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一章 女子高生殺傷殺人未遂事件
10. 当該生徒の人柄1
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奥村智香と待ち合わせをしたファミレスに向かう。
彼女はまだ来ていなかった。
壁側の席で待っている間、駒澤から返信が来ていた。
動画を見た彼は、事件のことは知っていたが宮前亜澄が被害者だとは知らなかったと驚いていた。
テーブルに影が指し、扶季子は顔を上げた。
昨日見た顔と、知らない女子がもう一人。
「奥村さん、メールありがとう。どうぞ座って」
二人は向かいの席に腰を下ろす。
メールをしてきた奥村智香は壁際に座った。
「好きな物頼んでちょうだいね。経費で落ちるから」
注文のタブレットを二人の前に置く。
彼女たちはなぜか硬い表情をしていた。
自分から連絡してきて、緊張しているのか。人の情報を売ることに罪悪感を覚えているのかもしれない。
「あの、謝礼ってもらえるんですか」
奥村智香が、意を決したように目に力を込めて尋ねてくる。
いきなり謝礼の確認。
前回渡したことで、味をしめて連絡してきたのだろう。
「もちろん用意していますよ」
芙季子がにこやかに言うと、二人は表情をやや緩めた。が嬉しそうではない。ほっとしているような顔に見えた。
そんな顔も、芙季子が「ただし」と付け足すと、また硬くなった。
「情報によります。信憑性が感じられたらです。大袈裟に盛ったり、嘘をついたり、小出しで金銭を何度も要求する場合はお断りします」
毅然とした態度で芙季子が言うと、奥村智香の目に反抗的な色が宿る。きっと気の強いタイプだろう。
隣の女子は、不安そうにしている。
「そちらが喜びそうな情報でもですか」
「情報源はいくらでもあります。弊社で動いているのはわたしだけではないし」
芙季子が態度を変えずに言うと、奥村智香の袖が引っ張られた。二人は目を合わせる。
「わかりました。本当の話しかしません」
二人の肩から力が抜けた。芙季子も内心でほっとしていた。
「そうしてくれると、こちらも助かります」
取引は成立した。
音声のみ録音する旨を了承してもらい、ICレコーダーのスイッチを押した。
二人は奥村智香、花井愛莉と名乗った。
花井愛莉は山岸由依と小学校の3・4年生、中学1年生が同じクラスだった。
「山岸さんは、純粋っていうか天然って感じです。授業中にいきなり立ち上がって歩き出して、先生に注意されてました。何度もです」
「そうそう。全然反省しないんだよね」
奥村智香がうんうんと頷いた。
「他に覚えていることはある?」
花井愛莉は記憶にある山岸由依の話をしてくれた。
友達はおらず、校庭の隅に一人でいる姿を見かけたことがある。
泥遊びをして汚れた手で教室に戻り、先生に呆れられた。
チャイムを聞き逃し、授業に遅刻することは日常茶飯事。
四年生の時ペーパーのない個室トイレに入ってしまい泣き叫んでいた。
小学校の卒業式で、開始から号泣し途中で連れ出された。
中学生になって挙動はやや落ち着いたが、音楽室など移動教室のときは慣れるまで何度も遅刻していた。
休み時間でも授業に遅刻しないようにするためか、自分の席から離れなかった。
三年生の時に一緒に登下校する友達ができていた。相手は宮前亜澄だった。
「宮前亜澄とは中3で知り合ったのね。奥村さんは知らなかった?」
「知らない。あたしテニス部で朝早くて、夜遅かったから」
奥村智香の話し方がフランクになっている。こちらが本来の彼女なのだろう。
「宮前亜澄はどんな子だった?」
「あ、それはあたしが知ってる」
奥村智香が右手をはいっと挙げた。
宮前亜澄とは現在同じクラスで、中学2年生の時も同じだったらしい。
