172 / 559
◇172 ヒントを貰った
しおりを挟む
アキラはソウラの待つ店にやって来た。
今日も今日とてソウラが1人店番をしている。
本当に大学生なのかと疑いの目を向けてしまう。
「ソウラさんはいつもいますよね」
「そんなことないわよ。私は昼間しかないから」
「そうなんですか? じゃあ夜は誰が……」
「夜はバーになるからね。けみーが1人でいるわよ」
「会ったことない人ですね」
「うちのギルマスだからね。それよりアキラは今日も1人なの?」
「私はいつも通りですよ。それに今日はこれを持ってきたんです」
アキラはインベントリからアイテムを取り出した。
手には紫色の花弁をしたパンジーのような花が握られている。
「うわぁ、頼んでたドクハナだ!」
「頑張って採ってきましたよ。これでいいですよね?」
「ありがとー。おかげさまでアイテムが揃ったよ」
「大変だったんですよ。ちゃんとしてくださいね」
アキラは苦労が滲み出ていたので、ソウラをジト目で睨んだ。
するとソウラは何事もなく空き瓶の中にドクハナを押し込み、「そうね」と口にする。
アキラはじーっとソウラの背中を見ていたが、不意に何かを取り出す動作をする。
「それで何かわかったんじゃない?」
「何かって何ですか?」
「だから毒沼に行って、少しは気晴らしとかヒントとかあったでしょ?」
「気晴らしにはなりましたけど……ヒントって何ですか?」
アキラは首を捻った。ソウラの言っている意味がわからない。
スーッと右から左に流れてしまい、2人の思考に相互が生まれる。
「ヒントみたいなのがあったと思うけどね。もしかして気が付いてないのかな?」
「気が付いてないって何ですか?」
「もしかして地面とか見なかった?」
「地面ですか? 断層でできた溝があっただけですけど」
毒沼の地面にはたくさんの断層の溝があった。
そこから毒沼の水やヘドロと一緒に毒が噴射されていた。
単に危険な罠としか思わなかったけど、よくよく考えれば似ているものがある。
ソウラにはアキラから話していた。
「古代遺跡の床には変な溝があったんでしょ? 何かヒントにならないかな?」
「ヒントは……えっ?」
「だからヒントにならないかなって……ねっ」
ソウラは笑みを浮かべて振り返った。
するとポカンとした表情を浮かべて固まるアキラの顔があったので、ソウラは仕方なくしゃがみ込んで道具を取り出した。
「それじゃあもう少しわかりやすいものを見せてあげるね。確かこの辺にピーコが作ったものがあったはずなんだけど……よいしょっと!」
カウンターの上に木組みの装置を置いた。
よく公民館とか教育テレビで有名な装置だ。
ビー玉を転がすと装置のカラクリが作動して面白い動きをするやつだ。
ご丁寧に、木でできた溝には傾斜が付いている。だけど若干でしかない。
「これって転がるんですか? すっごく遅いですよ」
「だからこうするのよ」
ソウラは水を垂らした。すると滑りがよくなってビー玉がコロコロと転がる。
カラクリは非常にシンプルだけど、自然と目がビー玉を追っている。
カンカンカンと音を立てて、いろんな仕掛けを越えてく。
「うわぁ、半円を回った。今度はドミノみたいに倒れてる。面白い!
「ピーコが暇つぶしに作ってたものだけど、よくできてるわよね」
ソウラもじっと眺めている。普通によくできていて面白く、最後のレーンに入った。
ぐるぐると渦を巻いているエリアのビー玉が落ちると、真下にある小さな箱の中にビー玉が入る。
これで終わりかと思ったが、流れに追いついた水が小さな箱の中に溜まっていくと、ビー玉が浮力で浮いてきてコロンと転がった。
最後に鐘を鳴らしてゴールを知らせる。結局目を奪われてしまった。
「これでわかったかな?」
「凄いです。このカラクリ装置シンプルですけど面白いです!」
「そうよね。ピーコが去年リアルで作ったものを真似て作ったものだから構造自体はよくできてるのよ。それでこれで言いたいことが理解できたかしら?」
「えーっと、何でしょうか。水を使うってことはわかったんですけど」
アキラは今日のところは理解力が遅れていた。
しかしソウラは腕組みをすると、アキラに考える余地を与える。
そう言えば毒沼でも毒やヘドロが運ばれていたのは、水が原因だった。貯水池は中央の毒沼。ってことは、水があれば何か変わるかもしれない。
例えば流すのは手に入れた宝玉で、それを水の力で運搬する。
そうすれば何か起こるんじゃないかと、頭の中でイメージが湧いてきた。
「ソウラさん!」
「やっと気づいたのね。頑張ってね、アキラ」
「はい。何となくですけどイメージが付きました。みんなにも知らせてきます」
アキラは今日のところはログインできているのが自分だけなので、リアルに戻って蒼伊と烈火に聞いてみることにした。
ログアウトするため店の外に出ると、ソウラは頬杖をついていた。
今日も今日とてソウラが1人店番をしている。
本当に大学生なのかと疑いの目を向けてしまう。
「ソウラさんはいつもいますよね」
「そんなことないわよ。私は昼間しかないから」
「そうなんですか? じゃあ夜は誰が……」
「夜はバーになるからね。けみーが1人でいるわよ」
「会ったことない人ですね」
「うちのギルマスだからね。それよりアキラは今日も1人なの?」
「私はいつも通りですよ。それに今日はこれを持ってきたんです」
アキラはインベントリからアイテムを取り出した。
手には紫色の花弁をしたパンジーのような花が握られている。
「うわぁ、頼んでたドクハナだ!」
「頑張って採ってきましたよ。これでいいですよね?」
「ありがとー。おかげさまでアイテムが揃ったよ」
「大変だったんですよ。ちゃんとしてくださいね」
アキラは苦労が滲み出ていたので、ソウラをジト目で睨んだ。
するとソウラは何事もなく空き瓶の中にドクハナを押し込み、「そうね」と口にする。
アキラはじーっとソウラの背中を見ていたが、不意に何かを取り出す動作をする。
「それで何かわかったんじゃない?」
「何かって何ですか?」
「だから毒沼に行って、少しは気晴らしとかヒントとかあったでしょ?」
