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◇162 ドクモグラ
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Nightはアキラの声に反応して、背後を振り返った。
しかし時すでに遅く、紫色をした液体が吐き出された後だった。
「くっ!」
「Night、避けて」
Nightはマントを使って華麗に攻撃を受け流す。
黒いマントは紫色の液体を浴びてしまい、ドロドロになっていた。
けれどおかげでNight自身は守られる。
一方ベルは弓を構えていた。
たゆまない弦を目いっぱい引き寄せ、鏃を地面に向ける。
そこには確かにモンスターの姿があった。
しかしあまりに小さい上にすばしっこくて、矢を射抜くのが間に合わない。
「逃げられちゃったね」
「いいやまだだ。向こうはこっちが油断していたことを良いことに、必ず仕掛けて来る」
「そんなモンスターは生き物なんだから、深追いなんてしないはずでしょ!」
「それは向こうがこちらを敵だと認識している場合だ。油断していた。まさかモンスターに先手を打たれるなんて……」
湿地帯と言う馴染みのない悪環境下でNightは注意を怠っていた。
地面のぬかるみに気を取られ、周りを見ようとしていなかったことに深くしょぼくれる。
「大丈夫よ。まだ敵はそう遠くには行っていないと思うから」
「どうしてそんなことが言えるの?」
「風よ。私はシルフィード。風の流れを読むのは得意なの」
《シルフィード》は風の精霊だ。
今までまともに使っているところを見たことがなかったが、ベルはアキラたちの前の初めてスキルを披露する。
固有スキルによる一撃必殺に加えて種族スキルはベルに合っていた。
「……風は30メートル圏内」
「風?」
「それは使い方が間違っていないか?」
ベルの口にした「30メートル圏内」と言う言葉に首を捻る。
惑わされているのだろうか。いいやそんなことはない。
ベルは確かに敵の位置取りを完璧に済ましていた。
「私の種族スキルは【風呼び】です」
「【風呼び】? もしかして風を呼び寄せることができるの?」
「ええ、厳密には違いますが風を呼び寄せることもできますね。でも、今回は呼ぶんじゃなくて……」
「読んだんだな。地面の中……さっきのモンスターが空けた穴から」
まさに異次元のレベルだった。こんな真似、現実の世界だとまず不可能だ。
しかしそこは流石ファンタジー世界。アキラは考えることを止めた。
「凄い、凄いよベル! どうして今まで使っていなかったの?」
「そうだ。その能力を使えばもっと楽に……うっ!」
急にNightは髪を抑えた。若干だが、微風が吹いている。
さっきまで風なんて一切吹いていなかったのに変だと、アキラもNightも口をそろえて思っていた。
「なるほど、そういうことか」
「そういうことかって何? 私まだわからないんだけど」
「よく思い出してみろ。ベルは命中精度も高く、速射性もまずまず。何より風なんて関係なく射抜けるが、自分から言っていただろ」
「言っていた? ……えーっと、無風状態の方がいい?」
「それは普通だ。コイツは風があった方が飛距離が出る。だがそれは諸刃の剣でもあると私は考えていた」
「諸刃の剣? 何で、弓矢だよ」
「物の例えだ。飛距離を犠牲にして接近されたらどうする。距離を詰められれば狙撃手は終わりだぞ」
アキラに辛辣な言葉を浴びせるNight。
だけどNightが言っていることは本当で、ベルの奇妙なジンクスも相まってアキラは信じ込まされてしまった。
風が出ることいいことでも、敵を景気づける可能性もある。
そのことを念頭に入れていなかった。……って必要かな?
「ベルは風があった方が撃ちやすいんだよね?」
「そうね。結局今までそうだったかも」
「じゃあ風が出ている方がいいんじゃないのかな? 微風でも」
「それは確かのそうだが……そうなんだが……ん?」
「ほら、黙っちゃった」
Nightの口が止まる。その瞬間、背後から怪しい気配を感じ取った。
また考え事をしているNightの背後を取ったらしい。
だが今回はベルが付いていた。
スキルを合わせたベルの弓矢が放たれる。
「2人ともしゃがんで」
「「うわぁ!」」
急に矢が飛んできた。
鏃が向けられ、間一髪のところでしゃがんで回避すると、視界が開けた瞬間に動揺したモンスターに命中した。
人の壁のせいで見えていなかった矢の存在に敗北したらしい。
「ふぅ。こんなものよね」
「凄いベル。今のも作戦だったんだ!」
「そうよ。でも見えなかったけどね」
「見えなかったのか! どうして当てられた」
「長年の勘。多分ここに来る。私ならそうするって敵の動きを呼んだの。風はね、時に怖い動きをしてイレギュラーを起こすからあんまり使えないんだ。それに縛りをかけていた方が遊んでいて楽しいわよ」
ベルは何故か微笑んでいた。
私が合いの手を入れている間、Nightは倒したモンスターを観察している。
もう作業に戻っていて、神経を疑いたかった。
けれどNightはこうでなくちゃいけないと、心の何処かで安心している。冷静さを取り戻したことで、頭も回転する。
「ドクモグラだな。コイツのせいで」
「ドクモグラって何? 私普通のモグラなら見たことあるけど。ちょっと形違うね」
アキラも近づいて観察する。
紫色をしていてサツマイモのようだった。しかし頭のどころに奇妙な穴が何個も空いている。
サツマイモを吹かした時に刺す割り箸みたいな感じだ。
だけどそこから紫色をした液体が垂れていた。血だろうか?
