【完結】とあるリュート弾きの少年の物語

衿乃 光希(恋愛小説大賞参加しています)

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第三部 最終話

13 楽団

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 ギュルダン氏がリュート奏者である師匠やディーノを楽器隊に紹介し、次に楽器隊をディーノたちに紹介していく。

 リュートは年配の男性。ツインクとセルパンは初老の男性。クルムホルンは男女の二人。オルガンはリーゼの六人編成。

 プロもいれば、アマチュアもいる。しかし全員が庶民だそうだ。

 紹介が終わると、楽器の説明をしてもらった。

 師匠が初めに興味を示したのはセルパンで、ディーノも同じだった。

 まるで蛇が這っているような形のそれは、唇の振動で音を出す金管楽器になるらしい。人の上半身よりも少し大きく、きれいな低音が出る。奏者のお爺さんはかつて教会で雇われていたが、今は引退してこの楽団は趣味だと云った。

 クルムホルンの男女は三十代の半ばころだろうか。この二人は師弟だった。男性のほうが師匠で、女性のほうが弟子らしい。クルムホルンは木管楽器で縦笛のように細長く、先がJの字に湾曲していた。口にくわえるリード部分にキャップがついていて、穴から息を吹き込んで音を出すのだと教えてもらった。楽器ごとに音域が違い、女性はソプラノを男性はアルトを使っているそうだ。教会によく合う、厳かな音がした。

 ツインクも縦笛のような形状をしているが、ゆるやかに曲がっている。起源が角笛であるというからその形も納得がいった。まろやかな音で、聴いていると気分が落ち着いてくる。リード部分を唇の正面ではなく横に加えているのが、なんだかかっこよかった。

 これから一緒に演奏をしましょうという話になり、場所を教会からギュルダン氏の屋敷に移した。

 ピエールと一緒に部屋からリュートを持ってくると、楽団でリュートを演奏していたお爺さんが興味を持ち、師匠に話しかけていた。

 ギュルダン氏の屋敷には楽器部屋があった。チェンバロやオルガン、リュートにヴァイオリンにギター、トランペットにホルンにツインク、ハープ。ディーノの見たことのない楽器もまだくさん置いてある。見ているだけで楽しくなる部屋だった。

「さてと。何の曲をやろうか?」

 仕切るギュルダン氏はチェンバロを前にして顔を綻ばせ、楽しそうな顔をする。

「あれなんてどうだろうか?」

 師匠がタイトルを云うと、全員が頷いた。

 リュートが三台、チェンバロが二台、セルパン、クルムホルン、ツインクの九人によるアンサンブルが始まった。
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