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5-01 最近よくないのがふえたよね。
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5-01 最近よくないのがふえたよね。
『嫌な臭いでありますな』
「まったくだね」
アリオンゼールは自然が豊かな国で…と言うとよさげに聞こえるのだが、発展途上で自然が豊かということは森や山などに人が隠れ住むことはとても簡単ということなのだ。
国は治安に力を入れて法律もしっかりしていて、取り締まりもちゃんとしているのだが…
『まあ逢魔が時の所為でありましょうな』
「え? これもそうなの?」
『はいであります。吾輩が精霊井戸端会議で聞いた限りでは邪壊思念というのは魔物の活性化だけではなく人の悪意の暴走にも一役買うのであります。
真っ当な人間は影響を受けませぬが、自制心の弱いもの。欲望に流されやすいものは覿面に影響をうけます。
そう言った人間が道を踏み外すことがおおくなっているのでありますよ』
「おお、スゲー。精霊井戸端会議、興味をひくな!」
『そっちでありますか!』
「あはは冗談冗談」
まあ興味があるのは本当だ、モース君の交友関係はどうなっているのかな? いるのかな?
「とにかくこの臭さからしてかなり邪壊思念に汚染されたしょうもない人間がこのあたりにいるということだな」
『はいであります。おそらく先ごろよった村で聞いた盗賊でありましょう』
現在俺は迷宮都市アウシールに向っている最中だ。
俺より二年ほど早く成人したルトナが迷宮都市に修行にでていて、そのついでにあの町にうちの商会。ナガン商会と名付けられた服飾関係の大手商会の支店が開設されている。
ルトナはその支店の代表兼冒険者としてあの町で活動しているのだ。
勿論店の代表は肩書きだけである。
それから二年。俺も十五才になり成人となったのを期に修行の旅に出た。当面はルトナと合流してあの町に腰を据えるつもりである。
あの町の迷宮は俺の活躍で変質しているので迷宮がどう変質していったのか興味はあるし、責任もあるだろう。
それにルトナがそこにいれば俺が行くのは当然だとみんなが思っている。
番だから。ということらしい。
それにあの町にはクラリス様の所の王子と王女も学園の生徒として滞在してる。キハール伯爵の『キハール魔法戦術学園』だ。そこで魔法や戦闘を学んでいるわけだ。ここはそう言う国なのだ。
そしてこの二人現在は『王太子』と『王女』という立場になっている。
そう、先王の爺さんが『そろそろクラリオーサに国を任せよう。良い潮時だ』とのたまって『楽隠居』したのに伴い現在はクラリス様がアリオンゼール王国の女王陛下となっている。なのでその子供である二人も立場が上がってしまったのだ。
本当は空を飛べばアウシールまであっという間なのだが『旅こそよき勉強』というジジイの勧めに従ってのんびりと歩きで道を進んでいる。
ふだん使う北ルートで無く南回りのルートで今まで通ったことのないルートを。
のんびりと歩く俺の肩には三〇cmほどの真っ白い象がつかまっている。デフォルメされたぬいぐるみみたいな象で前足で肩にしっかりと。
その正体はもちろんモース君である。
ふつうに四本足で歩いたり、二足歩行に切り替えたり、スーツを着たりと行動が多彩だが、考えてみれば彼は精霊で骨格とか持っているわけではないのでかなり自由が利くらしい。
その辺りはとてもフリーダムだ。
本来なら巨大化実体化して俺を乗せて進むこともできるのになぜか俺が担いで運んでいる。
良いのかこれで?