「これは毒液だ。触るなよ」
「えっ!?」
「ドクモグラは敵に毒を吹きかけるモンスターだ。この辺りには似たような種がゴロゴロいるだろうから気を付けろよ」
「「えっ!?」」
流石は毒沼。気を引き締めないと即死しそうだ。
アキラたちは肩に力を入れた。
しかし時すでに遅く、紫色をした液体が吐き出された後だった。
「くっ!」
「Night、避けて」
Nightはマントを使って華麗に攻撃を受け流す。
黒いマントは紫色の液体を浴びてしまい、ドロドロになっていた。
けれどおかげでNight自身は守られる。
一方ベルは弓を構えていた。
たゆまない弦を目いっぱい引き寄せ、鏃を地面に向ける。
そこには確かにモンスターの姿があった。
しかしあまりに小さい上にすばしっこくて、矢を射抜くのが間に合わない。
「逃げられちゃったね」
「いいやまだだ。向こうはこっちが油断していたことを良いことに、必ず仕掛けて来る」
「そんなモンスターは生き物なんだから、深追いなんてしないはずでしょ!」
「それは向こうがこちらを敵だと認識している場合だ。油断していた。まさかモンスターに先手を打たれるなんて……」
湿地帯と言う馴染みのない悪環境下でNightは注意を怠っていた。
地面のぬかるみに気を取られ、周りを見ようとしていなかったことに深くしょぼくれる。
「大丈夫よ。まだ敵はそう遠くには行っていないと思うから」
「どうしてそんなことが言えるの?」
「風よ。私はシルフィード。風の流れを読むのは得意なの」
《シルフィード》は風の精霊だ。
今までまともに使っているところを見たことがなかったが、ベルはアキラたちの前の初めてスキルを披露する。
固有スキルによる一撃必殺に加えて種族スキルはベルに合っていた。
「……風は30メートル圏内」
「風?」
「それは使い方が間違っていないか?」
ベルの口にした「30メートル圏内」と言う言葉に首を捻る。
惑わされているのだろうか。いいやそんなことはない。
ベルは確かに敵の位置取りを完璧に済ましていた。
「私の種族スキルは【風呼び】です」
「【風呼び】? もしかして風を呼び寄せることができるの?」
「ええ、厳密には違いますが風を呼び寄せることもできますね。でも、今回は呼ぶんじゃなくて……」
「読んだんだな。地面の中……さっきのモンスターが空けた穴から」
まさに異次元のレベルだった。こんな真似、現実の世界だとまず不可能だ。
しかしそこは流石ファンタジー世界。アキラは考えることを止めた。
「凄い、凄いよベル! どうして今まで使っていなかったの?」
「そうだ。その能力を使えばもっと楽に……うっ!」
急にNightは髪を抑えた。若干だが、微風が吹いている。
さっきまで風なんて一切吹いていなかったのに変だと、アキラもNightも口をそろえて思っていた。
「なるほど、そういうことか」
「そういうことかって何? 私まだわからないんだけど」
「よく思い出してみろ。ベルは命中精度も高く、速射性もまずまず。何より風なんて関係なく射抜けるが、自分から言っていただろ」
「言っていた? ……えーっと、無風状態の方がいい?」
「それは普通だ。コイツは風があった方が飛距離が出る。だがそれは諸刃の剣でもあると私は考えていた」
「諸刃の剣? 何で、弓矢だよ」
「物の例えだ。飛距離を犠牲にして接近されたらどうする。距離を詰められれば狙撃手は終わりだぞ」
アキラに辛辣な言葉を浴びせるNight。
だけどNightが言っていることは本当で、ベルの奇妙なジンクスも相まってアキラは信じ込まされてしまった。
風が出ることいいことでも、敵を景気づける可能性もある。
そのことを念頭に入れていなかった。……って必要かな?
「ベルは風があった方が撃ちやすいんだよね?」
「そうね。結局今までそうだったかも」
「じゃあ風が出ている方がいいんじゃないのかな? 微風でも」
「それは確かのそうだが……そうなんだが……ん?」
「ほら、黙っちゃった」
Nightの口が止まる。その瞬間、背後から怪しい気配を感じ取った。
また考え事をしているNightの背後を取ったらしい。
だが今回はベルが付いていた。
スキルを合わせたベルの弓矢が放たれる。
「2人ともしゃがんで」
「「うわぁ!」」
急に矢が飛んできた。
鏃が向けられ、間一髪のところでしゃがんで回避すると、視界が開けた瞬間に動揺したモンスターに命中した。
人の壁のせいで見えていなかった矢の存在に敗北したらしい。
「ふぅ。こんなものよね」
「凄いベル。今のも作戦だったんだ!」
「そうよ。でも見えなかったけどね」
「見えなかったのか! どうして当てられた」
「長年の勘。多分ここに来る。私ならそうするって敵の動きを呼んだの。風はね、時に怖い動きをしてイレギュラーを起こすからあんまり使えないんだ。それに縛りをかけていた方が遊んでいて楽しいわよ」
ベルは何故か微笑んでいた。
私が合いの手を入れている間、Nightは倒したモンスターを観察している。
もう作業に戻っていて、神経を疑いたかった。
けれどNightはこうでなくちゃいけないと、心の何処かで安心している。冷静さを取り戻したことで、頭も回転する。
「ドクモグラだな。コイツのせいで」
「ドクモグラって何? 私普通のモグラなら見たことあるけど。ちょっと形違うね」
アキラも近づいて観察する。
紫色をしていてサツマイモのようだった。しかし頭のどころに奇妙な穴が何個も空いている。
サツマイモを吹かした時に刺す割り箸みたいな感じだ。
だけどそこから紫色をした液体が垂れていた。血だろうか?
「これは毒液だ。触るなよ」
「えっ!?」
「ドクモグラは敵に毒を吹きかけるモンスターだ。この辺りには似たような種がゴロゴロいるだろうから気を付けろよ」
「「えっ!?」」
流石は毒沼。気を引き締めないと即死しそうだ。
アキラたちは肩に力を入れた。
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