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◇171 毒ナマズをぶっ倒す
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アキラを助けたNightは先にドクハナを手に入れたことを確認する。
お互いに起き上がると、アキラは右手に持った紫色の花弁の付いた花をNightに見せる。
「はい、これ! 合ってるよね?」
「無事に採取したみたいだな。それがドクハナで間違いない」
Nightの見立ては間違っていなかった。
紫色をした花弁の中にオレンジ色の輪郭がある。まるで目のように見えて悍ましいが、そこから出ている胞子が毒性を持っていることからこの花はドクハナと呼ばれていた。
とは言え、初見で見た人からすれば——
「何だかパンジーみたいだね」
「そうだな。紫パンジーの色違いだ」
完全にパンジーでしかなかった。
とは言えこれで無事に依頼は達成。Nightの指示でアキラはすぐさまインベントリに押し込むと、ベルを連れて離脱することになった。はずなのだが——
「何やっているんだ、ベル! もう足止めはいいから逃げるぞ」
「ちょっと待ってよね。コイツをここで倒しておいた方が経験値的にも美味しいでしょ?」
ベルは弓を引くことを止めなかった。
それどころか当初の目的が完全にズレている。ドクハナを採取することができたので、抑え込んでいたものが吹き飛んでしまったみたいに、たかが外れている。
その状況に些か不安を抱いたNightは余計な危険性を避けることを優先する。
けれどアキラもベルと同じ意見だった。
「そうだよね。ここまでやって帰るのはやだよ!」
「お前まで何を言っているんだ! 目的は果たしたんだぞ。今更副産物を気にしてられるか」
「気にするよ。だって私、まだ【泥腕】奪えてないもん」
アキラは強欲だった。
Nightの想像を遥かに超えるほど、先程のスキルが欲しいらしく、舌なめずりをしている。
獣のような目ではない。しかし狩人の目ではあった。
意識が完全に討伐思考に入っている。
こうなった2人を止めるのは面倒なので、Nightはゴリ押すことはやめて仕方なく剣を抜いた。十字架状の剣が鋭く曇天雲を切り裂く。
「仕方ないな。だが無理はするなよ」
「ありがと、Night」
「それじゃあ狼煙、もう一回上げるわね」
ベルは高らかに弓を構えた。
完全に狙っていない姿勢に普通の人なら理解ができないか、嫌悪感を示すだろう。
しかし2人は違った。ベルの合図を皮切りに、お互い走り出す。敵はもう、【泥腕】を使えないからだ。
「【心射必中】!」
急に風が出てきた。ベルは風を呼んでいない。
ベルの意識が集中し毒ナマズを捉えると、軽やかに弦を弾いた。
シューン!——
矢が綺麗に弧を描き、毒ナマズの体に突き刺さる。
しかしカピカピになった体に鏃が刺さってもまともなダメージはない。
けれどそれでよかった。この矢には既に必中効果が付いている。
一度当たればそれでよかった。
「砕け」
ベルの声に反応して鏃が深々と刺さる。
毒ナマズは未知の脅威に悲鳴を上げ、徐々にダメージを負っていた。
精神に直接響き、肉体にも反応してダメージを与える。敵がデカければその分効力を増す。
「これで4分の1。残りは任せるわね」
ベルはやり切った表情を浮かべる。
それもそのはず、2人の強力な仕掛けが迫っていた。
「アキラ、お前は本体を叩け。私は下の方から登る」
「うん。【月跳】+【灰爪】加えて【半液状化】!」
アキラは【キメラハント】を使い毒ナマズから背中に上がっていく。
【月跳】で一気に半分近くまで迫ると、【灰爪】を突き立ててじわじわダメージを与える。
とても痛そうで、毒ナマズも反撃とばかりに長くて硬いがしなやかに動く髭を使って振り払おうとした。けれど【半液状化】してスライム化したアキラにはまともに効くことはなく、爪を深く突き刺しているだけで、ジワジワとダメージを蓄積する。
「ならば私は機動力の失った足下を狙うだけだ」
Nightも大量の短剣を用意し、見事な投げナイフ捌きで毒ナマズの体に突き刺していく。
深く突き刺して足場にすると、その上に足を掛けて階段みたいに登っていく。
とは言え、体力の無いNightは既に限界ギリギリで、息が荒くなっていた。
それでも十字架状の剣で毒ナマズの体を引き裂いていく。
流石に悶絶したのか、毒ナマズはジタバタして暴れ散らかす。
けれど2人もここが引き際と見ていち早く毒ナマズの体から飛び降りると、今度はアキラがNightをキャッチした。両腕でがっちりと支え、お姫様抱っこになっている。
「これで4分の3は行ったね」
「残りはベルが仕留めるだろ。ほら来た」
追い打ちとばかりに大量の火矢が投入される。
曲射で放たれた火矢に毒ナマズは手も足もないが、手も足も出ずにのたうち回る。
命中の表面積が上がっただけだが、残っていたHPバーは大量の火矢によって蝕まれてしまい、完全に焼失した。
レベル差僅か5の相手をアキラたちは難なく倒すことに成功するのだった。
「おっ、【泥腕】手に入ったよ」
「よかったな。最初からこれができればいいのだが……」
「それは無理だよね?」
「そうだな。相手の体に自生しているような花をこのままストレートにやっても燃やしていたからな」
Nightは非常に疲れていて呂律が回っていなかった。