『マスター、ちょっと急いだ方がいいかもしれないでありますよ』
「そう?」
モース君の声で我に返った俺は魔力視を全開にしてこの腐臭の発生源を探る。
腐臭と言っても本当の匂いではないので空気にのって漂ってくるわけではない。
しかし波動のように広がるものなので方向は簡単に察知できる。
俺の脳裏にその場所が映し出されるわけなんだが…これはいけない、急がないと。
俺は【グラビットドライブ】の魔法を起動させて一気に飛び上がった。
目的地はこの山道を進んだ先にあるちょっと開けた場所だ。
◆・◆・◆
「へえええっ、いい女じゃねえか」
「俺は天魔族ってのは初めてみたぜ」
その少女は山中の草原で地面に押さえつけられ自由を奪われていた。うつ伏せに顔を地面に押しつけられてかなりひどい扱いと言える。
周りには十数人の男。
彼女一人が襲われている図式だ。
だがちょっとおかしい。
この少女、他に荷物らしい荷物を持っていない。
そもそも人間が一人で歩いて旅をするなんていかれた真似は普通しないものだ。
俺はその場所に急行しながら心を研ぎ澄ませて状況を拾う。
「はなして…」
「バカぬかせ、せっかく捕まえた獲物だ、そう簡単に逃がせるかよ…」
少女の目には涙が浮かんでいたが、その眼はまだ輝きを失ってはおらず、その場を仕切っているらしき男を見つめている。
「ロンギさん、この娘どうすんです? 売り飛ばすんですか?」
「まあ、それならそれでいいだろう。どうせ売り飛ばすにしても全員で輪姦した後だ。ねえ兄貴?」
「そうっすよね。四、五日玩具にしてそのあとで売買契約書にサインをさせて奴隷として帝国に持ち込めば結構高値で売れるんじゃないっすか?…おおっ」
その話の内容におびえたのが少女は激しく抵抗して、しかし力ずくで抑え込まれる。
地面に刷り込まれ傷がつくのもお構いなしだ。
「いや、こいつは売らねえ、というか天魔族を国外に持ち出すのはさすがに無理だ。ぜったいに見つかる。こいつにはここで永久に俺達に奉仕してもらおう」
「「ひゅーっ」」
『天魔族』と兄貴と呼ばれた男は言った。
大陸の北の端に住んでいるという魔法に長けた種族だ。
頭に曲がった角があるのが特徴で光属性が得意な白魔系、闇属性が使える黒魔系に分かれるらしい。
あと翼を持っていると聞いたことがあるがその特徴は見えないな。
彼女の角は頭の横から前に曲がって生えていて、その角を上から踏まれて動きを封じられている。
「誰があなたたちなんかに…」
「はははっ、まだじたばた暴れてやがる。活きがいいのはいいことだぜ、それだけ楽しめる。おう、ひん剥いて尻を上げさせろ、一発ぶち込まれても同じことが言えるか試してやるぜ、まあとりあえずは悲鳴を聞かせてくれや」
「ひっ!」
少女の口から悲鳴が漏れた。
その男が立ち上がってズボンをおろし自分の凶器をしごき始めたからだ。少女に見せつけるように。
「やあっ」
ついで少女を押さえつけていた男たちが彼女の履いているスカートを引き千切り、下着を剥ぎ取る。
「おっ、そっち足もて、ケツを高く上げさせろ」
「うひょーやわらけえ…いいにおいだぜ」
「きれいなもの持ってんじゃねえか…みんな拝んどけよ」
「ギャハハッ、すげえ…」
「獣車おっかけてったやつには悪いなあ…俺らばかりいい思いしちまってよ…」
男の一人が彼女の尻を思い切りたたく。
バチーンと音が響いた。
「ヒャーッ、プルンプルンだぜ…」
「兄貴、早く、早く、順番ですぜ」
「おうよ」
盗賊は汚らしいものを見せつけながらゆっくり歩み寄る。
「オー、泣いちまった泣いちまった」
「もっと鳴いてくれよ俺らそれが気持ちいいんだからよ」
こらえきれずに涙をこぼした少女を男たちははやし立てる。
「た…たすけ…だれか…」
「助けましょう。もちろん」
俺の言葉に盗賊たちがぎょっとして周囲を見回す。
だがその時にはすでに〝パウッ〟という甲高い音が鳴り響き。盗賊のリーダーの絶叫が響きわたった。
フフン、とうとう俺はそこにまにあった。
『嫌な臭いでありますな』
「まったくだね」
アリオンゼールは自然が豊かな国で…と言うとよさげに聞こえるのだが、発展途上で自然が豊かということは森や山などに人が隠れ住むことはとても簡単ということなのだ。
国は治安に力を入れて法律もしっかりしていて、取り締まりもちゃんとしているのだが…
『まあ逢魔が時の所為でありましょうな』
「え? これもそうなの?」
『はいであります。吾輩が精霊井戸端会議で聞いた限りでは邪壊思念というのは魔物の活性化だけではなく人の悪意の暴走にも一役買うのであります。
真っ当な人間は影響を受けませぬが、自制心の弱いもの。欲望に流されやすいものは覿面に影響をうけます。
そう言った人間が道を踏み外すことがおおくなっているのでありますよ』
「おお、スゲー。精霊井戸端会議、興味をひくな!」
『そっちでありますか!』
「あはは冗談冗談」
まあ興味があるのは本当だ、モース君の交友関係はどうなっているのかな? いるのかな?
「とにかくこの臭さからしてかなり邪壊思念に汚染されたしょうもない人間がこのあたりにいるということだな」
『はいであります。おそらく先ごろよった村で聞いた盗賊でありましょう』
現在俺は迷宮都市アウシールに向っている最中だ。
俺より二年ほど早く成人したルトナが迷宮都市に修行にでていて、そのついでにあの町にうちの商会。ナガン商会と名付けられた服飾関係の大手商会の支店が開設されている。
ルトナはその支店の代表兼冒険者としてあの町で活動しているのだ。
勿論店の代表は肩書きだけである。
それから二年。俺も十五才になり成人となったのを期に修行の旅に出た。当面はルトナと合流してあの町に腰を据えるつもりである。
あの町の迷宮は俺の活躍で変質しているので迷宮がどう変質していったのか興味はあるし、責任もあるだろう。
それにルトナがそこにいれば俺が行くのは当然だとみんなが思っている。
番だから。ということらしい。
それにあの町にはクラリス様の所の王子と王女も学園の生徒として滞在してる。キハール伯爵の『キハール魔法戦術学園』だ。そこで魔法や戦闘を学んでいるわけだ。ここはそう言う国なのだ。
そしてこの二人現在は『王太子』と『王女』という立場になっている。
そう、先王の爺さんが『そろそろクラリオーサに国を任せよう。良い潮時だ』とのたまって『楽隠居』したのに伴い現在はクラリス様がアリオンゼール王国の女王陛下となっている。なのでその子供である二人も立場が上がってしまったのだ。
本当は空を飛べばアウシールまであっという間なのだが『旅こそよき勉強』というジジイの勧めに従ってのんびりと歩きで道を進んでいる。
ふだん使う北ルートで無く南回りのルートで今まで通ったことのないルートを。
のんびりと歩く俺の肩には三〇cmほどの真っ白い象がつかまっている。デフォルメされたぬいぐるみみたいな象で前足で肩にしっかりと。
その正体はもちろんモース君である。
ふつうに四本足で歩いたり、二足歩行に切り替えたり、スーツを着たりと行動が多彩だが、考えてみれば彼は精霊で骨格とか持っているわけではないのでかなり自由が利くらしい。
その辺りはとてもフリーダムだ。
本来なら巨大化実体化して俺を乗せて進むこともできるのになぜか俺が担いで運んでいる。
良いのかこれで?