「すっごいおとなしい子。教室でほとんど話さなくて、話しかけても声が小さくて会話にならないって言われてた。授業で発言しないといけないときも、先生から何度も聞き返されてた。そんな子がグラドルやり始めたって話題になって、超びっくりした」
「それはいつ頃?」
「中2の秋ぐらい。でも巨乳なのは水泳の授業後から噂になってて、他の学年の男子が覗きにきたこともあった。あ、そうだ、2年の3学期全部来なかったんだ」
「仕事が忙しくなって?」
「ううん。いじめられたから。だってそんなエッチな仕事、フツーする? まだ中学生だよ。好きな男子と話すだけでもどきどきして、目が合っただけでキャーキャー騒いでるようなガキが男に媚びうるような仕事。女子から嫌われて当たり前じゃん」
あけすけな物言いに、花井愛莉が「智香ちゃん言い過ぎ」と止めに入る。
「夢があるのかもしれないじゃない。モデルや女優さん、アイドルに憧れているとか聞いたことない?」
「あいつが? そんな風には見えないけどなあ。だって男子が雑誌持ってきても、無視だよ。ありがとうも言わないんだよ。そこは買ってくれてありがとうって笑顔じゃない? あんな無愛想な子がやっていける仕事じゃないでしょ」
「心配してあげてるの?」
「バカ言わないでよ」
「じゃあ嫉妬?」
「しっ……嫉妬するわけないでしょ。どうしてあたしが、あんな胸だけの子に」
「好きな男の子が彼女のファンなの?」
「そんな奴いないよ」
「あなたが芸能界に憧れてるとか?」
「え……ちが、違うよ。あたしなんかが入れるような世界じゃないでしょ」
「智香ちゃんそうなの? モデルさん? 女優さん? 私、応援するよ」
「愛莉、やめてよ。そんなんじゃないから」
奥村智香は否定しつつも顔を赤らめている。
なかなかわかりやすいタイプだ。
密かに自分が憧れていた世界に同級生が挑戦した。おそらくはスクールカーストの最下層にいただろう生徒が、一気に注目をされて階段を駆け上がった。しかも自分にはない武器で。
テニスをしていたという奥村智香には、宮前亜澄とは違う魅力がある。
日焼けをした健康的な肌は、艶があり、血行が良さそう。
感情が表にだだ洩れになってしまうのは、可愛らしくもある。
彼女はまだ来ていなかった。
壁側の席で待っている間、駒澤から返信が来ていた。
動画を見た彼は、事件のことは知っていたが宮前亜澄が被害者だとは知らなかったと驚いていた。
テーブルに影が指し、扶季子は顔を上げた。
昨日見た顔と、知らない女子がもう一人。
「奥村さん、メールありがとう。どうぞ座って」
二人は向かいの席に腰を下ろす。
メールをしてきた奥村智香は壁際に座った。
「好きな物頼んでちょうだいね。経費で落ちるから」
注文のタブレットを二人の前に置く。
彼女たちはなぜか硬い表情をしていた。
自分から連絡してきて、緊張しているのか。人の情報を売ることに罪悪感を覚えているのかもしれない。
「あの、謝礼ってもらえるんですか」
奥村智香が、意を決したように目に力を込めて尋ねてくる。
いきなり謝礼の確認。
前回渡したことで、味をしめて連絡してきたのだろう。
「もちろん用意していますよ」
芙季子がにこやかに言うと、二人は表情をやや緩めた。が嬉しそうではない。ほっとしているような顔に見えた。
そんな顔も、芙季子が「ただし」と付け足すと、また硬くなった。
「情報によります。信憑性が感じられたらです。大袈裟に盛ったり、嘘をついたり、小出しで金銭を何度も要求する場合はお断りします」
毅然とした態度で芙季子が言うと、奥村智香の目に反抗的な色が宿る。きっと気の強いタイプだろう。
隣の女子は、不安そうにしている。
「そちらが喜びそうな情報でもですか」
「情報源はいくらでもあります。弊社で動いているのはわたしだけではないし」
芙季子が態度を変えずに言うと、奥村智香の袖が引っ張られた。二人は目を合わせる。
「わかりました。本当の話しかしません」
二人の肩から力が抜けた。芙季子も内心でほっとしていた。
「そうしてくれると、こちらも助かります」
取引は成立した。
音声のみ録音する旨を了承してもらい、ICレコーダーのスイッチを押した。
二人は奥村智香、花井愛莉と名乗った。
花井愛莉は山岸由依と小学校の3・4年生、中学1年生が同じクラスだった。
「山岸さんは、純粋っていうか天然って感じです。授業中にいきなり立ち上がって歩き出して、先生に注意されてました。何度もです」
「そうそう。全然反省しないんだよね」
奥村智香がうんうんと頷いた。
「他に覚えていることはある?」
花井愛莉は記憶にある山岸由依の話をしてくれた。
友達はおらず、校庭の隅に一人でいる姿を見かけたことがある。
泥遊びをして汚れた手で教室に戻り、先生に呆れられた。
チャイムを聞き逃し、授業に遅刻することは日常茶飯事。
四年生の時ペーパーのない個室トイレに入ってしまい泣き叫んでいた。
小学校の卒業式で、開始から号泣し途中で連れ出された。
中学生になって挙動はやや落ち着いたが、音楽室など移動教室のときは慣れるまで何度も遅刻していた。
休み時間でも授業に遅刻しないようにするためか、自分の席から離れなかった。
三年生の時に一緒に登下校する友達ができていた。相手は宮前亜澄だった。
「宮前亜澄とは中3で知り合ったのね。奥村さんは知らなかった?」
「知らない。あたしテニス部で朝早くて、夜遅かったから」
奥村智香の話し方がフランクになっている。こちらが本来の彼女なのだろう。
「宮前亜澄はどんな子だった?」
「あ、それはあたしが知ってる」
奥村智香が右手をはいっと挙げた。
宮前亜澄とは現在同じクラスで、中学2年生の時も同じだったらしい。
「すっごいおとなしい子。教室でほとんど話さなくて、話しかけても声が小さくて会話にならないって言われてた。授業で発言しないといけないときも、先生から何度も聞き返されてた。そんな子がグラドルやり始めたって話題になって、超びっくりした」
「それはいつ頃?」
「中2の秋ぐらい。でも巨乳なのは水泳の授業後から噂になってて、他の学年の男子が覗きにきたこともあった。あ、そうだ、2年の3学期全部来なかったんだ」
「仕事が忙しくなって?」
「ううん。いじめられたから。だってそんなエッチな仕事、フツーする? まだ中学生だよ。好きな男子と話すだけでもどきどきして、目が合っただけでキャーキャー騒いでるようなガキが男に媚びうるような仕事。女子から嫌われて当たり前じゃん」
あけすけな物言いに、花井愛莉が「智香ちゃん言い過ぎ」と止めに入る。
「夢があるのかもしれないじゃない。モデルや女優さん、アイドルに憧れているとか聞いたことない?」
「あいつが? そんな風には見えないけどなあ。だって男子が雑誌持ってきても、無視だよ。ありがとうも言わないんだよ。そこは買ってくれてありがとうって笑顔じゃない? あんな無愛想な子がやっていける仕事じゃないでしょ」
「心配してあげてるの?」
「バカ言わないでよ」
「じゃあ嫉妬?」
「しっ……嫉妬するわけないでしょ。どうしてあたしが、あんな胸だけの子に」
「好きな男の子が彼女のファンなの?」
「そんな奴いないよ」
「あなたが芸能界に憧れてるとか?」
「え……ちが、違うよ。あたしなんかが入れるような世界じゃないでしょ」
「智香ちゃんそうなの? モデルさん? 女優さん? 私、応援するよ」
「愛莉、やめてよ。そんなんじゃないから」
奥村智香は否定しつつも顔を赤らめている。
なかなかわかりやすいタイプだ。
密かに自分が憧れていた世界に同級生が挑戦した。おそらくはスクールカーストの最下層にいただろう生徒が、一気に注目をされて階段を駆け上がった。しかも自分にはない武器で。
テニスをしていたという奥村智香には、宮前亜澄とは違う魅力がある。
日焼けをした健康的な肌は、艶があり、血行が良さそう。
感情が表にだだ洩れになってしまうのは、可愛らしくもある。
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