ一人だったということなのかもしれない。そうだとしたら、朱実の中にある母の温もりや優しさは嘘だったのだろうか。父と母が愛をを育んだから、自分が存在するのではなかったのか。考えるほどに虚しさが広がっていく。
「人として生きていたことは、忘れてしまうのですね。その方が幸せですよね。蒼然さまは舞衣子さんのことを本当に愛しているのだと思います。神として生きるには人の時代の悲しみや苦しみは不要です。覚えていては、神になった意味がないですもの」
「でもね、わたしだけが覚えていない無垢な状態でここに存在するのは、時々疑問に思うの。あの人は、わたしの過去を全部知っているのだから」
「知りたいですか」
朱実がそう返すと、舞衣子は首を横に振った。そして、穏やかな笑顔でこう言う。
「いつか、思い出す日が来ると思うの。その時をわたしは待ちます。そんなに先のことではないと思うから」
「でも、蒼然さまは望んでいないかもしれないですよ」
「そんなことはないわ。あの人の心も少し迷っているみたいだもの。ねえ、朱実さん」
「はい」
「抱きしめてもいいかしら。なぜか、あなたをそうしたいの」
朱実は舞衣子の申し出に、震える声で「はい」と返事をした。舞衣子は目尻を下げて微笑む。
月白色の着物の袖がそっと朱実の背中に周り、くっと両腕で引き寄せる。朱実の頬が舞衣子の胸にとんと触れた。思わず目を瞑る。こうして抱きしめられたのはいつが最後だろうか。多田羅神社の境内か、それとも御神木の下だったろうか。
遠い記憶を手繰り寄せて、朱実も舞衣子の背中に腕を回した。
(お母さん……)
「朱実さん。大きくなりましたね」
「お母さん!」
その言葉にハッとして、舞衣子の顔を見上げた。
しかし、もう舞衣子はいなかった。
なぜかそこには、冷たい表情の蒼然が朱実を見下ろしているだけだった。
「蒼然さま……」
その音に隠れるように朱実は声をあげて泣いていた。ずっと我慢していた気持ちが抑えられなくなったのだ。
泰然と離れたことが不安だったのか、知らぬ土地で蒼然という掴みどころのない秋の神との生活が辛かったのか。確かに無期限に続けるこの生活は辛いかもしれない。しかし、それらは取るに足りない小さなことだと朱実は思っている。
神のことをなにも知らずに神社の娘だからと、神職まがいな行いをし満足していた。多田羅のために身を捧ぐ自分に、どことなく酔っていた気がする。理解ある泰然という神に見初められたことが、より自分は特別だと思ってしまったかもしれない。轟然や龍然にも認められたと思い込み、多田羅のためにと蒼然に会いに来た。泰然もいるから大丈夫だという安心感もあった。
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乾いた土を雨が叩くので、小さな土埃がぽこぽこと湧いた。土の湿ったあの独特の臭いが朱実を包む。雨足は一層増して、後頭部から顎へと雫がつたい落ちた。
(ああ、いけない。袴がびしょびしょになる……)
そう思っていると、滴り落ちるものが止まった。
雨が止んだのか、いやそうではない。誰かが朱実の頭上に傘をさしてくれている。恐る恐る振り返ると、そこにいたのは月白色の着物を着た女性だった。
「こんなになるまで、ここで何をしていたのです? 風邪をひいてしまいます」
「えっ……」
とても綺麗な女性だった。透明感のある白い肌、小顔なのに目も鼻も唇も形よく整っている。派手さはなく、どこか儚げでこの世の人ではないような不思議な気配だった。
朱実はゆっくりと立ち上がる。すると女性は大きな和傘を半分、朱実に差し出して濡れないようにと朱実の手を引いた。間近に迫った女性の顔を見て、朱実は息を呑んだ。
(お母さん‼︎)
目元にうっすらと入った紅色のシャドウが、狐に扮した母親の写真とそっくりだったのだ。驚きで涙は止まったものの、今度は唇が震えだす。何か言わなければと思うのに、心の中がぐちゃぐちゃで言葉が出てこない。
「さあ、屋根の下に入りましょう。着替えたほうがよいですね。裾まですっかりびしょ濡れです」
「あ、あの」
「泣いて、いましたね」
女性はゆったりとした仕草で、朱実の頬を指の甲でそっと撫でた。母ではないかと、思えばその声も懐かしく聞こえる。いるはずのない母の影が彼女と重なって、もうそうとしか見えなくなっていた。
いや、そうだと思いたい自分がいた。
「ごめ……っ、ごめんなさい。私はお母さんが守ろうとした多田羅の町をダメにしてしまいました。してはならない恋に落ちて、土地神さまと結婚をしました。神さまのこと何も知らないくせに、多田羅のためにと都合よく理由をつけて。お母さんの大切な人を傷つけて、悲しませて、こんなに遠くの土地に追いやってしまいました。それなのに、またこうやって訪ねてきて、迷惑をかけています」
女性は朱実の手を握りしめたまま何も言わない。反応のない彼女の顔を見るのが辛くて、俯いたまま再び口を開いた。
「本当は、蒼然さまに多田羅に戻って来てくれませんかとお願いするつもりでした。神使のお加代さんに、また会ってほしいとか、多田羅の秋を以前のように守って欲しいなんて……あまりにも身勝手なことを口にするところでした。蒼然さまの気持ちや、お母さんの願いに蓋をして……あまりにも無遠慮でした」
朱実は母が選んだ未来を尊重し、受け入れた蒼然の決断を軽んじたことを恥じた。謝って済むようなことではない。泣いたからといって、何かが変わるものでもない。そんな朱実に女性は問いかける。