『マスター、ちょっと急いだ方がいいかもしれないでありますよ』
「そう?」
モース君の声で我に返った俺は魔力視を全開にしてこの腐臭の発生源を探る。
腐臭と言っても本当の匂いではないので空気にのって漂ってくるわけではない。
しかし波動のように広がるものなので方向は簡単に察知できる。
俺の脳裏にその場所が映し出されるわけなんだが…これはいけない、急がないと。
俺は【グラビットドライブ】の魔法を起動させて一気に飛び上がった。
目的地はこの山道を進んだ先にあるちょっと開けた場所だ。
◆・◆・◆
「へえええっ、いい女じゃねえか」
「俺は天魔族ってのは初めてみたぜ」
その少女は山中の草原で地面に押さえつけられ自由を奪われていた。うつ伏せに顔を地面に押しつけられてかなりひどい扱いと言える。
周りには十数人の男。
彼女一人が襲われている図式だ。
だがちょっとおかしい。
この少女、他に荷物らしい荷物を持っていない。
そもそも人間が一人で歩いて旅をするなんていかれた真似は普通しないものだ。
俺はその場所に急行しながら心を研ぎ澄ませて状況を拾う。
「はなして…」
「バカぬかせ、せっかく捕まえた獲物だ、そう簡単に逃がせるかよ…」
少女の目には涙が浮かんでいたが、その眼はまだ輝きを失ってはおらず、その場を仕切っているらしき男を見つめている。
「ロンギさん、この娘どうすんです? 売り飛ばすんですか?」
「まあ、それならそれでいいだろう。どうせ売り飛ばすにしても全員で輪姦した後だ。ねえ兄貴?」
「そうっすよね。四、五日玩具にしてそのあとで売買契約書にサインをさせて奴隷として帝国に持ち込めば結構高値で売れるんじゃないっすか?…おおっ」
その話の内容におびえたのが少女は激しく抵抗して、しかし力ずくで抑え込まれる。
地面に刷り込まれ傷がつくのもお構いなしだ。
「いや、こいつは売らねえ、というか天魔族を国外に持ち出すのはさすがに無理だ。ぜったいに見つかる。こいつにはここで永久に俺達に奉仕してもらおう」
「「ひゅーっ」」
『天魔族』と兄貴と呼ばれた男は言った。
大陸の北の端に住んでいるという魔法に長けた種族だ。
頭に曲がった角があるのが特徴で光属性が得意な白魔系、闇属性が使える黒魔系に分かれるらしい。
あと翼を持っていると聞いたことがあるがその特徴は見えないな。
彼女の角は頭の横から前に曲がって生えていて、その角を上から踏まれて動きを封じられている。
「誰があなたたちなんかに…」
「はははっ、まだじたばた暴れてやがる。活きがいいのはいいことだぜ、それだけ楽しめる。おう、ひん剥いて尻を上げさせろ、一発ぶち込まれても同じことが言えるか試してやるぜ、まあとりあえずは悲鳴を聞かせてくれや」
「ひっ!」
少女の口から悲鳴が漏れた。
その男が立ち上がってズボンをおろし自分の凶器をしごき始めたからだ。少女に見せつけるように。
「やあっ」
ついで少女を押さえつけていた男たちが彼女の履いているスカートを引き千切り、下着を剥ぎ取る。
「おっ、そっち足もて、ケツを高く上げさせろ」
「うひょーやわらけえ…いいにおいだぜ」
「きれいなもの持ってんじゃねえか…みんな拝んどけよ」
「ギャハハッ、すげえ…」
「獣車おっかけてったやつには悪いなあ…俺らばかりいい思いしちまってよ…」
男の一人が彼女の尻を思い切りたたく。
バチーンと音が響いた。
「ヒャーッ、プルンプルンだぜ…」
「兄貴、早く、早く、順番ですぜ」
「おうよ」
盗賊は汚らしいものを見せつけながらゆっくり歩み寄る。
「オー、泣いちまった泣いちまった」
「もっと鳴いてくれよ俺らそれが気持ちいいんだからよ」
こらえきれずに涙をこぼした少女を男たちははやし立てる。
「た…たすけ…だれか…」
「助けましょう。もちろん」
俺の言葉に盗賊たちがぎょっとして周囲を見回す。
だがその時にはすでに〝パウッ〟という甲高い音が鳴り響き。盗賊のリーダーの絶叫が響きわたった。
フフン、とうとう俺はそこにまにあった。
応援ありがとうございます!
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