「気晴らしにはなりましたけど……ヒントって何ですか?」
アキラは首を捻った。ソウラの言っている意味がわからない。
スーッと右から左に流れてしまい、2人の思考に相互が生まれる。
「ヒントみたいなのがあったと思うけどね。もしかして気が付いてないのかな?」
「気が付いてないって何ですか?」
「もしかして地面とか見なかった?」
「地面ですか? 断層でできた溝があっただけですけど」
毒沼の地面にはたくさんの断層の溝があった。
そこから毒沼の水やヘドロと一緒に毒が噴射されていた。
単に危険な罠としか思わなかったけど、よくよく考えれば似ているものがある。
ソウラにはアキラから話していた。
「古代遺跡の床には変な溝があったんでしょ? 何かヒントにならないかな?」
「ヒントは……えっ?」
「だからヒントにならないかなって……ねっ」
ソウラは笑みを浮かべて振り返った。
するとポカンとした表情を浮かべて固まるアキラの顔があったので、ソウラは仕方なくしゃがみ込んで道具を取り出した。
「それじゃあもう少しわかりやすいものを見せてあげるね。確かこの辺にピーコが作ったものがあったはずなんだけど……よいしょっと!」
カウンターの上に木組みの装置を置いた。
よく公民館とか教育テレビで有名な装置だ。
ビー玉を転がすと装置のカラクリが作動して面白い動きをするやつだ。
ご丁寧に、木でできた溝には傾斜が付いている。だけど若干でしかない。
「これって転がるんですか? すっごく遅いですよ」
「だからこうするのよ」
ソウラは水を垂らした。すると滑りがよくなってビー玉がコロコロと転がる。
カラクリは非常にシンプルだけど、自然と目がビー玉を追っている。
カンカンカンと音を立てて、いろんな仕掛けを越えてく。
「うわぁ、半円を回った。今度はドミノみたいに倒れてる。面白い!
「ピーコが暇つぶしに作ってたものだけど、よくできてるわよね」
ソウラもじっと眺めている。普通によくできていて面白く、最後のレーンに入った。
ぐるぐると渦を巻いているエリアのビー玉が落ちると、真下にある小さな箱の中にビー玉が入る。
これで終わりかと思ったが、流れに追いついた水が小さな箱の中に溜まっていくと、ビー玉が浮力で浮いてきてコロンと転がった。
最後に鐘を鳴らしてゴールを知らせる。結局目を奪われてしまった。
「これでわかったかな?」
「凄いです。このカラクリ装置シンプルですけど面白いです!」
「そうよね。ピーコが去年リアルで作ったものを真似て作ったものだから構造自体はよくできてるのよ。それでこれで言いたいことが理解できたかしら?」
「えーっと、何でしょうか。水を使うってことはわかったんですけど」
アキラは今日のところは理解力が遅れていた。
しかしソウラは腕組みをすると、アキラに考える余地を与える。
そう言えば毒沼でも毒やヘドロが運ばれていたのは、水が原因だった。貯水池は中央の毒沼。ってことは、水があれば何か変わるかもしれない。
例えば流すのは手に入れた宝玉で、それを水の力で運搬する。
そうすれば何か起こるんじゃないかと、頭の中でイメージが湧いてきた。
「ソウラさん!」
「やっと気づいたのね。頑張ってね、アキラ」
「はい。何となくですけどイメージが付きました。みんなにも知らせてきます」
アキラは今日のところはログインできているのが自分だけなので、リアルに戻って蒼伊と烈火に聞いてみることにした。
ログアウトするため店の外に出ると、ソウラは頬杖をついていた。
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
八ッ坂千鶴
SF
普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。
そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?”
ajakaty
SF
香坂奏多(こうさかかなた)は、地方理系大学を卒業後、中堅企業に就職して2年目の24歳。休日の趣味といえば、読書に“ぼっちキャンプ”を少々嗜む程度の地味な男....
そんな....多少の悲しい生い立ちを除けば、ごく普通の青年が遭遇した超自然現象「次元連結」
同窓会に出席した帰り道、天文学的確率で発生した「次元連結」に遭遇した彼は....“平行世界の地球”に迷い込む!
そこは剣と魔法、数多の異種族、異形の魔物が溢れる、奏多が居た世界とは“異なる世界線をたどった”地球だった....
“次元間の移動”で発現した空間転移スキル「トランスファー」と....
“神様(=次元の管理者)”が、お供に付けてくれたフクロウ型改造モバイルフォン『異次元生存サポートガジェット』のミネルヴァを相棒に....
彼は異次元世界を駆ける...自身の生存と帰還を懸けて!!!
チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!
しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。
βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。
そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。
そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する!
※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。
※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください!
※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)
神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる