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(月彦の視点) 大集合と気持ちの種
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今日の呼夢はまた変な格好だ。向き合ってリビングで課題をやりながら、ふと考えたい時に、ほとんどいつも視線を吸い込む。悪魔ハットとでも呼べそうな帽子を被っている。天辺の左右から角が一本ずつ出ているような黒帽子。金のラメ入りの黒シャツに、黒いスカート、赤い首飾り。
――何のキャラなんだろう。
その夕方、おじさん――時光さんが帰ってきて、こう言った。
「懐かしいな! 魔法使いペチペチじゃないか!」
「お父様、再放送が少し前まであったのですよ?」
「そ、そうだったのか…!」
――の、何のキャラ?
それを聞いてみると、
「主人公の女の子、アリーメリ・リエリですわ」
と、呼夢は静かに答えた。
……ペチペチって何だろう……と思ったけど、もう、その謎は謎のままでいいやと思ってしまった。
その時だ。
スーツを緩めた時光さんが。
「明日、雅川の高彦さん達が来るらしいぞ」
「明日なんだ」
と僕が言うと時光さんは続けた。
「ちょうど、あさってが新高丘夏祭りだから、みんなで楽しめるな」
そっか、そういう時期。シャッターチャンスもあるかもしれない。
――で、その日が来て、空港に来たワケだけど。
呼夢は全体が赤い薄手のパーカーを着ている。フードには猫耳がついていて、被るとその耳が上にしっかり立つというもの。
「それは何のコスなの?」
と僕が聞くと。
「ひょんな火女の赤姫はやいちゃうの赤姫だよ」
――分からん……。
そんな呼夢や僕や花香さん、時光さんの所へと、やって来た。キャリーケースを引く集団。
姉のカエデ。母の清心。父の高彦。兄の国彦。弟の爽。
「元気そうやん」
カエデ姉がそう言った。
「うん、うまくやれてるかも」
「能力は使ったの?」
と、爽は聞いてくるけど。
「一回しか使ってないよ。あんまり使わないもんだよ?」
「そうなのぉ? へえ~」
でもそんなに残念がってない。そのままの僕でいていいと弟まで言ってくれているみたいで、嬉しくなる。
まずはホテルまで送った。家で、この人数で夜を明かすのは無理だからだ。
大荷物だけはホテルの部屋へ置くと、それから洲中家へ。
リビングのモニターテーブルには、マスカットの2497年の品種改良品ヴァイスカットのジュースが並んだ。
親同士の会話に、花が咲く。
「実はこないだね~…」
「うちもこんな事があって~…」
なんて、いつになくにぎやかだ。
カエデ姉は早々に呼夢の部屋に行った。
お兄ちゃんと爽は、今は、僕と僕の部屋にいる。
「なんか漫画とかゲームはないの?」
と、爽が聞いてきた。
「ないよ。もしかしたら、あるのは、呼夢の部屋だけど」
「じゃあボク、そっちに行ってくる」
爽は猛ダッシュ。
「元気だなぁ爽は」
「何言ってんだよ。俺達も行くぞ」
「ええー? まぁいいけどさぁ」
結局、呼夢の部屋に、五人が大集合。
――ホラ、狭いって。
なぁんて思いつつ。
「呼夢ちゃん、彼氏いないの~?」
兄が聞いた。
正直気になる。もしいたらと。
――もしいたら……? まあ、ひとりに戻るだけか。僕の服を作ることも楽しそうにはしてたけど……それは……面白がってただけで……だって呼夢は、そういうことにワクワクする人だ、だからそれは僕じゃなくてもいいし、むしろそれをやり続けるなら僕にだけではなくなる時がくる。
それは、すぐかもしれない。
「彼氏はいないんですよ」
そう聞いてほっとした。
だって、いないということは、今の感じがもう少し続くはずだから。なんでだか分からないけど、まだ、このままの関係でいたい。
――一緒にダムとか植物園とか、いっぱい行ったからかな……記念祭も……。でも彼氏ができたら、それまでか。それまでなんだろうな、僕に構っていられないだろうし。そっか……。
あまり入ってこない会話のうち、辛うじて反応できそうなものには相槌を打ったりなんかしながら……僕は気持ちを隠した。
――なんか、ちょっと、さみしいかも……。
――何のキャラなんだろう。
その夕方、おじさん――時光さんが帰ってきて、こう言った。
「懐かしいな! 魔法使いペチペチじゃないか!」
「お父様、再放送が少し前まであったのですよ?」
「そ、そうだったのか…!」
――の、何のキャラ?