「あなたは、結婚したことを後悔しているのですか? 自分がしたことが間違っていると、思っているのですか? その程度の気持ちで、あなたは神社を継いだのですか」
そう問われて、朱実は顔を上げた。
後悔や反省の念を全て壊されたような、そんな言葉に朱実は茫然とした。ではいったい、どうすればよかったのだろうか。
「朱実さん。あなたにしかできない選択です。誰がどうあなたに助言をしても、決めるのはあなたです。私は知っています。あなたは流されてここまで来たわけではないでしょう。他人の気持ちなど、本当にわかる人はいないのです。ましてや、神の気持ちなど人間にはとうてい掴めないものです。だからといって、何も伝えずにこのまま去るおつもりですか。せっかくあの人がくれた時間です」
「あの人……」
「はい。少し気難しくて、愛情表現が下手なあの人。でも、とても思いやりがあって優しい人なのです。私は小さい頃からあの人のことをお慕いしていました。人、ではなかったと知ったのは大人になってからですけど」
「おかあ……さん」
朱実は思わずそういってしまう。しかし、彼女はなんのことかときょとんした表情で首を傾げてしまった。いつもならこれ以上はと引き下がるところだが、今の朱実には確信があった。彼女は自分が幼い時に病死した、母の舞衣子だと。
「あなたは舞衣子さん、ですね」
すると、女性は口元を綻ばせる。
「わたしのことをご存知なのですか? どこかでお会いしたのかしら。どうりで放っておけないと思ってしまったのですね。蒼然さまったら何もおっしゃらないから。珍しいんですよ。あの人が人の子を置くなんて。あらあら、どうしたの? どこか痛いの? 苦しいの?」
朱実に溢れる涙を止める術などあるわけがない。悲しさよりも嬉しさに似た、とても複雑な気持ちが溢れてくるのだ。
病死したのは嘘だったのだろうか。それとも神である蒼然が病気を治して、この土地で新しい人生を歩ませてくれているのだろうか。
「舞衣子さんの大好きな人は、蒼然さまなんですね。ずっとここで一緒に暮らしているんですか?」
「暮らしている。と言えるのかは分かりませんが、とても幸せな時間を過ごしています。わたしには過去の記憶がありません。ただここで、神としてこの土地を見守っているだけです」
「あなたは神さまなのですか⁉︎」
「もともとは人間だったそうです。残念ながら不治の病で命を終えました。しばらくして、かんながらの道を歩もうとこの地に戻ってきたのです。神のおぼしめしのままに、わたしはこうしています。誰のためでもなくただここに居たいと、蒼然さまと共にいたいという想いだけで存在しています。わたしよりもあなたの方が立派ですよ。町のこと、未来のこと、お母さんのことを考えて悩んでいるのですから」
舞衣子は朱実のことを何も覚えていないようだった。朱実の神社では、家族の誰かが命を終えると、その家を守るために神となるのだと教わった。しかし、母舞衣子は家ではなく、好きな人のそばで神として生きている。
(お母さんは、なにも覚えていないんだ。真っ白な心でよみがえって、大好きな蒼然さまと生きている)
なんとも言えない気持ちになった。
人は人の人生を終えると、まっさらな心を持って神として生まれ変わるのか。人の時代で愛した夫や娘のことを忘れてしまうなんて、信じられない。いや、心の底から愛した人は蒼然ただ一人だったということなのかもしれない。そうだとしたら、朱実の中にある母の温もりや優しさは嘘だったのだろうか。父と母が愛をを育んだから、自分が存在するのではなかったのか。考えるほどに虚しさが広がっていく。
「人として生きていたことは、忘れてしまうのですね。その方が幸せですよね。蒼然さまは舞衣子さんのことを本当に愛しているのだと思います。神として生きるには人の時代の悲しみや苦しみは不要です。覚えていては、神になった意味がないですもの」
「でもね、わたしだけが覚えていない無垢な状態でここに存在するのは、時々疑問に思うの。あの人は、わたしの過去を全部知っているのだから」
「知りたいですか」
朱実がそう返すと、舞衣子は首を横に振った。そして、穏やかな笑顔でこう言う。
「いつか、思い出す日が来ると思うの。その時をわたしは待ちます。そんなに先のことではないと思うから」
「でも、蒼然さまは望んでいないかもしれないですよ」
「そんなことはないわ。あの人の心も少し迷っているみたいだもの。ねえ、朱実さん」
「はい」
「抱きしめてもいいかしら。なぜか、あなたをそうしたいの」
朱実は舞衣子の申し出に、震える声で「はい」と返事をした。舞衣子は目尻を下げて微笑む。
月白色の着物の袖がそっと朱実の背中に周り、くっと両腕で引き寄せる。朱実の頬が舞衣子の胸にとんと触れた。思わず目を瞑る。こうして抱きしめられたのはいつが最後だろうか。多田羅神社の境内か、それとも御神木の下だったろうか。
遠い記憶を手繰り寄せて、朱実も舞衣子の背中に腕を回した。
(お母さん……)
「朱実さん。大きくなりましたね」
「お母さん!」
その言葉にハッとして、舞衣子の顔を見上げた。
しかし、もう舞衣子はいなかった。
なぜかそこには、冷たい表情の蒼然が朱実を見下ろしているだけだった。
「蒼然さま……」
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