けれど無事に倒せたのでホッと一息つく3人だったが、まだ古代遺跡の謎が完全に置き去りになっていることを忘れたわけではないので、思考は割かれてしまっていた。
お互いに起き上がると、アキラは右手に持った紫色の花弁の付いた花をNightに見せる。
「はい、これ! 合ってるよね?」
「無事に採取したみたいだな。それがドクハナで間違いない」
Nightの見立ては間違っていなかった。
紫色をした花弁の中にオレンジ色の輪郭がある。まるで目のように見えて悍ましいが、そこから出ている胞子が毒性を持っていることからこの花はドクハナと呼ばれていた。
とは言え、初見で見た人からすれば——
「何だかパンジーみたいだね」
「そうだな。紫パンジーの色違いだ」
完全にパンジーでしかなかった。
とは言えこれで無事に依頼は達成。Nightの指示でアキラはすぐさまインベントリに押し込むと、ベルを連れて離脱することになった。はずなのだが——
「何やっているんだ、ベル! もう足止めはいいから逃げるぞ」
「ちょっと待ってよね。コイツをここで倒しておいた方が経験値的にも美味しいでしょ?」
ベルは弓を引くことを止めなかった。
それどころか当初の目的が完全にズレている。ドクハナを採取することができたので、抑え込んでいたものが吹き飛んでしまったみたいに、たかが外れている。
その状況に些か不安を抱いたNightは余計な危険性を避けることを優先する。
けれどアキラもベルと同じ意見だった。
「そうだよね。ここまでやって帰るのはやだよ!」
「お前まで何を言っているんだ! 目的は果たしたんだぞ。今更副産物を気にしてられるか」
「気にするよ。だって私、まだ【泥腕】奪えてないもん」
アキラは強欲だった。
Nightの想像を遥かに超えるほど、先程のスキルが欲しいらしく、舌なめずりをしている。
獣のような目ではない。しかし狩人の目ではあった。
意識が完全に討伐思考に入っている。
こうなった2人を止めるのは面倒なので、Nightはゴリ押すことはやめて仕方なく剣を抜いた。十字架状の剣が鋭く曇天雲を切り裂く。
「仕方ないな。だが無理はするなよ」
「ありがと、Night」
「それじゃあ狼煙、もう一回上げるわね」
ベルは高らかに弓を構えた。
完全に狙っていない姿勢に普通の人なら理解ができないか、嫌悪感を示すだろう。
しかし2人は違った。ベルの合図を皮切りに、お互い走り出す。敵はもう、【泥腕】を使えないからだ。
「【心射必中】!」
急に風が出てきた。ベルは風を呼んでいない。
ベルの意識が集中し毒ナマズを捉えると、軽やかに弦を弾いた。
シューン!——
矢が綺麗に弧を描き、毒ナマズの体に突き刺さる。
しかしカピカピになった体に鏃が刺さってもまともなダメージはない。
けれどそれでよかった。この矢には既に必中効果が付いている。
一度当たればそれでよかった。
「砕け」
ベルの声に反応して鏃が深々と刺さる。
毒ナマズは未知の脅威に悲鳴を上げ、徐々にダメージを負っていた。
精神に直接響き、肉体にも反応してダメージを与える。敵がデカければその分効力を増す。
「これで4分の1。残りは任せるわね」
ベルはやり切った表情を浮かべる。
それもそのはず、2人の強力な仕掛けが迫っていた。
「アキラ、お前は本体を叩け。私は下の方から登る」
「うん。【月跳】+【灰爪】加えて【半液状化】!」
アキラは【キメラハント】を使い毒ナマズから背中に上がっていく。
【月跳】で一気に半分近くまで迫ると、【灰爪】を突き立ててじわじわダメージを与える。
とても痛そうで、毒ナマズも反撃とばかりに長くて硬いがしなやかに動く髭を使って振り払おうとした。けれど【半液状化】してスライム化したアキラにはまともに効くことはなく、爪を深く突き刺しているだけで、ジワジワとダメージを蓄積する。
「ならば私は機動力の失った足下を狙うだけだ」
Nightも大量の短剣を用意し、見事な投げナイフ捌きで毒ナマズの体に突き刺していく。
深く突き刺して足場にすると、その上に足を掛けて階段みたいに登っていく。
とは言え、体力の無いNightは既に限界ギリギリで、息が荒くなっていた。
それでも十字架状の剣で毒ナマズの体を引き裂いていく。
流石に悶絶したのか、毒ナマズはジタバタして暴れ散らかす。
けれど2人もここが引き際と見ていち早く毒ナマズの体から飛び降りると、今度はアキラがNightをキャッチした。両腕でがっちりと支え、お姫様抱っこになっている。
「これで4分の3は行ったね」
「残りはベルが仕留めるだろ。ほら来た」
追い打ちとばかりに大量の火矢が投入される。
曲射で放たれた火矢に毒ナマズは手も足もないが、手も足も出ずにのたうち回る。
命中の表面積が上がっただけだが、残っていたHPバーは大量の火矢によって蝕まれてしまい、完全に焼失した。
レベル差僅か5の相手をアキラたちは難なく倒すことに成功するのだった。
「おっ、【泥腕】手に入ったよ」
「よかったな。最初からこれができればいいのだが……」
「それは無理だよね?」
「そうだな。相手の体に自生しているような花をこのままストレートにやっても燃やしていたからな」
Nightは非常に疲れていて呂律が回っていなかった。
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