それを聞いてみると、
「主人公の女の子、アリーメリ・リエリですわ」
と、呼夢は静かに答えた。
……ペチペチって何だろう……と思ったけど、もう、その謎は謎のままでいいやと思ってしまった。
その時だ。
スーツを緩めた時光さんが。
「明日、雅川の高彦さん達が来るらしいぞ」
「明日なんだ」
と僕が言うと時光さんは続けた。
「ちょうど、あさってが新高丘夏祭りだから、みんなで楽しめるな」
そっか、そういう時期。シャッターチャンスもあるかもしれない。
――で、その日が来て、空港に来たワケだけど。
呼夢は全体が赤い薄手のパーカーを着ている。フードには猫耳がついていて、被るとその耳が上にしっかり立つというもの。
「それは何のコスなの?」
と僕が聞くと。
「ひょんな火女の赤姫はやいちゃうの赤姫だよ」
――分からん……。
そんな呼夢や僕や花香さん、時光さんの所へと、やって来た。キャリーケースを引く集団。
姉のカエデ。母の清心。父の高彦。兄の国彦。弟の爽。
「元気そうやん」
カエデ姉がそう言った。
「うん、うまくやれてるかも」
「能力は使ったの?」
と、爽は聞いてくるけど。
「一回しか使ってないよ。あんまり使わないもんだよ?」
「そうなのぉ? へえ~」
でもそんなに残念がってない。そのままの僕でいていいと弟まで言ってくれているみたいで、嬉しくなる。
まずはホテルまで送った。家で、この人数で夜を明かすのは無理だからだ。
大荷物だけはホテルの部屋へ置くと、それから洲中家へ。
リビングのモニターテーブルには、マスカットの2497年の品種改良品ヴァイスカットのジュースが並んだ。
親同士の会話に、花が咲く。
「実はこないだね~…」
「うちもこんな事があって~…」
なんて、いつになくにぎやかだ。
カエデ姉は早々に呼夢の部屋に行った。
お兄ちゃんと爽は、今は、僕と僕の部屋にいる。
「なんか漫画とかゲームはないの?」
と、爽が聞いてきた。
「ないよ。もしかしたら、あるのは、呼夢の部屋だけど」
「じゃあボク、そっちに行ってくる」
爽は猛ダッシュ。
「元気だなぁ爽は」
「何言ってんだよ。俺達も行くぞ」
「ええー? まぁいいけどさぁ」
結局、呼夢の部屋に、五人が大集合。
――ホラ、狭いって。
なぁんて思いつつ。
「呼夢ちゃん、彼氏いないの~?」
兄が聞いた。
正直気になる。もしいたらと。
――もしいたら……? まあ、ひとりに戻るだけか。僕の服を作ることも楽しそうにはしてたけど……それは……面白がってただけで……だって呼夢は、そういうことにワクワクする人だ、だからそれは僕じゃなくてもいいし、むしろそれをやり続けるなら僕にだけではなくなる時がくる。
それは、すぐかもしれない。
「彼氏はいないんですよ」
そう聞いてほっとした。
だって、いないということは、今の感じがもう少し続くはずだから。なんでだか分からないけど、まだ、このままの関係でいたい。
――一緒にダムとか植物園とか、いっぱい行ったからかな……記念祭も……。でも彼氏ができたら、それまでか。それまでなんだろうな、僕に構っていられないだろうし。そっか……。
あまり入ってこない会話のうち、辛うじて反応できそうなものには相槌を打ったりなんかしながら……僕は気持ちを隠した。
――なんか、ちょっと、さみしいかも……。
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